農園便り

コーヒーの木の剪定(その2)

今年の2月に畑の3分の1を膝の高さにカットバック(剪定)した。以前は、Beaumont-Fukunaga 方式といって、3列に一列の割合でその一列全部をカットバックする方式をとっていたが、3年前からCBBという害虫対策のために畑の3分の1のエリアをすべてカットバックする方式に変えた。エリア全体をカットバックしてしまえば、そこには1年間害虫が全くいなくなるので、害虫駆除が楽になるし、より効果的に被害率を下げることができる。
 

201606-cutback1-300x225.png

 

上の写真が3か月前の今年の2月にカットバックしたもの。すでに、新たな幹となる新芽が出ている。
 

201606-cutback2-300x225.jpg

 

この写真は昨年の春にカットバックしたもの。この木だと、今年は10ポンド程度の収穫が期待できる。
 

201606-cutback3-300x225.png

 

この写真が2年前の春にカットバックしたもの。もうかなり樹高が高く、実もたわわにできる。30~50ポンドの収穫が期待できる。これ以上背が高くなると、はしごでも使わない限り収穫ができないので、今シーズンの収穫が終わったらカットバックする。

つまり、コナでは3年ごとのカットバックサイクルだ。

この年数は産地によって異なる。コロンビアなどでは6年ごとにカットバックする。おそらく3年ごとというのはハワイ・コナだけではないかと思われる。

コナはティピカという原種に最も近い最高級品種を育てていて、それが放っておいてもどんどん育つコーヒーの原種に最適な気候と土壌を持つ。他の産地では考えられないスピードだ。コーヒーが喜んで育てば、それだけ質の良いコーヒーができる。

また、他の産地ではティピカがうまく育たないので、香味を犠牲にして、品種改良した品種を育てている。つまり、増大する消費国からの需要を賄うために、ほとんどの産地では、本来はコーヒーの育ちにくい場所に、品種改良して無理やりコーヒーを育てていることになる。

消費国からの価格圧力も強い。なにせ、一杯100円にしようというのだから、コスト削減が生き残りのカギとなる。手間ひまのかかるティピカなどは高級品のニッチに追いやられ、生産の容易な品種改良種が世界の主流となった。どうせ、砂糖とクリームを入れるんだろう、味にうるさいこと言うなよ、というのが、消費国からの価格圧力に対する、生産国側からの答えだ。


手摘みの場合、コーヒー農園でのコストの5割以上が収穫のための人件費だ。コスト削減のカギは速く容易に収穫すること。だから、品種改良して背が高くならない矮小種を植える。ティピカのように背が高いと一日中上を向いて、首の痛みと闘いながら摘まなくてはならない。矮小種を摘むのはとっても楽だ。だから、他の産地では、なかなか背が高くならず、それほど頻繁にカットバックする必要もなくなるという側面もある。

19世紀後半に日本人移民によって築かれたコナコーヒー。楽園ハワイでは、そんなコーヒーの資本主義の潮流、品種改良の波から、完全に取り残されて、今でも原種のコーヒーが伸び伸びと生息している。コーヒーに最適な気候なので、コーヒーが信じられないくらいのスピードで成長する。だから3年に1度の割合で剪定するのだ。

≫ 続きを読む

2016/06/10   yamagishicoffee

剪定(その1)

201606-pruning1-300x225.png

 

201606-pruning2-300x225.png

 

2月にコーヒーの木を剪定した。例年通り、畑の3分の1の木を膝の高さにカットバックした。それ以来3か月が経った。カットバックした株からは新たな幹となる新芽がたくさん出てきた。20~30本はあるだろうか。その中から、まずは、この時期に5~6本に絞り、それ以外はすべて摘み取る。そして、9月頃に最終的な3本を選ぶ。3本の幹を育てるのだ。

上の写真の一枚目は新芽の間引き前の写真で2枚目は間引き後の写真。

下の写真の3枚目・4枚目はより近くから見たもの。
201606-pruning3-300x225.jpg

 

201606-pruning4-300x225.png

 

4年前に苗木を植えて育てた際には幹は2本に制限したが、今は4歳で根もしっかりついてきたので、今回は3本に増やす。

3本の組み合わせを選ぶ際には、空間をなるべく広く使えるように選ぶ。力強く伸びた健康な新芽を選ぶのだが、必ずしもそれだけではない。どんなに力強く伸びてきても、2本が隣同士では同じ空間で競合してしまうのでよくない。株の外側に向かって伸びた芽を3本バランスよく配置するのが肝要。内側へ向かって伸びる幹は摘み取る。

