農園便り

コーヒー摘み上級編

https://youtu.be/VuvDGfKArzU

 

昨日ポストしたコーヒー摘みのビデオに続き、妻の秘技をご披露。

少しわかりにくいが、時折、黒っぽい実を一粒だけ摘まむのが数回ほど映し出されている。黒い実は、選り分けてピッキングバスケットの横に付けたジップロックの中へ入れる。

黒いのは傷んでいるか、過熟したもの(腐敗やカビなどの可能性がある)、またはCBBという害虫に食われたもの。虫食い豆は地面に落としてはいけない。必ず、畑から取り除く必要がある。だからジップロックへ入れる。

また、無理やり実を引っ張ると、枝の表皮まで引き裂いて枝を傷つるので、優しく実を回転させながら枝から切り離す。それと、木の健康を保つために葉っぱも落とさない。

こうやってきれいに摘み取ることがクリーンカップの秘訣。

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2019/09/20   yamagishicoffee

コーヒー摘みの様子 ビデオ

https://youtu.be/J2ixpQo3ITg

コナ・コーヒー収穫、今シーズンの第2ラウンド終了。

 

ビデオは妻が摘んでいる様子。

早送りではありません。

こんな感じで1日10時間、4カ月間摘み続けます。

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2019/09/19   yamagishicoffee

理想のコーヒーの味

いよいよコナ・コーヒーの収穫が始まった。1月まで続く。体重が何キロも落ちるダイエットの数ヵ月でもある。ただ、肉体的には辛くとも収穫は充実感がある。

収穫が始まると忙しくて訳が分からないうちに年を越してしまうので、今のうちに今年を振り返ると、今年、嬉しかったのは、吉幾三さんブランドの珈琲に私どもの豆を採用していただいたこと。それと、市川海老蔵さんが、一時期コーヒーに凝って、そのきっかけとなったのが私どものコーヒーだったこと。彼のブログの写真からの私の勝手な解釈だが。ともかく、成田屋さんに気に入っていただけるだけでも光栄で生産者冥利に尽きる。

生産者冥利といえば、以前、都内で私どものコーヒー豆を扱っていただくお店にこっそり見に行った際に、順番待ちで並んでいたら、目の前の着物姿のご婦人が、腰を屈めてショーケースに並ぶコーヒー豆を覗き、「ハワイの山岸コーヒーをください」と言った。店員が「山岸コーヒーはすぐに売り切れたので在庫がありません」と答えると、「あら残念。あんなに美味しいコーヒーは初めてだったので、お友達に差し上げようと思ったのに」と聞こえてきた。こんな場面に遭遇できるなんて、本当に嬉しい。

こんな身に余る体験をしたうえに、さらに私には夢がある。実に欲深い。それは、ドラマ「相棒」の杉下右京に山岸コーヒーを飲ませること。ドラマのオープニングで杉下右京が自分の机の上でコーヒーを淹れている。そこに隣の課の角田課長が「暇か?」と入って来る。コーヒーに驚き、「警部殿、遂に紅茶からコーヒーに宗旨替えか?」と尋ねる。すると、「いえね、最近、理想のコーヒーに出会ったもので。今までこのコーヒーに気が付かなかったとは、僕としたことがうかつでした」と答える横に、さりげなく山岸コーヒーが置いてあるという設定。さらに、「おや?」「妙ですねぇ」などと呟きながら、コナコーヒーの流通量は生産量よりも多いという産地偽装事件を掘りだす。そして、山岸農園の味を知る右京は、次々と本物と偽物を見分けて、みごと事件を解決するというストーリー。コーヒーを摘みながらこんな妄想にふけると、重労働も結構楽しい。

空想ついでに、私には追い求める理想のコーヒーの味がある。それは、全盛期のルチアーノ・パヴァロッティが歌うNessun Dorma(誰も寝てはならぬ)のようなコーヒー。Nessun Dormaはオペラ「トゥーランドット」のアリアで、パヴァロッティがトリノ五輪の開会式で歌った曲。偶然にも同五輪のフィギアスケートで荒川静香さんが金メダルを取った時の曲と言えば日本人には馴染み深いだろう。イナバウアーの瞬間の「タララララ、ラーララー♪」という例のメロディーだ。

