農園便り

ストレステストをやってみた

アメリカでも日本語放送でNHKスペシャルが見られる。
先日のシリーズ「キラーストレス」の中で紹介されていた、ストレスチェックテストをしてみた。
テストはこちら: https://www.nhk.or.jp/special/stress
260点以上:ストレスが多い要注意の段階
300点以上:病気を引き起こす可能性があるほどストレスが溜まっている可能性がある段階

この基準に対して自分の点数を比べてストレス度を認識する。
やってみたら、現在の私は166点。ほとんどストレスのない状況だ。
ちなみに、2001年の同時多発テロ事件直後にウォール街で働いていた頃のことを思い出してストレス度を計ったら、軽く1500点を超えた。病気になるレベルの5倍だ。

ハワイでのコーヒー栽培は精神衛生上とてもよろしい。

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2016/06/25   yamagishicoffee

ストロベリー・ムーンをみましたか?

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昨日は夏至。私の家は真西に向いているので、秋分と春分の日には夕陽が真正面に沈む。夕陽は夏は右に移動し、冬は左に移動する。夕陽の位置で季節を感じる。夏至の昨日は最も右に夕陽が沈んだ。

また、昨晩はストロベリームーンだった。6月の満月をストロベリームーンと呼ぶ。由来はアメリカ先住民のアルゴンキン族がこの月が昇ったらイチゴ摘みの季節と判断したからだそうだ。しかも、夏至とストロベリームーンが重なったのは、1967年以来で、次は2062年6月21日だそうだ。ちょっと見れそうにはない。ちなみに、昨夜の月はコナの空では赤ではなく白かった。

イチゴといえば、ロンドンのウィンブルドンのテニス選手権が有名で、6月のトーナメント中はクリームを添えたイチゴが名物。ウィンブルドンはボルグが全盛の頃、真夜中の放送に噛り付いて試合を見ていた。イチゴはその頃からの憧れで、数年前にウィンブルドンの会場に行った際には、試合を見る前に、真っ先にイチゴを買って食べた。

以前、12月に日本に行った際、レストランの店員が、デザートには今が旬のイチゴでございますと言ったので驚いた。私のことだから、当然、その店員に噛み付いた。同席していた家族は私の反応にもっと驚いた。今やクリスマスの時期がイチゴの旬なのは日本の常識だとたしなめられた。

ところで、最近読んだフランス人の書いたワインやコーヒーの香りに関する本によると、コーヒーの香りには何十種類もあって、キャラメルの香りに関しては、西欧人はイチゴに感じる人が多く、アジア人には焼いたパイナップルに感じる人が多いと書いてある。

私なんか、ワインはブドウの味しかしない。コーヒーも人にはキャラメルの香りとか、恰好つけて言うこともあるが、コーヒーにはコーヒーの香りしかしない。どういうことだ?

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2016/06/21   yamagishicoffee

アジサイにコーヒーをあげたら真っ青に

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最近、いろいろなコーヒーが手に入ったので、毎日カッピングをしている。

ブルーマウンテン、ブルンジ、エチオピア・イェルガチェフ、エチオピア・チェルベサ、コロンビア、コロンビア・ゲイシャ、マンデリン、東チモール、そして山岸農園のコナをカッピングして比較する。

やっぱり、自分のコーヒーが一番美味いなと悦に入る究極の手前味噌な遊びだ。

ところが、同じコーヒーでも、日によってカッピングのスコアーが違ってくるので、自分の感覚の不安定さとカッピング技術の未熟さに呆れて、顔が真っ青になる。

真っ青になったのは私の顔だけではなく、我々がカッピングをしているキッチンのすぐ外のアジサイの花の色も真っ青に変化した。

家の周りの草花も我々の顔色をうかがっているのだろう。

 

実は、カッピング中に大量のコーヒー液と出がらしの粉がでるので、それをボールに貯めて、キッチンのドアのすぐそばにあるアジサイの木の周りに捨てていたら、徐々にアジサイの花の色が変わってきた。

