農園便り

最近コーヒー農家で流行りの肥料

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最近コナのコーヒー農家の間ではやり始めている肥料を買って撒いた。

コナの大手コーヒー農家が生産する肥料(7-5-5)。魚加工業者の廃材(魚の頭や骨など)を炭化させて(Biochar)、EM1(酵母菌、乳酸菌、光合成金などの有用微生物群)を糖蜜で培養して、その炭の穴の中に染み込ませ、それに玄武岩やラングバイン石(カリ肥料)などを混ぜたもの。即効性と緩効性を兼ね備えたもの。

畑じゅうが魚臭くなった。あまりの臭いに食欲減退。夕飯も食べられない。でも、大丈夫。コーヒーが魚臭くなることはない。

磯の香りのコーヒーなんてあったらおつだけど。

 

 

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2017/09/04   yamagishicoffee

アメリカンコーヒーとは何か?

この夏、ドイツへ行ってきた。街角や駅の売店で飲む普通のコーヒーの質が高い。さすが、コーヒー文化の根付いた国。なにせ1683年にオスマン帝国がウィーン包囲の際にもたらして以来だそうだ。日本や米国より遥かにコーヒーの歴史は長い。スペシャリティーコーヒーの店も良い豆をそろえていて美味しい。だが、コナやブルーマウンテンは見かけなかった。コナは近年の害虫被害による品薄で入手困難になったそうだ。

一方のブルーマウンテンはコナと並んで今でも主にティピカ種を生産している産地。このブルーマウンテンはドイツと同様で米国にもない。コーヒーショップの人でもその名を知らない人さえいる。ある友人など「いや、俺は一度だけNYの専門店で見た」と自慢する。隣国ジャマイカのコーヒーだが、ほとんどを日本が買い取るので、米国には回ってこない。世界の市場から隔絶され、日本で価格形成がなされる珍しいコーヒーだ。

もう一つ、米国にないのはアメリカンコーヒー。日本でのみの呼称で米国では通じない。日本でもその定義は曖昧。浅く焙煎したコーヒーのことをアメリカンとする説がある。また、薄めに淹れたコーヒー、あるいは、お湯で薄めたコーヒーという説もある。カフェ・アメリカーノなら米国にも存在する。エスプレッソをお湯で割ったもの。しかし、日本のアメリカンとは違う。

米国にはアメリカンコーヒーはないが、まずいコーヒーならある。米国人が慣れ親しんだロバスタ種のコーヒーだ。嗜好品は人それぞれで、これをお好みの方には申し訳ないが、私にはまずい。世界中の消費者はアラビカ種を飲む。安いロバスタ種は缶コーヒー、インスタントコーヒーの原料となる。なんと米国人はそのロバスタ種をドリップして飲む。

私は在米27年。米国にはお世話になった。偉大な国だと思う。私のような移民にも寛容だ。その上なぜか、まずい食べ物にも寛容で慈悲深い。一般家庭では大きな缶に入った挽いたロバスタ種を買って飲む。安いがまずい。レストランや外食チェーン店でもこれを使う。渡米当初はビックリしたが、周りのお客は平気だ。

ロバスタ種は深煎りだと焦げて飲めないので、浅煎りとなる。推測するに、戦後、日本人駐在員が米国人の飲むこの不思議なコーヒーを帰国後に再現しようと、浅煎りにしたり、お湯で割ってみたり工夫したのが日本のアメリカンコーヒーの始まりではなかろうか。ちなみに、日本のアメリカンは米国の一般コーヒー(ロバスタ)よりもずっと美味しい。

その後、登場したのがスターバックスである。同社は、少なくとも創業初期は、深煎りのアラビカ種を米国に根付かせることを使命としており、ヨーロッパ人はロバスタ種を飲まないことを米国人に知らしめた。爆発的にヒットして、会社は急成長した。

アラビカ種を浸透させたスターバックスの功績は大きいが、深煎り一辺倒なのはいかがなものか。アラビカ種は深煎りも良いが、浅煎り(ミディアム)の方が豆の特徴が分かり易い。だから、カッピングもミディアムで行われる。スペシャリティーコーヒーを楽しむには浅煎りもお試しいただきたい。

NY時代、部下と有名ドーナッツ店に入ったら、ロバスタ種が出た。驚いたことに部下は「コーヒーはこれでなくっちゃ」と嬉しそうに飲み、スタバのコーヒーを嘆いた。子供の頃からロバスタ種に慣れ親しんだのだろう。一方、先日うちの畑のとっておきの豆を浅煎りにして米国の富豪の集まりに出した。すると、「これはコーヒーではない。なぜならスターバックスはこんな味がしない」との批評を受けた。とほほ。