パヴァロッティが歌うNessun Dormaのように、何も邪魔するものがなく澄み渡った透明感、天高く、どこまでも明るく、輪郭のはっきりした甘み、そして、ボリューム感があって情熱的。そんなコーヒーを作るのが理想だ。

なぜ、それを求めるかというと、コーヒーは完璧に育てると、そういう味になる。それがコーヒー本来の味だから。そのためには、その年の天候に恵まれるだけではなく、土とコーヒーの木を健康に保ち、病害虫から守り、秋には健康的に赤々と熟した実だけを丁寧に摘み、それを洗って、きれいに乾燥させる。さらに、比重の軽いものや欠陥豆を丁寧に取り除くなど、年間を通して様々な作業の積み重ねが必要となる。

パヴァロッティの歌声の域に達するのは、かなわぬ夢かもしれないが、一歩でも近づいて、杉下右京や市川海老蔵さんを唸らせたいものだ。もっともっと、クリーンで透明感のあるコーヒーに「なりたやー!」

https://www.youtube.com/watch?v=S8F-lenWkIo

 

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2019/09/01   yamagishicoffee

午前中は休息

収穫の翌日は午前中は休憩して、長靴を洗って干す。

次の収穫まで2週間。午後から草刈りを開始。その他、今週は害虫防御のためのカビ胞子散布、害虫が飛んでこないように隣の畑との境界に植えた垣根の剪定、そして、虫食いの実の除去など、農作業は続く。

ところで、休憩中の午前中は年に一度の健康検診へ行った。コレステロールの善玉・悪玉比率が正常範囲内に戻った。コーヒーを飲んでいる効果か、コーヒーを摘んでいる効果かは不明。

ついでに、ちょっと高めだった中性脂肪の値が大幅に下がった。妻は、首をかしげながら、「じゃ、これはなーに?」と私のお腹を指差すが、それは中性脂肪ではありません。ビール腹は男性脂肪です。

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2019/08/21   yamagishicoffee

収穫の第一ラウンド終了

収穫した実を、皮むきと乾燥をしてくれる友人のWet millへ持っていったところ、待ってましたと歓迎を受けた。別に私に会いたかったからではない。うちのコーヒーの実を待っていたらしい。

皮むきの機械は回転式ドラムにギザギザが付いていて、そのすき間にコーヒーの実を通すときにギザギザに引っかかって皮がむける仕組み。すき間が広すぎると皮がむけない。狭すぎるとコーヒー豆(種子の部分)まで削ってしまい、豆が欠ける。よって、シーズンが始まる時にはそのすき間の広さを調節する必要がある。

その調節のためには、うちのコーヒーの実でないとダメらしい。うちはコナで欠陥豆の混入率が一番低い。欠陥豆が多いと、豆が欠けたのは、すき間が狭いからか、それとも、もともと欠陥豆(欠けやすい)だからなのか判別しにくい。また、皮がむけないのは、すき間が広すぎるためか、実が腐って皮が豆に付着しているからか判別しにくい。だから、毎年、欠陥豆の少ないうちの農園の実を使って、調節するそうだ。実験台か。。。。

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2019/08/21   yamagishicoffee

コナ・コーヒーの収穫の季節到来

収獲の第一ラウンド開始。

これから1月まで摘み続ける。

今年はコーヒーの実の生育状況が非常に良い。

こういう綺麗な実を摘むのは楽しい。摘んだ実を入れる袋も新品で気持ちが良い。

でも、毎年、収穫が始まると、忙しくて、訳の分からないうちに一気に年越し。

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2019/08/14   yamagishicoffee

コーヒー豆のハンドソート(手選別)

