農園便り

火山灰土壌 その2

先月号で記したように、日本人なら誰もが日本は火山灰土壌が多いと知っている。しかし、日本のコーヒー業界の人は、日本の火山灰土壌(黒ぼく土)とコーヒー産地の火山灰土壌とが同じ種類であることを、はっきりとは認識していないのではなかろうか。市販のスペシャリティー・コーヒーに、「〇〇農園はコーヒーの栽培に適した肥沃な火山灰土壌」云々との説明を頻繁に見かける。肥沃な火山灰土壌?、日本語としてなんだか変。形容矛盾だ。

火山灰土壌は、ミネラルと腐植が豊富。団粒構造をなしていて、保水性や透水性に優れている。フカフカして粘り気もある。しかし、酸性で、かつ、粘土にリン酸が吸着して植物がリン酸を吸収できないので、施肥が必要な問題の多い土壌だ。決して肥沃ではない。

世界の12種類の土壌のなかで、最も肥沃なのはチェルノーゼム土壌。つまり、穀倉地帯のウクライナ、北米のプレーリー土、中国東北部の黒土、アルゼンチンのパンパ土など。穀物がどんどん育つ。土の王様だ。次いで、黄土高原の粘土集積土壌、インドのデカン高原やエチオピア高原のひび割れ粘土質土壌も肥沃。我らが火山灰土壌は色が黒く(腐植が多い証拠)て肥沃そうに見えるが、さほど肥沃とはいえない。他のコーヒー産地のブラジルやアフリカのオキシソル土壌(赤土)やベトナムの強風化赤黄色土よりはましだけど。

黒ぼく土は、ずっと日本の農民を悩ませてきた。戦後になって、石灰による酸性度の改良と大量のリン酸の施肥で、ようやく肥沃となった。日本人にとって、「お代官さまー、今年はオラの畑じゃあ、菜も大根もなーんも育たねかっただあ。どーか、ご勘弁くだせー。」という時代劇の台詞は、誰もが知っている民族の記憶と言っても過言ではない。

大岡越前守の時代に青木昆陽が桜島の火山灰降りしきる薩摩でも育つサツマイモを関東に持ち込んだというのは時代劇の定番テーマ。(最近は青木昆陽の功績というのは疑問視されているらしい)。つまり、サツマイモぐらいしか育たない土だ。

落語で長屋の八つぁん熊さんが、たな賃を滞納しても大家さんから叩き出されないのは、大家は長屋のトイレの糞尿(下肥)を江戸近郊の農家に売って収入を得ていたから。大腸菌や寄生虫などの衛生上のリスクを冒してでも、そうまでしないと野菜は育たない土だ。

昭和初期には、満州の肥沃な土壌を求めて開拓団が入植した。逆に、戦後、開拓団が引き揚げて日本へ逆入植して苦労したのが、日本の黒ぼく土。満州の肥沃な黒土と見た目は似ているのに、満州のようには作物が育たない。

我々日本人は、かくも火山灰土壌に苦労した歴史と文化を共有するのに、コーヒー業界の常套文句「肥沃な火山灰土壌」とは、これ如何に。農民の苦難をもうお忘れか。

火山灰土壌は数万年単位の短い期間で劣化する。ミネラルも抜け落ちる。コーヒー産地の熱帯地方では、常に新たな火山灰が提供される標高の高い所には火山灰土壌があるが、標高が下がるにつれて、より痩せた土壌に風化する。中南米のコーヒー農家は、山の下の痩せた土地に比べればましだから、「肥沃な火山灰土壌」と自慢したくもなるのだろう。スペイン語ならばそれほど違和感がないのかもしれないが、それをそのまま日本語に訳して使うから、奇妙に聞こえる。

確かに、コーヒーは火山灰土壌が好きだ。しかし、コーヒーに最適の土とは限らない。栄養を与えなければ痩せた味になる。他のコーヒー産地にはもっと肥沃な土壌もある。「肥沃な火山灰土壌」と威張る中南米のおじさんは、実は心の中では「日本人さまー、今年はオラの畑の火山灰土壌では栄養が足りなくて、コーヒーは育たねかっただあ。ご勘弁くだせー。ポルファボール」と思っているかもしれない。(来月に続く)

 

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世界大百科事典 第2版の解説

(略)…日本の不良土の分布は広く,畑地総面積の約半分に及んでいるが,不良土のなかでも不良火山灰土と酸性土壌の占める割合が圧倒的に多い。

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2020/06/01   yamagishicoffee