ピンクが多かったものが、青い花ばかりになった。

調べてみたら、アジサイの花は土の酸性度で色を変えるらしい。酸性度が低ければピンクで、高ければ青くなるそうだ。

 

コーヒー液は酸性だ。私がカッピングしているのはすべて高得点のスペシャリティーコーヒー。爽やかな酸味が特徴の絶品ぞろいだ。クエン酸、酢酸、リンゴ酸、がたっぷりのコーヒーだ。

アジサイの色が青に変わったのは、毎日コーヒーをあげていたので、土の酸性度が上がったらしい。

 

ところで、化学的なことは良くは知らないが、梅干しがアルカリ性食品であるのと同じで、コーヒー液は酸性だが、体内に入ると、体内をアルカリ性にするからアルカリ性食品だという議論はよく見かける。

アジサイの体内はアルカリ性にしないのだろうか??

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2016/06/18   yamagishicoffee

剪定(その4)剪定バサミ

剪定作業に欠かせないのが剪定バサミだ。盆栽を楽しまれる方には常識だろうが、剪定する際には枝に斜めにハサミの刃を入れると切りやすい。斜めでなく、枝に対して垂直に切ろうとするとかなりの力を有するし、ハサミが壊れやすい。切れの悪いハサミだと、どうしても力任せに切って、枝の切り口が荒くなる。そこからばい菌が入りやすく樹が病気になる原因だ。また、ハサミにも余計な負担がかかり、壊れる原因だ。よく切れる良質のはさみだとサクッサクッ、パチッパチッと切れて、切り口もきれい。ハサミに負荷が掛からないし、手も楽だ。
 

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私は日本で買ってきた写真のはさみを使っている。最高級品で、山形の野村屋製製鋏所の「村久」だ。鍛冶屋の職人さんお手製の大変なすぐれものだ。もう、これなしではコーヒー栽培はできない。
 

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妻はこれ。岐阜の会社の「岡恒」。値段は安く、大量に生産しているので、日本では簡単に手に入る。こちらも素晴らしい。

コナの店で剪定バサミを買うと、米国製やメキシコ製などで、品質が悪い。ほんの数か月使っただけで、ハサミの刃が合わなくなる。枝が切れずに刃と刃の間に枝が挟まってしまったりする。すぐに錆びたり、鈍らにになり切れ味も落ちる。大体、私の手には無駄に大きすぎる。

 一方、日本製の品質は素晴らしい。切れ味が良く、長持ちする。コナの店でもたまに日本製が棚に並ぶことがあるが、日系人の農家の人々は日本製の品質が良いことをよく知っているので、すぐに売り切れてしまう。だから日本製が欲しければ、日本に行った際に買う。

山岸農園は日本の職人の技に支えられている。コーヒーを飲む際にはフィルターやサーバーやミルなどの製品ばかりに注目するのでなく、鍛冶屋さんにも思いを馳せてほしい。日本の職人さんに感謝だ。

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2016/06/15   yamagishicoffee

剪定(その3)

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ハワイには台風はほとんど来ない。ハワイ島に台風が近づくことがあっても、マウナケアとマウナロアの4000m超の山々が壁となって、台風がするっと進路を変えてしまう。しかし、珍しく昨年と一昨年は台風がいくつか近くを通過した。歴史上初めて台風がハワイ島に上陸もした。ハワイ島の歴史といっても、ヨーロッパ人が来て以来の歴史だから250年程度だけど。

コーヒーの木は強風が苦手だ。コーヒーは地下1m程度にしか根を張らない。しかも産毛のようなぽよぽよっとした根なので、強風が吹くと倒れることがある。特に3歳以下の若い木はなおさらだ。どうしても根が張る前にひょろひょろと背が高くなる。

新しい方の畑の木は苗木を植えて、丸3年が経過した。1歳と2歳の時に台風の強風が来て、合計で200本以上の木が根こそぎ倒れた。倒れた若木の横に鉄の棒を立てて針金で支えて立て直した。倒れないまでも、多くの木が僅かに傾いた。風に沿って傾いたので、みんな同じ方向に傾いている。だから、膝の高さにカットバックした切り株もみんな仲良く少しづつ傾いている。