コナコーヒーは生豆が綺麗なのが特徴。コーヒー豆はすべてが健康に育つ訳ではないので、生産の各工程において、欠陥豆を取り除く作業を繰り返す。

まず、コーヒーの木を健康に育てる。そうすれば不健康な欠陥豆の比率は減る。害虫対策も行い、虫食い豆の増加を防ぐ。なかでも、コーヒーの生産で最も重要で、かつ難しいのは健康に完熟した実を選り分けて摘むことで、ここが農園主の腕の見せ所。

さらに、収穫後の精製所でも選別は続く。まず、実を水に通し浮いてくる比重の軽い実は取り除く。果皮と果肉を取り除いた後に、再度水に漬けて浮いたものは取り除く。

パーチメントを割ったら、サイズ分けし、極端に大きい物や小さいものは取り除く。次に比重テーブルで比重の軽い豆は取り除く。当農園では採用していないが、農園によっては色選別機で、変色したもの、虫食い跡のある豆を取り除く。

8年前にCBBという害虫がコナに上陸して、虫食い率が上昇した。多くの産地では殺虫剤で対処するが、アメリカは農薬の規制が厳しいので使えない。さらに、他の産地でハンドソート、つまり、人が手作業で欠陥豆を取り除くが、コナでこれをする農園はない。ハワイは人件費が高いので、機械による欠陥豆の選別が主だ。

例外はコーヒーハンターの川島良彰氏の会社のシャンペンボトルに入ったコナコーヒー。毎年、何人もの社員と一緒にコナに来てハンドソートする。飛行機代やホテル代を払って何日もやるから利益は出まい。相当なこだわりだ。

うちの農園も、害虫が上陸した最初の年は、妻と手作業で欠陥豆を取り除いた。すると、麻袋1袋(100ポンド)を選別するのに1週間。3袋で力尽きた。我々の年間生産量は多い年は約50袋なので、全部で丸一年かかる。無理だ。

そこで、開花と収穫の間の春から秋にかけて、全ての木の全ての枝の全ての実を見て、虫食い豆は収穫する前に取り除く事にした。虫は級数的に増加する。増えた後で取り除くのではなく、増える前に取り除く作戦。これで虫食い率がコナで最小になった。けど、手間がかかりすぎるので、コナでこれをする農園は他にないし、たぶん世界にもないだろう。

ところで、日本のテレビや雑誌で、喫茶店のマスターや焙煎士が焙煎前に、生豆を手で選別して欠陥豆を取り除く光景を見かける。日本人マスターの良心的で真心やこだわりを感じさせる感動のおもてなしシーンだ。しかし、経済学的に見れば、これほど、ばかげたシーンはない。本来は、人件費の安い生産地で選別すべき。わざわざ、粗悪のまま日本に運び、何十倍も人件費の高い日本で選別しては割に合わない。マスターの真心には頭が下がるが、地球全体で見れば、効率的な資源配分とはいえない。

コーヒー生産国の労働者の賃金は信じられないほど安い。消費国がコーヒー一杯に1円くらい余分に払って、その分を産地でハンドソートに充てれば、労働者の収入は何倍にもなるし、日本のマスターも真心を安売りしないで済む。その方が効率的な資源配分で、品質は上がるし、コストは下がり、コーヒー業界の生産性は向上する。

ただし、コナは例外。日本よりも人件費が高い。ハワイでは世帯年収740万円で低所得者層、465万円で貧困層とされる。これはオアフ島の統計だがコナも高い。だから、コナコーヒーが害虫被害で流通量が減ったと、あまり怒らないで頂きたい。えっ?他の産地のようにハンドソートしろって? この際だから、思い切って言っちゃうけど、あんたら日本人の人件費はハワイよりもずっと安いんだから、そっちでやってよ。ハハハ! 