シュシュシュシュ、キュキュキュキュ

もう10年近く前の事だけど、あるお店に、その翌月から私のコーヒー豆を置いてもらえることになった。生産者として、とっても嬉しい。丹精込めて育てた豆が、どんな風にお店に並ぶんだろう。事前にこっそりお店を見に行った。当然、店員さんは私のことなど、まだ知らない。

 

ショーケースの中を覗き込んだ。このブルーマウンテンの隣に私の豆が並ぶのかなあと想像するとワクワクする。15種類くらいのコーヒーが並んでいる。一心不乱に覗く。色々な産地があるなあ。深煎り、浅煎り、大きい豆、小さい豆。こんなにたくさんの中から、お客さんは私の豆を選んでくれるのかなあ。ちょっと不安。

店員さんは不審がっている。もっともだ。「どんなコーヒーをお探しですか?」と尋ねられた。「フフフ、一番美味しいコーヒーに決まっているじゃないですか。まだここには置いていないけどね、来月には分るよ」と心の中で声がしたけど、やっとのことで押しとどめて、「どれも美味しそうですね」と答えた。

私は、ますますショーケースに顔を近づけて、もう、息でガラスが曇るくらい。並んでいるライバルのコーヒー豆たちを全てなめるように見た。

 

お礼を言って、お店を立ち去ろうとすると、何も買わなかったのに、店員さんは明るく「ありがとうございます」と言ってくれた。とても好感の持てる店員さんだ。己の心の声の高慢さを恥じた。

お店を出て少し歩きだした。やっぱり悪いから、せめて何か買って帰ろうかと思い振り向くと、店員さんは、私がのぞき込んでいたショーケースに、除菌スプレーをシュシュシュシュ、布巾でキュキュキュキュ。

私は、コロナが流行るよりも、ずーっと前から、ばい菌・ウィルス並みに扱われてきたのだ。

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2020/05/30   yamagishicoffee

今年最後の開花

1月初旬からバラバラとコーヒーの開花が続いた。今回が今年最後の開花。今回の花は12月から1月にかけての収穫となる。

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2020/05/18   yamagishicoffee

潅水

昨年来、雨が多い。もう1年以上、コーヒー畑に潅水をしていない。

ところが、この一週間は雨が降らなかったので、夜間潅水することにした。畑の潅水システムは10の区画に分けられ、それぞれコンピュータで制御されている。

久々なので、朝からコンピューターの作動チェックをしたところ、1つだけうまく作動しない。画面を見ると、傘のシンボルが付いている。どうやら湿度の変化を感知して、雨天時にはわざと水が出ないような機能が付いているらしい。

雨が降っていないのに、勝手に水を止められてはかなわない。マニュアルは要領を得ず、その機能の解除の仕方が分からない。製造会社にメールして文句を言った。

「雨も降っていないのに、勝手に水止めて、ギャーギャーギャー…」。正義を振りかざしたクレーマーの気分だ。このような不良品は根絶しなければ世の中は良くならない!

すると、夕方から夜にかけて雨が降った。。。。

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2020/05/03   yamagishicoffee

火山灰土壌(その1:黒ぼく土)

日本のテレビ局はハワイがお好き。頻繁にハワイ特集をする。コナコーヒーも取り上げられる。コーヒー畑で日系人のおじさんがコナのコーヒーが美味しいのは、この溶岩台地の土が秘訣と自慢するシーンは番組作りの定番だ。

コーヒーショップで働く友人が日本のテレビ局の取材を受けた。カメラに向かい、コナコーヒーが美味しい理由を並べたが、なかなかOKがでない。最後に火山灰土壌の話をしたら、ディレクターが「そうそう、それを一言で簡潔にお願いします」と、撮り直しになった。最初からそれを撮りたかったらしい。観光名所のキラウェア火山と話が繋がるし。

確かに、コーヒー産地はハワイ島コナの他にも、キリマンジャロ、ジャワ島、グアテマラなど火山の近くが多い。コーヒー関連の本にも、コーヒーは火山灰土壌で良く育つと書いてある。どうやら日本のコーヒー愛好家には常識らしい。

コーヒーに適した土壌は有機物や腐植(有機物が分解した物)が多く、ミネラル豊富、保肥性、保水性、透水性に優れ、弱酸性の土壌。火山灰土壌はこの条件の多くを満たしている。世界の土壌を12種類に分類すると、火山灰土壌は世界中で1%以下しかない珍しい土壌。熱帯・亜熱帯の火山、南国の山奥、人里離れた秘所、異国情緒たっぷりの珍しい土壌でコーヒーは育つと想像すると、なんだか、神秘的でありがたみが増す。コーヒー本の著者もテレビのディレクターもそれを狙っているように感じる。