空間把握能力が問われ、割と頭を使う。また、畑は斜面にあり、斜面の山側と海側では、山側に実が多い方が、地面が高いので収穫する際に手が届きやすくて楽になる。斜面の山側の空間と海側の空間では、私は個人的にどちらかというと、山側の空間をひいきにしている。

どの新芽も懸命に伸びようとしているのに、その中から限られたものだけを残し、あとは切り取るわけだから、こちらの責任も重大だ。彼らにとっては生死の境目となる意思決定の連続なので、どれにしようどれにしようと悩みながらの作業となる。

うちの畑には約3,300本の木があり、今年は約1,300本の木を剪定した。仮に一本の木あたり20本の芽を摘み取り、3本を残したとすると、約26,000本の幹を捨て、約3,900本の幹を選び取る勘定になる。

コーヒーの世界だって競争倍率が厳しいのだ。うちはゆとり教育は採用していません。

 

≫ 続きを読む

2016/06/08   yamagishicoffee

肥料をまいた

201508yamagishi-farm2-300x225.jpg

 

今の時期、コーヒーの実は日々大きく成長していく。これから夏にかけては養分をドンドン使っていくので、多くの肥料を必要とする。

近所の農園は一度に大量の肥料を撒くが、うちは少量ずつで、回数を増やす。

昨日は朝から雨が降りそうな予感がした。空は降る気満々という感じ。肥料は雨が降る直前に撒かねばならぬ。

前回の施肥からは、まだ一か月程で、さほど日は経っていないが、5月は雨が多く、前回の栄養分は上手いこと地中深くへ溶け込んでいったので、肥料をやることにした。

妻と二人で重い肥料を畑へ運び、腰に付けたバスケットに入れて撒く。結構重い。かなりの重労働。汗だくになって行った。数時間かけて撒き終わりヘトヘトになっていると、ちょうど雨が降り出した。

完璧なタイミング。僕って天才!と大喜びで家に戻ったら、ぬか喜び。すぐに雨は止んだ。

午後、いくら待っても降りそうで降らない。このまま雨が降らないと、せっかく撒いた肥料が蒸発してしまう。天才だったんじゃないの?という妻の非難に耐えながらも、「もうすぐ降るから」を何度も繰り返しているうちに、とうとう日が暮れてしまった。そして、「日が暮れて気温が下がった時が勝負だから」にセリフが変わり、1時間が過ぎ、2時間が経過した。

 重労働で疲労困憊だったので、とうとう雨が降らぬまま、9時には床に就いた。普段は寝ている間に雨が降ると、その音で目を覚ます。だから「寝ている間が勝負だから」と妻に言い訳しながら眠りに入った。

次に気が付いたのが朝の7時。よっぽど疲れていたのか、10時間もノンストップで寝てしまった。でも、朝から憂鬱。夜中に途中で目が覚めなかったというのは雨が降らなかった証拠。こんなにヘトヘトになってまで撒いたのに無駄だったかと、ガッカリしながら起き上がり外へ出ると、一面ビッショ濡れ。相当降ったらしい。これだけ降っても起きなかったというのは相当疲れていた訳だが、疲れが一気に吹き飛んだ。
もう朝から爽快!!

≫ 続きを読む

2016/06/06   yamagishicoffee

コナコーヒー農園便り 2016年6月号 コーヒー摘みは心のリハビリ

201606-pool-300x225.jpg

 

コーヒー摘みは頭と心の凝りをほぐす。コーヒー摘みのような単純作業を繰り返すと、脳の思考が停止してくる。すると、NYで働いていた頃の嫌な出来事、数々の失敗など頭の奥に染み付いた悪い思い出が浮かんでくる。ストレスの多いサラリーマン生活で長い年月をかけて溜まったしこりのようなものだ。楽園ハワイでコーヒーを摘んでこんなに幸せだと、悪い思い出を上書きする。心の凝りをほぐしながら収穫する。栽培を始めて8年。骨の髄まで溜まったストレスを随分と追い出した気がする。コーヒー摘みはリタイア後の心のリハビリに良い。