人件費高騰のおり、ご理解賜りますよう、村を代表してお願い申し上げます。

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2019/08/01   yamagishicoffee

ラハイナ・ヌーン

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カイルア・コナでは本日7月24日午後12時30分にLahaina Noonとなった。ラハイナ・ヌーンとは太陽が真上を通過する事。だから、影ができない。

南回帰線と北回帰線の間の地域だけに起きる現象。

ホノルルでは7月16日だったが、ハワイ島カイルア・コナでは24日。

年に2回起きる。次回は来年の5月18日。

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2019/07/25   yamagishicoffee

雑誌「珈琲と文化」2019年夏号 ハワイの英語と工藤さん

雑誌「珈琲と文化」2019年夏号に拙稿が掲載されたので転載します。ハワイの日系人の英語とコナコーヒーを牽引した偉人の話です。ご笑覧ください。

 

中学校の英語の授業で、挨拶は“How are you? ”  “I am well, thank you”と習った。アメリカ流にI am fineと答えても良いとも教わった。伝統的イギリス英語ではHow are you?は、「おかげんはいかがですか」と、相手の健康状態を尋ねているので、答えは、心身ともに具合は良いI am wellとなる。だから、アメリカ流のI am fineは、昔のイギリス英語であれば「私は良い人間だ」となり、少し的外れで、くだけた表現である。しかし、現代のアメリカでは、それでさえ丁寧すぎる。I’m good.とか、単にGood!の方がより一般的。さらに、私が働いていたウォール街の会社内では“What's up, Man? ”  “Nothing”などのもっとくだけた挨拶も多く耳にする。I am wellなどと英国風の丁寧な挨拶をするのは部下のインド人ぐらいだった。

 コナの日系の老人たちにも独特の挨拶がある。道で会うと秋から冬は“Picking coffee? ”(コーヒー摘んでいますか?)、春には“All pau?” (今年のコーヒー摘みは無事終わりましたか?Pauとはハワイ語で終わるの意)と、いかにもコーヒーの村ならではの挨拶。それも、すごいピジン英語訛りなので趣がある。

かつて日本人町だったコナも近年は観光地化し米国本土からの移住が増え、日系人はむしろ少数派になっている。Picking coffee? は父祖の代からのコーヒーをハワイ訛りで語ることで、地元の同胞意識を再確認する。しかし、これは良く考えると、老人同士がコーヒーを摘めるほど健康ですかと訊いている訳で、強烈なピジン訛りとはいえ、まさに相手の健康具合を尋ねる正統派英語に沿った挨拶といえる。

 コナの英語には多くの日本語が残っている。例えば、コーヒーをメリケン・コッペ(アメリカコーヒーという意味)という。そのほかにも、

Hoshidana(乾し棚)     コーヒーを乾燥するデッキ

Kagi(鉤)              コーヒーの枝を引っ掛けてたわませるフック

Mushiro(筵)           コーヒーを乾燥するときに地面に敷くタープ(防水布)

Hinoshi(火熨斗)       アイロン

Mochitsky(餅つき)    餡子やDaikonzuri(大根おろし)やピーナッツバターで食す

Bento (弁当)         畑の昼の至福のひと時 色々なOkazu(おかず)が入っている

Furo (風呂)          畑仕事で疲れた後はコーヒーの枝で沸かした五右衛門風呂

Chicken skin(鳥肌)    畑の早朝は寒いので鳥肌がたつ(英語では本来Goose bumps)

40 year old shoulder    四十肩になると高い枝のコーヒーが摘めない

Go shi shi              トイレに用足しに行くこと

Just a skosh            少しだけ

Taran                   短い 足りない    

Taran taran             まぬけ(二つ重ねると知恵が足りないの意)

 

 昔、ハワイにはKotton-kun(コットン君)という言葉があった。カリフォルニアなどのアメリカ本土の日系人を指す悪口。頭の中が空っぽだから、転んで頭を打つと、コットンと音がするという意味らしい。かつて、コーヒー畑や砂糖きび畑で真っ黒に日焼けし、愚直に農業をしてたハワイの日系2世・3世には、色白で何かにつけてうまく立ち回り要領の良いアメリカ本土の日系人は軽薄で頭が空っぽに見えたらしい。しかも、洗練された標準英語を話すものだから、すごい訛りのハワイの日系人はずいぶん劣等感を感じたようだ。Kotton-kunという悪口はその劣等感の裏返しの対抗意識のように思える。