先日記したように、2月に剪定をして、新しい幹の新芽がたくさん出てきたので、その中から3本を選ぶ作業をしている。中には台風で大きく傾いたものの、私が真直ぐに立て直しそびれたために、傾いたまま根がしっかりと張った木がある。新芽の幹は上へ伸びようとするので、大きく傾いた木は写真のように伸びてくる。

実はこれだと、各幹の間が広くとれる。株の根元から先端まで水平方向に30cm程度ずれているので、その分スペースが広く使える。普通ならば3本の幹を選ぶところを、場合によっては4本を残すことができて、収穫量が上がる可能性がある。

実際に、故意に苗木を斜めに植えてスペースを多くとる手法は、その効果には賛否両論あるものの、世界各地でよく行われている。

私の農園では、苗木を真直ぐに植えた方が安定していて、木の健康に良いような気がするので、故意に斜めに苗木を植えることはしていない。ただ、2年続いた台風の接近によって、図らずも何本かが斜めになった。斜めに育った曲者の方が、真直ぐに素直に伸びた木よりも収穫量が多くなるかもしれないと、素直でない私は期待する。
でも、素直な育ちのいい人を見ると羨ましいよね。。。。

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2016/06/13   yamagishicoffee

コーヒーの木の剪定(その2)

今年の2月に畑の3分の1を膝の高さにカットバック(剪定)した。以前は、Beaumont-Fukunaga 方式といって、3列に一列の割合でその一列全部をカットバックする方式をとっていたが、3年前からCBBという害虫対策のために畑の3分の1のエリアをすべてカットバックする方式に変えた。エリア全体をカットバックしてしまえば、そこには1年間害虫が全くいなくなるので、害虫駆除が楽になるし、より効果的に被害率を下げることができる。
 

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上の写真が3か月前の今年の2月にカットバックしたもの。すでに、新たな幹となる新芽が出ている。
 

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この写真は昨年の春にカットバックしたもの。この木だと、今年は10ポンド程度の収穫が期待できる。
 

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この写真が2年前の春にカットバックしたもの。もうかなり樹高が高く、実もたわわにできる。30~50ポンドの収穫が期待できる。これ以上背が高くなると、はしごでも使わない限り収穫ができないので、今シーズンの収穫が終わったらカットバックする。

つまり、コナでは3年ごとのカットバックサイクルだ。

この年数は産地によって異なる。コロンビアなどでは6年ごとにカットバックする。おそらく3年ごとというのはハワイ・コナだけではないかと思われる。

コナはティピカという原種に最も近い最高級品種を育てていて、それが放っておいてもどんどん育つコーヒーの原種に最適な気候と土壌を持つ。他の産地では考えられないスピードだ。コーヒーが喜んで育てば、それだけ質の良いコーヒーができる。

また、他の産地ではティピカがうまく育たないので、香味を犠牲にして、品種改良した品種を育てている。つまり、増大する消費国からの需要を賄うために、ほとんどの産地では、本来はコーヒーの育ちにくい場所に、品種改良して無理やりコーヒーを育てていることになる。

消費国からの価格圧力も強い。なにせ、一杯100円にしようというのだから、コスト削減が生き残りのカギとなる。手間ひまのかかるティピカなどは高級品のニッチに追いやられ、生産の容易な品種改良種が世界の主流となった。どうせ、砂糖とクリームを入れるんだろう、味にうるさいこと言うなよ、というのが、消費国からの価格圧力に対する、生産国側からの答えだ。


手摘みの場合、コーヒー農園でのコストの5割以上が収穫のための人件費だ。コスト削減のカギは速く容易に収穫すること。だから、品種改良して背が高くならない矮小種を植える。ティピカのように背が高いと一日中上を向いて、首の痛みと闘いながら摘まなくてはならない。矮小種を摘むのはとっても楽だ。だから、他の産地では、なかなか背が高くならず、それほど頻繁にカットバックする必要もなくなるという側面もある。