実は火山灰土壌の学術名はAndosol。一説には、その語源は日本語の「暗土」。日本では古くから「黒ぼく土(くろぼくど)」と呼ばれる。コーヒー本の著者もテレビディレクターもそんな単語は知らないかもしれないが、農家なら誰でも知っている。日本を代表する畑の土だ。日本のテレビ番組で農家のおじさんがフカフカで粘り気のある黒い土を手に取り「この畑は土が良い」と自慢する土は、コナのコーヒー農家のおじさんが手に取る土と同じ種類だ。

火山灰土壌は活火山近郊の若い土壌。火山国の日本(あるいはコーヒー産地)では常に火山からの新たな噴出物が供給されるのでミネラルが多い。また腐植(動植物の死骸が分解した物)も多い。通常、温暖で雨の多い地域では、微生物が活発で、有機物はドンドン分解され消滅する。よって、雨の多い地域はやせた土になりやすい。ところが、火山灰土壌の粘土(アロフェン)は、有機物が完全に分解される直前の腐植を強く吸着して、それ以上の分解を防ぐ。これにより腐植が豊富となる。腐植は黒いので日本の土は黒い。ころころっとした団粒構造を持ち、保水性と透水性が高い。踏むとボクボクと音がするので黒ぼく土。沖縄や小笠原を除いて、黒ぼく土は北海道から九州まで全国にある。世界には少ないが、日本では最もありふれた土だ。

コナに視察に来た日本のカフェのオーナーが、「この火山灰土壌が良いんですよね」と、憧れの眼差しで畑の土を見つめるが、青い鳥、いや黒い土はすぐそばに居る。

ちなみに、黒ぼく土はコーヒーに適しているが、残念ながら、日本はコーヒー栽培には向かない。コーヒーは霜で即死する。100年に一度でも霜が降りる所はリスクが高い。霜柱が立ちやすいのは火山灰土壌の特徴だ。さらに、気温が23度を越えると光合成が阻害される。コーヒー産地の気温は日中でも27度を越えない。しかも、昼夜の寒暖差が必要。だから、コーヒー産地は熱帯・亜熱帯の標高の高い場所にある。また、コーヒーは根が浅いので強風に弱い。台風の通り道にコーヒー産地はない。

コーヒーを栽培したいなら、コナへどうぞ。土も良いが、気候も良い。我家にエアコンはない。コーヒー産地は人間にも快適。(来月に続く)

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2020/05/01   yamagishicoffee

「マリガン お正が2~」仕事始め

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「マリガン お正が2~」の三が日が明けて、今日は仕事始め。垣根の剪定。

初日だからほどほどに。3時間で終了。そして昼寝。

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2020/04/27   yamagishicoffee

マリガン お正が2~ 書初め

マリガン新年の2日目は書初めをしました。

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2020/04/25   yamagishicoffee

マリガン宣言 お正が2~

まずは、コロナウィルスに罹患した方にはお見舞い申し上げます。不幸にもお亡くなりになった方やご遺族にはお悔やみ申し上げます。医療関係者の皆様にはお礼申し上げます。

 

さて、ハワイ島の私は外出自粛を始めて50日が経つ。町へは3回くらい買い物に行っただけで、畑に籠りっきり。農作業のやりすぎでヘトヘト。心身ともにリフレッシュが必要。

そこで、本日、「マリガン」を宣言。題して、「2020年、お正が2~」。

おせち料理とお雑煮を作って、3日間飲んだくれることにした。今年の前半はなかったことにして、今から新年。

「あけましておめでとうございます。2020年が良い年でありますように。皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。」

 

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マリガンとはアマチュアゴルファーがミスショットをしたときに、今のは無かったことにして、無打罰で打ち直すこと。明白なルール違反。

 

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2020/04/24   yamagishicoffee

カオリン噴霧

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コロナウィルス対策ではありません。コーヒー畑の害虫対策です。

CBBという害虫とカイガラムシを退治するために、昆虫類に取りつくカビの胞子とカオリンという白い粉(粘土)を混ぜてコーヒーの木に撒く。カオリンは胃薬や化粧品や磁器の原料に使われる粘土。実の表面がコーティングされると、ザラザラするので虫が嫌がる。葉が白くなるので日除けにもなる。

防護服は普段は使い捨てだけど、今年は何度も使います。

 

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2020/04/22   yamagishicoffee

FNN Prime online の取材

https://www.fnn.jp/articles/-/32538?fbclid=IwAR2W9O4aHjTeGAHt2g2VaEZDcpWD3LtAHmU-yecKtuuq1wrCmYE1XgbQCqk

フジテレビ解説委員の鈴木款さんに取材を受けました。コロナウィルスのコナコーヒーへの影響についてです。

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2020/04/15   yamagishicoffee