 

ホノルルよりもさらに田舎のコナの英語は訛っているなんてもんじゃない。うちの妻は英語のネイティブだが、彼女でさえ、引っ越してきた当初は、この村の日系人が何を言っているのか分からないことがあった。

Picking coffee? の挨拶にしても、たった2単語しかないのに訛っている。疑問文なのに語尾が下がるハワイ独特のイントネーション。数をかぞえても「One, Two, Tree」、thを発音しない。おまけに、日本人の英語と一緒で語尾のRは発音しないので、Mother(母)はMaddahと発音する。

映画評論家の小森和子おばちゃまの「モアベター(more better)」は、比較級が重複して文法的に誤った表現だが、ハワイでは、普通に使われる。しかも、発音はR抜きなので、Mo Bettah(モーベタ)となる。

年配の方々には標準英語を話せない人が多い。もし、あなたの英会話の先生がハワイ出身の老人ならば、ちょっと心配だ。しかし、テレビで育った世代は標準英語を使えるので大丈夫。その世代でも、仲間内ではハワイ弁だ。ハワイ出身のオバマ前大統領は演説の名手。分かり易い表現で歯切れが良い。しかし、彼もハワイで幼馴染と会うと、「ホワイドハウズはちかれたびー。ゴルフいぐべー」てな具合に話しているに違いない。会ったことないけど、そうだと思うよ。きっと。ウォーリー与那嶺だって灰田勝彦だってアグネスラムだってみんな訛っていたに違いない。会ったことないけど。たぶん。

 

戦前のコナの日系人の子供は、週末には日本語学校へ行き、日本語や修身を教わった。1世の親・祖父母たちは、子供たちが、英語の学校よりも日本語学校で良い成績を取ることを喜んだという。ところが、真珠湾攻撃の日を境に、日本語・修身教育は消えた。だから、現在85歳ぐらいの方々は日本語を話すが、その年代を境に日本語は通じなくなる。

若い世代の日系人は日本語をほとんど使えない。しかし、日本的な考え方を受け継いでいる。彼らは、傾向として、控えめで、礼儀正しく、忍耐力があり、思いやり深く、しかも、質素倹約的だ。日本語を話せない若い世代でも、会話の中に、”Shikatanai”とか“Mottainai”などの単語が使われる。英語には対応する単語や概念がないので日本語の単語が使われるのだ。

以前、植村花菜の「トイレの神様」という歌が流行った。トイレ掃除をすればべっぴんになるとお婆ちゃんから教わったという歌詞。トイレ掃除の話は初耳で、とても印象的だったので、曲を聴いた翌日、ゴルフの最中に日系3世にこの歌の説明を試みた。しかし、直ぐに私のつたない英語力では説明不能と悟った。英語にならない概念だ。ブクブクと溺れて自滅しかけたところ、「綺麗な女神がいるかどうかは知らないが、トイレを掃除すればか可愛い赤ちゃんが生まれると、親から教わった」との答えが返ってきた。昔の日系移民は子供たちにそう教えたそうだ。

 明治の移民の気質が世代を超えてこの地に保存され、もう日本ではすっかり忘れ去られたことが、ここに残されている。

 

さて、今年の4月に私が尊敬する日系2世のTakeshi Kudo氏がお亡くなりになった。享年97歳。タケさんとは、数年前まで一緒にゴルフをさせていただき、コーヒー栽培についても色々と教わった。彼はコーヒー農家のリーダーとしてコナを牽引した歴史的人物。もちろん、しっかりとした日本語を話す。

彼は第2次世界大戦中、日系人で編成された442部隊で欧州戦線で活躍した。442部隊は日本でもドラマやドキュメンタリーで幾度か紹介されている。大戦中、日系人は強制収容所に入れられるなどの差別を受けた。そんな窮地に陥った日系人社会を救うために、2世・3世の若者たちが戦争に志願してアメリカへの忠誠心を示した。日系人部隊はドイツ兵に囲まれたテキサス大隊兵を救出するために、テキサス兵の人数よりも多くの犠牲者を出しながら、敵の包囲を突破した。彼らの目覚ましい活躍が日系人の地位向上に資したとの紹介がなされる。