19世紀後半に日本人移民によって築かれたコナコーヒー。楽園ハワイでは、そんなコーヒーの資本主義の潮流、品種改良の波から、完全に取り残されて、今でも原種のコーヒーが伸び伸びと生息している。コーヒーに最適な気候なので、コーヒーが信じられないくらいのスピードで成長する。だから3年に1度の割合で剪定するのだ。

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2016/06/10   yamagishicoffee

剪定(その1)

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2月にコーヒーの木を剪定した。例年通り、畑の3分の1の木を膝の高さにカットバックした。それ以来3か月が経った。カットバックした株からは新たな幹となる新芽がたくさん出てきた。20~30本はあるだろうか。その中から、まずは、この時期に5~6本に絞り、それ以外はすべて摘み取る。そして、9月頃に最終的な3本を選ぶ。3本の幹を育てるのだ。

上の写真の一枚目は新芽の間引き前の写真で2枚目は間引き後の写真。

下の写真の3枚目・4枚目はより近くから見たもの。
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4年前に苗木を植えて育てた際には幹は2本に制限したが、今は4歳で根もしっかりついてきたので、今回は3本に増やす。

3本の組み合わせを選ぶ際には、空間をなるべく広く使えるように選ぶ。力強く伸びた健康な新芽を選ぶのだが、必ずしもそれだけではない。どんなに力強く伸びてきても、2本が隣同士では同じ空間で競合してしまうのでよくない。株の外側に向かって伸びた芽を3本バランスよく配置するのが肝要。内側へ向かって伸びる幹は摘み取る。

空間把握能力が問われ、割と頭を使う。また、畑は斜面にあり、斜面の山側と海側では、山側に実が多い方が、地面が高いので収穫する際に手が届きやすくて楽になる。斜面の山側の空間と海側の空間では、私は個人的にどちらかというと、山側の空間をひいきにしている。

どの新芽も懸命に伸びようとしているのに、その中から限られたものだけを残し、あとは切り取るわけだから、こちらの責任も重大だ。彼らにとっては生死の境目となる意思決定の連続なので、どれにしようどれにしようと悩みながらの作業となる。

うちの畑には約3,300本の木があり、今年は約1,300本の木を剪定した。仮に一本の木あたり20本の芽を摘み取り、3本を残したとすると、約26,000本の幹を捨て、約3,900本の幹を選び取る勘定になる。

コーヒーの世界だって競争倍率が厳しいのだ。うちはゆとり教育は採用していません。

 

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2016/06/08   yamagishicoffee

肥料をまいた

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今の時期、コーヒーの実は日々大きく成長していく。これから夏にかけては養分をドンドン使っていくので、多くの肥料を必要とする。

近所の農園は一度に大量の肥料を撒くが、うちは少量ずつで、回数を増やす。

昨日は朝から雨が降りそうな予感がした。空は降る気満々という感じ。肥料は雨が降る直前に撒かねばならぬ。

前回の施肥からは、まだ一か月程で、さほど日は経っていないが、5月は雨が多く、前回の栄養分は上手いこと地中深くへ溶け込んでいったので、肥料をやることにした。

妻と二人で重い肥料を畑へ運び、腰に付けたバスケットに入れて撒く。結構重い。かなりの重労働。汗だくになって行った。数時間かけて撒き終わりヘトヘトになっていると、ちょうど雨が降り出した。

完璧なタイミング。僕って天才!と大喜びで家に戻ったら、ぬか喜び。すぐに雨は止んだ。

午後、いくら待っても降りそうで降らない。このまま雨が降らないと、せっかく撒いた肥料が蒸発してしまう。天才だったんじゃないの?という妻の非難に耐えながらも、「もうすぐ降るから」を何度も繰り返しているうちに、とうとう日が暮れてしまった。そして、「日が暮れて気温が下がった時が勝負だから」にセリフが変わり、1時間が過ぎ、2時間が経過した。