また、脳の奥深いところにある記憶やアイデアを探り当てることがある。潜在意識の中にある事柄をつなぎ合わせて、ふっと投資の良いアイデアが浮かんだりもする。

コーヒー摘みのシーズンが終わると今度は体の凝りをほぐす作業が始まる。長い収穫シーズン中、重いコーヒーを運び続けるので腰を痛める。ぎっくり腰は癖になっている。毎日10kg入りのバスケットを10時間も腰に付けて収穫作業をするので、骨盤や股関節の周りの筋肉や腱ががちがちだ。特に股関節と足をつなぐ様々な腱から筋肉にかけて痛みがひどい。朝は腰が曲がったまま。真直ぐに腰を立てることができない。足と腰が痛くてうまく歩けない。だから日本からのお土産で嬉しいのは強力な湿布薬だ。

毎週の鍼灸治療が欠かせない。鍼灸の先生からは、もっと農園主らしく、収穫は人に任せなさいと叱られるが、美味しいコーヒーを作るには収穫が最も大切というのが信条なので、他人任せにはしたくない。

 せっかく収獲シーズンが終わったのに、痛くて上手くゴルフができないのは悲しい。代わりに午前中に農作業をして、夕方プールで歩く。ひたすら歩く。ゆっくり大股で歩いたり、全速力で歩いたり、横や斜めに飛び跳ねながら歩いたり、カニのように横歩きしたり、様々な筋肉を様々な角度に使いながら歩いて試していく。

しばらく歩き続けると思考が停止してくる。半分目をつむり眠ったような状態で1時間近く歩くと、特定の筋肉にギューと効いてくる。その筋肉に意識を集中させながら同じスタイルでさらに1時間ぐらい続けると、ふっと、その筋肉がほぐれる瞬間がある。こうなればしめたものだ。さらに歩いてほぐす。気が付くと3時間も歩くことがある。

 例えばある時、尾てい骨の2センチ上のところが、ギューと効いてきた。そのギューはさらに骨盤の内部の左右を後ろから前へ続き、臍の下の丹田がギューときた。へえー、そんな風に繋がっているんだと感心しながら、合計3時間歩いて、尾てい骨の上と腹部の内部はほぐれた感じがしたが、丹田だけはほぐれないまま日が暮れた。翌日はその続きをやろうと歩いたが、前日と同じ感覚は訪れずに終わってしまった。突然に降りてくるギューという感覚は気まぐれだ。一つ一つの筋肉と対話をしながら、歩き続けその感覚が降りてくるのを待つ。

コーヒー摘みはリタイア後の心のリハビリに良いと記したが、調子に乗って続けると体のリハビリが必要になる。日本の農家が冬の間は湯治場で傷んだ体を癒す話を昔から耳にするが、常夏のハワイではプールでケアーだ。

≫ 続きを読む

2016/06/02   yamagishicoffee

満月の夜にはドルが上がる

201605-moon.jpg

 

先週の話で恐縮だが、21日はBlue moonだった。

Once in a blue moonという英語の表現がある。「ごくまれに」とか「めったに…ない」という意味である。

その語源は「月が青く見えるのは珍しいから」という意味ではない。わざわざ遠回りして帰るほどの景色ではない。

Blue moonとは、もともとは belewe moonといい、  beleweは古語で裏切るという意味だが、今では使われなくなったので、発音の似たBlueが充てられたらしい。一つの季節(3か月)の中で満月が4回ある場合に、その3度目の満月という意味である。転じて、最近では、ひと月の中の2度目の満月の場合に使うこともある。それくらいの頻度で現れるほど珍しいという意味である。次回は2018年1月だそうだ。

昨日、面白い話を聞いた。満月の夜には植物は普通よりも早く成長するそうだ。満月の光でも光合成をおこなうというのは、すごい生命力だ。先週は雨も多かったし、満月だったので、さぞかしコーヒーも成長したことであろう。

実は昔、東京外国為替市場で「満月の夜にはドルが上がる」という格言があった。私が為替ディーラーだった頃に発見し、でっち上げた理論である。

昔の為替ディーラーはチャートをつけた。今のようにコンピューターが発達していなかったから、方眼紙に手書きだ。MBAで市場効率仮説を徹底的に教えられた私としては、チャート分析などあまり信用していなかったが(はるか後にその認識はかなり改めることになったが)、そんな私でもチャートはつけた。信じるか信じないかは別にしてチャートを見ないディーラーはいない。罫線分析というやつで、相場がこの平均線を下から上へ抜けたから買いのサインが出たとかいう後出しジャンケンみたいなやつだ。さすがにWall Street JournalやFinancial Timesはそういう分析はしないが、なぜか日経新聞が大好きで、頻繁にそういう市場分析を披露している占いみたいなあれだ。

