農園便り

2018年12月

ハチミツとコーヒー

朝食は自家農園で採れたハチミツと、自家農園で採れたコーヒーと、庭から採れたパパイアに、妻が焼いたパン

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2018/12/09   yamagishicoffee

CPOとCAL (Chief Picking Officer vs Cheap Asian Labor)

私はYamagishi Coffeeの会長を称している。妻が社長。ただし社員は我々2人のみ。

私がNYで勤めていたMerrill Lynchにも階級がある。当時は下からAssociate、 Senior Associate、 Assistant Vice President(AVP)、 Vice President(VP)、Director、 Managing Director(MD)、 Executive Vice President、 President、 Chairmanと出世の道は険しい。

一般には大卒でAssociateとして入社。2年くらい丁稚奉公をしてSenior Associate。何割かはこの辺りで一旦辞めてMBAに行く。MBAで好成績を収めると、AVPで入社する。2~4年でVP。ここまでで半数以上が脱落するし、この時点で既に30歳前後。

そこからは実力と努力と運次第。雇用の保証は一切ない。成果が上がれば出世するし、業績が悪ければ解雇される。なかには40歳代前半でMDの上のExecutive VPになる人もいる。彼らエリートはやがて次期社長か、引き抜かれて他社の社長に収まる。

そんなエリートとは違い、才能に乏しい私は、がむしゃらに働くだけ。成果主義なので残業代は出ない。残業すればするほど、時給に換算した給料は下がる。残業のしすぎで、仲間からはCheap Asian Labor(アジアからの低賃金労働者)とからかわれた。タイトルはMD&CAL(Managing Director & Cheap Asian Labor)だ。スマートに働く人が羨ましい。

 さて、従業員2人のYamagishi Coffeeでは、私より妻の方がコーヒー摘みが上手い。速いし、きれいに摘む。実力は彼女の方が上なのに、なぜか私が会長だ。でも、彼女には社長兼CPOというかっこいいタイトルを授けている。Chief Picking Officer。

収獲の最盛期には地元の人を含め、メキシコ人などのピッカーを雇う。新顔のピッカーが来ると、少し離れて摘んでいる私のことを「あそこにいるチーノ(中国人、スペイン語では東アジア人全般を指すらしい)は誰だ?」と古顔のピッカーに尋ねたりする。古顔が「あれがパトローネ(農園主)だ」と説明すると、ビックリ顔。少し間をおいて「この農園は賃金をちゃんと払ってくれるのか?」と心配そうに相談している。農園主がコーヒーを摘む農園はほとんどない。あっても、自分で摘まなければならないほど金に困った農園主は賃金の支払いにも滞るというのが、彼らの思考経路らしい。

 確かに農園は赤字だが、賃金の支払いに滞ったことはない。腰痛で苦しんでいるため、周りの農園主や医者からは収穫は人に任せろと言われるが、「良質のコーヒーを作るには、きれいな収穫が最も重要」が信条で、自分が中心になって摘む以外に品質を保つ方法が見つからないので、自ら摘んでいるだけだ。

メキシコ人達と一緒に摘むと妻が一番速い。さすがCPO。「うあー、あのムチャチャ(お嬢さん)速い!」と言いながら、大男たちが「Vamos! Vamos!(頑張ろう)」と声をかけあう。しばらく大男らの尊敬を集めた彼女だが、やがてセニョーラ(農園主の奥様)だと判って、またビックリ。だが、彼女は「私は弁護士(Abogado)です」と自己紹介したつもりが、Avocado(食物のアボカド)と発音してしまい、アボカドちゃんになってしまった。

ピッカーには、きれいに摘むようお願いしている。摘める量が減るうえに、他の農園ではそんな面倒なことは要求されないので、嫌がられるが、その分賃金を多めに払う。おかげで我々はタダ働きの上、農園は万年赤字。それでも、我々は彼らより朝早くから摘み始め、夕方遅くまで摘む。しかも、速くきれいに摘む。圧倒的な実力を見せれば、彼らも嫌とは言わずについてきてくれる。

私はハワイでも相変わらずCheap Asian Laborで、がむしゃらスタイルだ。いくつになっても自分のスタイルを変えるのは難しい。もっと、スマートにやってみたいものだ。

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2018/12/01   yamagishicoffee