 重労働で疲労困憊だったので、とうとう雨が降らぬまま、9時には床に就いた。普段は寝ている間に雨が降ると、その音で目を覚ます。だから「寝ている間が勝負だから」と妻に言い訳しながら眠りに入った。

次に気が付いたのが朝の7時。よっぽど疲れていたのか、10時間もノンストップで寝てしまった。でも、朝から憂鬱。夜中に途中で目が覚めなかったというのは雨が降らなかった証拠。こんなにヘトヘトになってまで撒いたのに無駄だったかと、ガッカリしながら起き上がり外へ出ると、一面ビッショ濡れ。相当降ったらしい。これだけ降っても起きなかったというのは相当疲れていた訳だが、疲れが一気に吹き飛んだ。
もう朝から爽快!!

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2016/06/06   yamagishicoffee

コナコーヒー農園便り 2016年6月号 コーヒー摘みは心のリハビリ

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コーヒー摘みは頭と心の凝りをほぐす。コーヒー摘みのような単純作業を繰り返すと、脳の思考が停止してくる。すると、NYで働いていた頃の嫌な出来事、数々の失敗など頭の奥に染み付いた悪い思い出が浮かんでくる。ストレスの多いサラリーマン生活で長い年月をかけて溜まったしこりのようなものだ。楽園ハワイでコーヒーを摘んでこんなに幸せだと、悪い思い出を上書きする。心の凝りをほぐしながら収穫する。栽培を始めて8年。骨の髄まで溜まったストレスを随分と追い出した気がする。コーヒー摘みはリタイア後の心のリハビリに良い。

また、脳の奥深いところにある記憶やアイデアを探り当てることがある。潜在意識の中にある事柄をつなぎ合わせて、ふっと投資の良いアイデアが浮かんだりもする。

コーヒー摘みのシーズンが終わると今度は体の凝りをほぐす作業が始まる。長い収穫シーズン中、重いコーヒーを運び続けるので腰を痛める。ぎっくり腰は癖になっている。毎日10kg入りのバスケットを10時間も腰に付けて収穫作業をするので、骨盤や股関節の周りの筋肉や腱ががちがちだ。特に股関節と足をつなぐ様々な腱から筋肉にかけて痛みがひどい。朝は腰が曲がったまま。真直ぐに腰を立てることができない。足と腰が痛くてうまく歩けない。だから日本からのお土産で嬉しいのは強力な湿布薬だ。

毎週の鍼灸治療が欠かせない。鍼灸の先生からは、もっと農園主らしく、収穫は人に任せなさいと叱られるが、美味しいコーヒーを作るには収穫が最も大切というのが信条なので、他人任せにはしたくない。

 せっかく収獲シーズンが終わったのに、痛くて上手くゴルフができないのは悲しい。代わりに午前中に農作業をして、夕方プールで歩く。ひたすら歩く。ゆっくり大股で歩いたり、全速力で歩いたり、横や斜めに飛び跳ねながら歩いたり、カニのように横歩きしたり、様々な筋肉を様々な角度に使いながら歩いて試していく。

しばらく歩き続けると思考が停止してくる。半分目をつむり眠ったような状態で1時間近く歩くと、特定の筋肉にギューと効いてくる。その筋肉に意識を集中させながら同じスタイルでさらに1時間ぐらい続けると、ふっと、その筋肉がほぐれる瞬間がある。こうなればしめたものだ。さらに歩いてほぐす。気が付くと3時間も歩くことがある。

 例えばある時、尾てい骨の2センチ上のところが、ギューと効いてきた。そのギューはさらに骨盤の内部の左右を後ろから前へ続き、臍の下の丹田がギューときた。へえー、そんな風に繋がっているんだと感心しながら、合計3時間歩いて、尾てい骨の上と腹部の内部はほぐれた感じがしたが、丹田だけはほぐれないまま日が暮れた。翌日はその続きをやろうと歩いたが、前日と同じ感覚は訪れずに終わってしまった。突然に降りてくるギューという感覚は気まぐれだ。一つ一つの筋肉と対話をしながら、歩き続けその感覚が降りてくるのを待つ。