ある時、私は満月の日にはNY市場(東京の満月の夜)で為替相場が大荒れになることが多いことを発見した。ドルが大きく値上がりしたり、大きく値下がりしたりするが、値上がりすることの方が多かった。

チャートを信じていない私は、チャートを信じるくらいなら、月の運行でディーリングした方がましだという気持ちで、そのことを顧客向けの日々の為替レポートに記した。当時、MBA保有者の多い欧米の市場とは異なり、日本の市場参加者にはチャートの信奉者が多かった。顧客の信仰を逆なですることはできないので、為替レポートには私がチャートを軽視していることはいっさい書けない。ただ、満月理論として面白おかしく書いた。そうしたら思わぬ反響があった。市場関係者の間で話題になり、日経新聞までが記事にした。私は皮肉のつもりで冗談で書いたのに。そういうことを会社のロゴ入りのレポートに書く私も私だが、そんな事を本当に新聞に書く記者も記者だし、それを通したデスクもデスクだ。世の中、粋な人は割といるものである。

しかし、昔から満月は色々と話題の種だ。植物が早く成長するのに加えて、狼男が変身するくらいなので、人の精神にも何らかの影響があるのかもしれない。為替ディーラーたちが、ハイパーになって、気が狂ったようにトレードして、相場が大荒れになったのかもしれない。人々の欲望と恐怖の渦巻くマーケットは不思議な所だ。

いまではもう20年以上も前の話。その後、本当に私の満月理論が当てはまったかは知らない。いや、あの後もずっと当てはまっていたらビックリだ。

≫ 続きを読む

2016/05/29   yamagishicoffee

ゴルフ ツアープロに教わった

201605-golf-300x225.jpg

 

最近雨が多い。一昨日は0.5インチ、昨日は1.6インチも降った。農作業は午前中に限られる。今日も昼までは害虫(CBB)の虫食いの実を摘み取る作業をしていたが、昼食後に雨が降り出した。仕方がないので、昨日同様、ゴルフに出かけた。、山腹のコーヒー畑地帯が雨でも、海岸沿いにあるゴルフ場は晴れている。妻からは、「どうして、仕方ない、仕方ない、と言いながら、そんなに嬉しそうに出かけるの?」と指摘されるが、本当に仕方がないから行くのであって、そんなこと言われても仕方がない。

練習場で打ち始めたら、隣に若者が来て打ち始めた。あんまり上手いんでびっくりした。しばらく並んで球を打った。負けてはならぬと真剣に打ったが、月とスッポン。ゴルフ場のスタッフがその若者に次々と挨拶に来るので、何者かと思って会話に割り込んだ。コーヒー農家で雨が降るとゴルフをしに来るんですと自己紹介すると、なんと、相手は、パーカー・マクマクマクマクマク…パーカー・マクロクリンさんだ!!!


パーカー・マクロクリンといえば、ホノルル出身でオバマ大統領やミッシェル・ウィーと同窓のプナホー高校からUCLAへ進み、ハワイ島のワイコロアで練習を重ね、PGAツアープロになった人。PGAツアーで優勝経験もある。ハワイの誇り、宝だ。私なんか、数年前にTurtle Bayで行われたState Openへ出場した際に(当然2日で予選落ちしたけど)、パーカー・マクロクリンも出場していて、彼と同じトーナメントでプレイしたことが自慢の種にしているくらいだ。ちなみの、そのトーナメントには当時は無名だったトニー・フィナウも出ていて、凄いショットを打つのでよく覚えている。彼はその後精進を重ね、昨年PGAのツアーカードを取り、今年は優勝もした。

気が付くと、そばでは、Chris KeiterとHunter Larsonも練習している。先々週に行われた今年のUS Openのハワイ州の地区予選で次の地域予選に進出できる2人の枠に入った上位2人だ。今ハワイ州で一番上手い2人だ。