タケさんにその話を向けたところ、意外な答え。「そんな美談ではない。親・祖父たちの世代から、お前らが戦争に志願すれば、俺たちが助かると言われ、嫌々戦争に行った。戦争に行ったことも、戦場での戦いも誇りに思うが、あの親たちの仕打ちは今でも許せない」。なんだか、テレビや書物から得た知識とはかけ離れていて、ぐうの音も出なかった。

戦後はコナでコーヒー農家に戻った。当時のコナコーヒー農家は日系人が中心で、世界のコーヒー市況に翻弄され、生活は苦しかった。彼は同志たちと農協を立ち上げ、その会長として、また、コナ選出のハワイ州議会議員としてコナの町とコナコーヒーの発展を牽引した。現在のコナはコーヒー生産地としては小さな存在だが、当時はコーヒー栽培研究の最先端で、栽培技術で世界をリードした。

また、彼は世界に先んじてコナコーヒーに等級制度(Extra Fancyを筆頭に Fancy, No.1, Prime等の等級)を導入した。村全体で高品質のコーヒーを作ることに人々をまとめ上げ、遂に世界のコーヒー市況よりも高い値段でコナコーヒーを流通させることに成功した。

 実は、私の畑に関しては、Extra Fancyが一番おいしい訳ではない。粒の大きい順にExtra Fancy, Fancy, No.1だが、どのサイズが美味しいかは年によっても農園によっても違う。コナの農家の間では常識で、鑑定士や商社の人の間でもその認識は共通している。ところが、日本の消費者には大粒のKona Extra Fancy信仰が定着していて、高い値段を払ってくれる、不思議だが、ありがたい存在でもある。確かに大農園では、どう栽培しているか定かでない数百軒もの小農園からコーヒーを買取り、ごちゃ混ぜにして精製するので、サイズの大きい方が無難ではあるが、トレーサビリティーのある、より高級な単一農園のEstate Coffeeは別である。

こんな私見を述べたところで、認証制度を作ったタケさんらの業績にキズがつく訳ではない。Specialty Coffeeという概念を知る現代の我々には当たり前に見えるが、当時のコーヒーは、まったくのコモディティーで、そこへ、品質という概念を導入し、コナコーヒーを世界の市況と切り離し、高い値段を付けることに成功したのは凄い。世界中の誰にも見えなかったことが彼には見えていたのであろう。

彼はここ数年、耳が遠くなり、会話にも苦労するようになった。2年前に一度、危篤に陥った。医者は家族にあと数時間の命だと告げた。なんとタケさんには、そのひそひそ話が聞こえた。その瞬間、奥様を残しては死ねないと思ったら、急に力が湧いて生き延びたという。そして、昨年、奥様を見送り、今年、追うように逝った。442部隊ではアメリカと日系人のために戦い、戦後はコナコーヒーを一級品にするために戦い、最後は奥様のために病と戦った。

「ワシはアメリカ人じゃが、心は日本人」の声と笑顔が忘れられない。

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2019/07/18   yamagishicoffee

コーヒー害虫の防御壁

201907 Kukui1.jpg

道を挟んで隣のコーヒー畑は害虫(CBB)の被害率ほぼ100%。害虫がこっちの畑へドンドン飛んでくる。うちの畑の端にはククイ・ナッツ並木を植えてある。これが害虫の防御壁。この十年で随分成長し、すき間がなくなったので、かなり有効に遮ってくれる。加えて、日々、虫食い豆を取り除いているので、今のところ虫食い率は0.1%以下に抑えている。

今年は雨が多く、ククイ・ナッツも凄い勢いで成長する。ガードレールをはみ出して枝が伸びた。これではご近所にご迷惑なので、定期的に枝を切る。チェーンソーで切っているうちに雨が降ってきたけど、どうにか終了。

 

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2019/07/12   yamagishicoffee