コーヒー摘みはリタイア後の心のリハビリに良いと記したが、調子に乗って続けると体のリハビリが必要になる。日本の農家が冬の間は湯治場で傷んだ体を癒す話を昔から耳にするが、常夏のハワイではプールでケアーだ。

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2016/06/02   yamagishicoffee

満月の夜にはドルが上がる

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先週の話で恐縮だが、21日はBlue moonだった。

Once in a blue moonという英語の表現がある。「ごくまれに」とか「めったに…ない」という意味である。

その語源は「月が青く見えるのは珍しいから」という意味ではない。わざわざ遠回りして帰るほどの景色ではない。

Blue moonとは、もともとは belewe moonといい、  beleweは古語で裏切るという意味だが、今では使われなくなったので、発音の似たBlueが充てられたらしい。一つの季節(3か月)の中で満月が4回ある場合に、その3度目の満月という意味である。転じて、最近では、ひと月の中の2度目の満月の場合に使うこともある。それくらいの頻度で現れるほど珍しいという意味である。次回は2018年1月だそうだ。

昨日、面白い話を聞いた。満月の夜には植物は普通よりも早く成長するそうだ。満月の光でも光合成をおこなうというのは、すごい生命力だ。先週は雨も多かったし、満月だったので、さぞかしコーヒーも成長したことであろう。

実は昔、東京外国為替市場で「満月の夜にはドルが上がる」という格言があった。私が為替ディーラーだった頃に発見し、でっち上げた理論である。

昔の為替ディーラーはチャートをつけた。今のようにコンピューターが発達していなかったから、方眼紙に手書きだ。MBAで市場効率仮説を徹底的に教えられた私としては、チャート分析などあまり信用していなかったが(はるか後にその認識はかなり改めることになったが)、そんな私でもチャートはつけた。信じるか信じないかは別にしてチャートを見ないディーラーはいない。罫線分析というやつで、相場がこの平均線を下から上へ抜けたから買いのサインが出たとかいう後出しジャンケンみたいなやつだ。さすがにWall Street JournalやFinancial Timesはそういう分析はしないが、なぜか日経新聞が大好きで、頻繁にそういう市場分析を披露している占いみたいなあれだ。

ある時、私は満月の日にはNY市場(東京の満月の夜)で為替相場が大荒れになることが多いことを発見した。ドルが大きく値上がりしたり、大きく値下がりしたりするが、値上がりすることの方が多かった。

チャートを信じていない私は、チャートを信じるくらいなら、月の運行でディーリングした方がましだという気持ちで、そのことを顧客向けの日々の為替レポートに記した。当時、MBA保有者の多い欧米の市場とは異なり、日本の市場参加者にはチャートの信奉者が多かった。顧客の信仰を逆なですることはできないので、為替レポートには私がチャートを軽視していることはいっさい書けない。ただ、満月理論として面白おかしく書いた。そうしたら思わぬ反響があった。市場関係者の間で話題になり、日経新聞までが記事にした。私は皮肉のつもりで冗談で書いたのに。そういうことを会社のロゴ入りのレポートに書く私も私だが、そんな事を本当に新聞に書く記者も記者だし、それを通したデスクもデスクだ。世の中、粋な人は割といるものである。

しかし、昔から満月は色々と話題の種だ。植物が早く成長するのに加えて、狼男が変身するくらいなので、人の精神にも何らかの影響があるのかもしれない。為替ディーラーたちが、ハイパーになって、気が狂ったようにトレードして、相場が大荒れになったのかもしれない。人々の欲望と恐怖の渦巻くマーケットは不思議な所だ。

いまではもう20年以上も前の話。その後、本当に私の満月理論が当てはまったかは知らない。いや、あの後もずっと当てはまっていたらビックリだ。

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2016/05/29   yamagishicoffee