パーカーが私のそばに近づいてきた。

 P.「さっきから見てると良い球を打ってるね」と、パーカーから予想もしていなかったお褒めのお言葉をいただいた。お世辞でもとっても嬉しい。

P.「ちょっと、見てあげよう。いま、何を課題に練習しているの?」

えっ!!!本当ですか!!!もっと嬉しい。

私「ドライバーを2007年のTaylor MadeのBurner TPモデルから、2016年のTaylor Made M2に10年ぶりに変えたんです」

P.「どれ、打ってごらん」

練習用のボロボロツルツルの手袋をしていたので、慌てて新品の手袋に変えて、数球ドライバーを打った。今日は左からの向かい風が強く、ボールは右へ逸れていった。

P.「それは、わざとフェードを打っているの?」

私「いいえ、真直ぐの球を打っているけど、風で右へ流されています。」

P.「じゃ、ドローを打ってみて。」

数球ドローを打ったが、打った直後はドローするものの、落ち際に風で右に流されていく。つまり、S字に飛んでいく。

P.「ちょっと、ボールフライトが低すぎるね。」と指摘されたので、高い球を打ってみた。やはりドローボールは落ち際に風で右に流されていく。

P.「あなたのボールは回転数が少なすぎるよ。ボールが途中でおじぎしている。もっと回転数を上げれば、もっと風の中を突き抜けて最後までドローするよ。」

私「確かにこのクラブは回転数が少ないと思います。Burnerは2500回転で最適だったけれど、このクラブはそれより少ないと思います。」

P.「2000回転いってないと思うよ。それじゃ低すぎだよ。」

私「Burnerのロフトは9.5度だったけど、このM2は10.5です。でも、Burnerに比べて、ロフトを1度上げたにもかかわらず、ボールフライトが低くて、たぶんキャリーは短いと思うけど、ランがすごく出るので、トータルでは15ヤードぐらい遠くへ飛ぶので気に入っているんですが。」

P.「でも、試合中にドローを打っているつもりでも、横風に持っていかれてフェードしたら困るでしょう。やっぱり回転数を上げなければだめだよ。」

私「さすが、ツアープロは凄い。そこまで考えたことがありませんでした。」

P.「M2は回転数が上がらない設計になっているからね。ロフトアップした方が良いね。M2にはロフトを調節する機能が付いているよね。ちょっとロフトの角度を上げて打ってみて。」

私「私はこのロフト角度を調節するの嫌いなんです。だって、ロフトを上げるとフェースがシャットになってどうやって打っていいか分からなくなるんです。」

P.「え~!!そうなの??ロフトだけを上げることはできないの?」

さすが、ツアープロである。メーカーが彼のためにカスタム仕様でクラブを作ってくるから、庶民の悩み事をご存じでない。とりあえず、ねじ回しでロフト角を調節して、数球打ってみた。

P.「この方が、ずーっと良い球じゃない。その調子でドローを打てば、向かい風でも、風の中をペネトレートして前のクラブと比べても飛距離が落ちることはないはずだ。逆に追い風なら15ヤードくらいは飛距離が伸びると思うよ。」

私「でも、初心者向けのクラブみたいにフェースがシャットになっていて、構えた時に、どうやって打って良いか分からなくて困るんですけど。」と苦情を言うと、私からクラブを受け取り、自分で構えてみて、

P.「確かに、これはひどい。全然だめだ。これじゃ打てないね。ん~ん。ロフトが11.5度の新しいクラブを買いなさい」

といった事情で、10年ぶりに買い替えたドライバーは数週間でクビになってしまった。

あ~、楽しい~!

明日も雨が降ってくれないかなあ。

コーヒーに全く関係のない内容だけど、あんまり楽しかったから、ついつい書いてしまいました。

≫ 続きを読む

2016/05/27   yamagishicoffee

ハワイ最強のパワースポット(その2)

201605Mookini-300x209.png

 

先日モオキニ・ヘイアウ(神殿)へ行った話を記した。まるでコーヒーと関係のない話になってしまった。

神殿へ向かう車中で友人からこの神殿では願い事を強く、強く、本当に強く念じれば、願いがかなうらしいという話を聞いた。だから、今のうちに願い事を用意するようアドバイスを受けた。なるほど、カメハメハ大王のハワイ統一の夢をかなえてくれた場所だ。大抵の願ならかなえてくれそうな気がする。そこでゴルフのスコアーも大事だが、今シーズンのうちの畑のコーヒーが最上の香味になりますようにとお願いすることにした。

神殿を管理する神官のレイモミ・モオキニ・ラムさんの家に到着して、彼女を紹介してもらい、その後神殿へ行った。前回記したように、この丘の上から海を眺めると、昔、カメハメハ大王が見たであろうものと同じ風景があった。しかし、海の前に広がる草原にハオレコアがあちらこちらに生えているのは少し悲しかった。ハオレコアとは白人(ハオレ)の持ち込んだコアのような木という意味。コアはハワイ固有の樹木で木工品・家具・ウクレレなどに使われる最高級品の木材で、現在は数量が限られているのでハワイからの輸出が制限されている。また、自分の庭のコアを伐採するにも許可がいる。コアはハワイにとって大事な樹木だが、ハオレコアは迷惑な外来種だ。とても強力な雑草である。そのハオレコアが点在する。大雑把に見れば同じ風景でも、細部まで観察するとカメハメハ大王が見た風景と完全に同じではない。

チャント(祈り)に続き石の神殿内へ入り花を捧げた。うちの畑で摘んだラベンダーとバラのブーケを持参した。うちの畑ではラベンダーが放っておいてもどんどん育つ。だが、バラはハワイでは珍しいのだ。ハワイ固有の花ではなく、ラベンダーやバラなどの外来の花を捧げたら神様はビックリするかなあなどと、ちょっと不謹慎なことを考えながら捧げた。

続いて神殿内を散策し、カメハメハ大王生誕の場所へ行き、夕陽を眺めレイモミさんの家へ帰り夕食をいただいた。

ところで、願い事はいつどこですれば良いのか尋ねたところ、さっきの花を捧げる瞬間だったとのこと。まったく知りませんでした。全然違うことを考えながら花を捧げてしまいました。

もし、今年のコーヒーの出来が悪かったら祟りかも。。。。
 

≫ 続きを読む

2016/05/23   yamagishicoffee

ハワイ最強のパワースポット(モオキニ・ヘイアウ)(その1)

201605Mookini-300x209.png

 

ハワイ島北端にあるモオキニ・ヘイアウ(神殿)へ行った。ハワイを統一したカメカメハ大王生誕の地だ。生まれながらにして殺される運命にあったカメハメハ大王を神官のモオキニ一族がかくまって育てた場所だ。

ハワイにはパワースポットなる場所がいくつもある。私はパワースポットの意味をよくは知らないが、特別な力を感じる場所という意味であろう。ハワイ島は地球に13ある気候のうちの11が存在している。また、今でも溶岩が流れ出る島で、地球の荒々しいエネルギーを感じる。だから、パワースポットが多いのだろう。

ところが、英語でPower spotとGoogleしても、何も出てこない。せいぜい、「日本でのスピリチュアルな熱狂」ぐらいの説明しか見当たらない。どうやら日本独自の概念のようだ。

私は寡聞にしてパワースポットという単語の日本の地質学における定義、宗教の商業戦略上の価値、あるいは観光業のマーケティング上の意味合いを知らないが、ともかく、ハワイに数多くあるパワースポットは観光の目玉である。通常の観光スポットを山、海、岩、樹木などに神が宿ると考える日本人が勝手にパワースポットと呼んでいる側面もあるが、それにしても、これで金儲けをしようと企む観光業者の並々ならぬパワーを感じるスポットである。ところが、モオキニ・ヘイアウは全く違う。

私を含め多くの人々にとってハワイと言えば、観光の地、リタイアの地、そして軍事の地である。よって、ハワイ中のどこに行っても観光施設や開発プロジェクトを見る。そういう産業に携わる人々を見かける。観光客が来れば至れり尽くせりで歓迎し喜んでいただくことが州を挙げての原則。島民ひとりひとりがアロハ精神で親善大使を務める。ハワイ古来のアロハ・スピリッツはその資本主義的原則によく馴染む。

日本人にとってハワイとは昔はアップダウンクイズで10問正解しないと行けない憧れの地だったが、今ではより身近な存在となっている。ハワイ州の人口は140万人弱。州内の先住ハワイ人とポリネシア系の人々を合わせて、たったの8万人。そのうちフラダンスを踊れるのはごく一握りだ。一方、日本でのフラダンス人口は20万人とも50万人とも100万人ともいわれている。日本人はみんなハワイが好きだ。ハワイはそれほどまで憧れの常夏の楽園のイメージの確立に成功している。ハワイ古来のフラダンスは観光立国に一役も二役もかっている。それが、西欧文明が入り込んで以来のハワイ、アメリカ人が演出するハワイだ。

ところが、このモオキニ・ヘイアウ(神殿)は、まったく、そういう臭いがしない。

いまでも、モオキニ一族が神官として管理していて、まったく観光化されていない。これまで、観光業者がバスの乗り入れを再三申し入れてきたが、断ってきたそうだ。「カメハメハ大王生誕の地」など、観光客が殺到しそうな場所なのに昔のままの姿を残している。

石を積み上げた神殿である。周りには何もない。とても風の強い場所だ。そこから眺めた海の景色が絶景だ。この海を眺めていると、これは昔カメハメハ大王が眺めた景色と同じなんだなあ。大王もこの風を感じていたんだなあ。彼はこの風景を眺めて何を思っていたのだろう。この場所はどのようにしてハワイを統一するような彼の人格を形成したのだろう。という考えが浮かんできた。不思議な空気に包まれている気がした。観光化されていない殺風景な場所に底知れぬパワーを感じた。観光業界がこれをパワースポットと認定しているかは知らないが、観光バスが乗り入れるようになれば、ハワイ最強のパワースポットの称号を得るだろう。これをパワースポットと呼ばずして、何をパワースポットというのだろう。

モオキニ・ヘイアウを観光化・世俗化から守ってきたのが、モオキニ一族の代表のレイモミ・モオキニ・ラムさん(レイは花、モミは真珠の意)。カメハメハ一族が消滅しても、大王を保護したこの一族はいまだにこの地を守っている。彼女は長い一族の歴史のなかでも初の女性のカフナ(神官)。しかし、彼女もすでに90歳を超え、孫娘にその地位を渡そうと準備している。後継者にとっての最大の問題はこの地を維持するコスト。世俗化を防ぎながらもこの地を維持するだけの収入源を見つけることが課題だそうだ。(続く)

≫ 続きを読む

2016/05/21   yamagishicoffee

Daifukuji(大福寺)のバザー

201605-daifukuji-300x75.jpg

 

今日は年に一度の大福寺のバザー。大福時は有名な手島レストランの隣で、昔の日本人移民や子孫の日系人達のお寺。日系人コーヒー農家のコミュニティの中心だ。子供たちを集めて和太鼓のチームが組織され、コナで様々なイベントが行われるたびに子供たちの和太鼓の演奏が披露されたるする。

バザーでの収益金はお寺の維持費に充てられる。自分が使わなくなった物をバザーに寄付し、売り上げはお寺の収益となる。
バザーは既に80歳を過ぎた日系3世たちが今でも中心になって行われる。今日は朝から雨だったにもかかわらず大盛況。若い4世、5世らに交じって、3世たちも交通整理やらで濡れながら奉仕している。


私にとってのお目当ては食べ物。日系人たちが作った食べ物を即売する。これらは人気があるのでバザーの開始と同時に買わないとすぐ売り切れになる。バザー開始前から雨の中長蛇の列。
マンゴーの酢漬け、スターフルーツの酢漬け、大根の酢漬け、白菜の酢漬け、オレンジの皮の酢漬け等々。昔の日系移民は庭で採れるものはなんでも酢漬けにしたらしい。
また、ジャムも豊富。ジャムというよりゼリーといった感じ。パッションフルーツ、グアバ、ほおずきなどの様々なフルーツのジャムが並ぶ。
饅頭、スパムむすび、太巻きなども飛ぶように売れる。

食べ物売り場はバザー開始前から並んだ人々が一斉に殺到するので大混雑。会計の列も4列もある。私の列は日系人のお婆ちゃん二人が計算と現金授受を担当する列で、列の進み具合が遅い。隣の列では私の友達の日本人2人がテキパキと計算をこなしているので、どんどん進んでいく。

そもそもバザーは寄付が目的。けちけちしてはいけない。1週間はもつ食料を買い込んだ。
さて、我々の番になった。一人のお婆ちゃんがひとつひとつの品物の値段を読み上げ、隣りのお婆ちゃんが電卓に打ち込む。ニコニコしながら一生懸命に合計金額を計算してくれている。
金額が出た。えっ!!?どう考えても高すぎる。間違っている。いくら大量に買ったとはいえそんなには買っていない。
元銀行員の私としては計算間違えを放置するのはとてもつらい。第一、目の前に並んでいるこれらの食べ物を一瞥しただけでこの金額が間違えであることは常識的に分かるだろう。それくらい金額が違う。
ここで日系人お婆ちゃんの間違えを糾弾して世の中の価格体系の秩序を維持するのが社会正義である。資本主義の根幹だ。
しかし、ずぶぬれになりながら奉仕活動をしている先輩農家の顔が浮かんでくる。社会正義も大切だが先輩農家との付き合いも大事だ。
そうだ!そもそもこれは寄付として買っているものだ。第一、このお婆ちゃん達もボランティアだ。タダ働きどころではなく、自腹を切って、朝早くから色々な料理を取りそろえ持ち込んでいるのだ。ここで間違えた金額など、彼女らが持ち出しで払っている金額に比べたら僅かなものだ。
いやいや、ここで人情論に流されている場合ではない。資本主義の根幹の話だ。いや待て。寄付行為が発達しているのがアメリカ資本主義の特徴だ。寄付行為がなければアメリカの資本主義は成り立たない。殺風景な世の中になるだけだ。
ああー、お婆ちゃんがニコニコしながら、私がお金を出すのを待っている。どうしようどうしよう。
様々な思考が脳裏をかすめるなか、慌てて財布から追加のお札を取り出し、ここは快く文句を言わずに支払うことにした。全然潔くないか。。。。。

ブツクサブツクサ。

≫ 続きを読む

2016/05/16   yamagishicoffee

カビ大好き♡

201605-surround-wp.jpg

 

 CBB(Coffee Berry Borer)という害虫は雨が降ると成虫したメスが実の中から出てきて新たな実に穴をあけて卵を産み付ける。このところ雨の日が続いているので、CBBの活動が活発になっていると思われので、Beauveria Bassianaという白カビの胞子を散布した。今シーズン最初の散布だ。このカビはコナの自然界に存在する。胞子が直接、昆虫類に付くと、そこから体内にカビが生えて昆虫を殺す。

世界中のコーヒー農家の大半では化学的な殺虫剤を使用する。一応、業界では殺虫剤はコーヒーの味に影響を与えないとの整理になっているが、私は同意しかねる。しかし、この自然界に存在するカビの胞子がコーヒーの果実の表面に付着しても中の種子であるコーヒーに影響を与えることはない。また、殺虫剤だと使用し続けるうちに害虫が耐性を取得するがカビの胞子だとその問題はない。

カビの胞子は直射日光に弱いので、日差しの強い日に撒くのはダメ。今週の様に毎日雨が降る時にに撒くと実や葉の表面に付着したまま生息し続ける。


写真のコーヒーの実や葉が白いのはカビではない。これは粘土。カビの胞子を散布する際にカオリンという粘土を混ぜて噴霧する。カオリンは中国の景徳鎮の磁器に使われる粘土で、有機栽培の果物の害虫対策に用いられる。よくリンゴやブドウの表面に見かける白い粉のコーティングがカオリン。胃薬や整腸剤に入っている物質で食べても問題ない。コーヒー農家でカオリンを撒くのは世界中でもコナだけだろう。しかも数軒のみ。我々は先頭をきって使用を始めたが追随する農家は少ない。人望のせいだろう。

 果実に粘土の膜を施すと、ザラザラした表面を害虫が嫌がり、果実に侵入するのを防ぐ。どうしようどうしようと害虫が実や葉の表面をウロウロと歩くうちに、カビの胞子を体中に引っ掛けるのを狙う。その他、酵母菌や乳酸菌などの有用微生物群なども混ぜて噴霧している。

 木全体が白くコーティングされるので、直射日光に弱いコーヒーの木を日焼けから守る。木の温度を下げて木の体力を保つので生産量が上がるという実験結果がある。また、私見ではあるが、日光を遮るので、熟成にかかる時間が長くなり、甘みが増すと思う。うちのコーヒーが他のコナコーヒーよりも甘いのはこのおかげだと私は思っている。

昔、NYで働いていた頃、夏に日本に出張した。最終日は大阪。大阪の暑さは尋常ではなかった。35度の猛暑のなか、背広で街を歩き回った。NYのウォール街では毎日がカジュアル。背広にネクタイは既に前世紀の遺物と化しているが、日本ではまだまだ伝統を大切に守っている。そもそも背広にネクタイは胸板の厚い西欧人の民族衣装で、貧相な体格の日本人には似合わないだろう。第一、日本の夏は欧州に比べて殺人的に蒸し暑いので、明らかに場違い。それでも、日本のサラリーマン達はその欧州の民族衣装を大事に守っている。我慢比べか。
大阪の取引先回りが終わり、関西国際空港へ向かう電車の中でカジュアルに着替えて飛行機に乗った。NYの自宅へ着くなりぐったり疲れてベッドに倒れこみ寝た。翌朝トランクを開けてビックリ。ワイシャツが緑色。カビだらけ。汗でビショビショのワイシャツをそのままビニール袋に押し込んで24時間トランクの中に入れて置いたらカビが大繁殖した。

でも、農園で撒いている白カビは良いカビです。好き♡

≫ 続きを読む

2016/05/14   yamagishicoffee