振り子がロバスタ種からスタバの深煎りへ振り切っている。

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2017/09/02   yamagishicoffee

アルフリーダ・フジタさん

ノースコナの村ホルアロアに観光客に人気の土産物店キムラ・ラウハラ・ショップがある。ラウハラという植物の葉で編んだ帽子や鞄などを売っている。そこの主のアルフリーダ・フジタさんが7月16日に亡くなった。享年90歳。土曜日の午前中に急に具合が悪くなり翌日の午前中に静かに息を引き取ったそうだ。

アルフリーダさんはこの農園便りにもよく登場する日系人コミュニティーのリーダーのモーリス・キムラさんのお姉様。日系3世で流暢な日本語を話す。コーヒー農園で生まれ育った。コナコーヒーの歴史の生き字引で、私も度々お話を伺った。

彼女の祖父母は1894年に山口県大島からハワイ島へ移住してきた。祖父母はコーヒー畑を営む傍ら、キムラストアーを開き、近所の農家に雑貨を提供した。農家はツケで日用雑貨を買い、収穫時期にコーヒーの実をキムラストアーに売って支払いに代えた。そうしてキムラ家は近隣農家のリーダーとなった。畑も買い増した。標高の高い畑ではコーヒーを、標高の低い畑では綿花を育てた。余った綿で座布団や布団を作り店でも販売した。また、ラウハラの葉を編んで帽子や籠などの日用品を作り販売した。戦後、三世の時代になると日系人は社会進出を果たし、コーヒーに生活を頼らなくなった。キムラストアーもラウハラ製品に特化して観光客相手の商売に変化していった。

キムラ家は繁栄し、親戚が百人近くいる。既にコーヒー栽培から手を引いているが、キムラ家の初孫(三世)のアルフリーダさんはキムラ家発祥の地で築100年を超す店を守ってきた。彼ら一族のパーティーに招待されると、今は高齢の三世たちはコーヒー摘みは辛いので二度とやりたくないと、新参コーヒー農家の私はからかわれる。しかし、一族最年長の彼女は、コーヒーがあったからこそ、一族がこの世に存在すると笑顔を絶やさない。長年コナコーヒーフェスティバルの役員を務め、コナコーヒー業界の重鎮だった。

キムラ家の人々はコーヒーは辛いが綿花摘みに比べればましだと語る。標高の低い綿花畑は暑い。炎天下で腰をかがめての作業は辛かったそうだ。花弁がとがっていて擦り傷が絶えない。彼女は子供の頃、叔父叔母たちが黒人奴隷の詩を歌いながら綿花摘みをするのを手伝った。歌詞の意味は分からないが一緒に歌うのが楽しかったそうだ。早朝暗いうちから作業を始めるとコオロギの音がきれいとか、朝日に真っ白に輝く綿花が美しいなど、苦しい生活の中の楽しい部分をよく覚えていて皆に語る。そういう明るい人だった。

1941年12月7日以前の日系人の子供達は平日はアメリカの学校へ行くかたわら、夕方は日本語学校に通った。土曜日はShu Shin(修身)の授業。親らはアメリカの学校よりも日本語学校での成績が良いと喜んだらしい。平日はアメリカの価値観を、夕方と土曜は日本の価値観を学ぶので、こんがらがったであろう。まして、ある日を境に突然敵国になってしまい、差別もされた。アルフリーダさんはそういう時代に育った。それでも日本人に親切に接してくれる。日本人の中に自分の両親・祖父母の面影を見るからだろうか。コナの日本人で彼女を知らない人はいない。誰もがお世話になった。我々日本人の心は昭和を経て平成に変わっていったが、明治に移民した祖父母に日本の心を教わった彼女は、まるで明治のままのようなところがある。

昔はこういう日本びいきの方々が多くいた。日本人が観光地としてハワイを好きになったのは、ひとつには彼ら日系二世・三世のお陰だ。彼女より10年若い世代は少し違う。戦前の修身教育を受けていない。まして、四世になると日本語を話さない。

日本びいきの米国人がまた一人逝ってしまった。

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2017/08/01   yamagishicoffee

珈琲と文化・夏号の原稿

珈琲と文化の2017年夏号に拙稿が掲載されたので転載します。

 

 トランプ大統領が移民排斥政策を進めている。メキシコとの国境に壁を作るという。しかし、既にメキシコとの国境に壁はかなり存在する。2001年のテロ以降、警備が厳しくなり、アメリカへの密入国は困難である。

もう8年も前の事。友人のメキシコ人が親が病気になったので、メキシコへ一時帰国した。ところが、それきりなかなか戻ってこない。やがて事情が判明した。てっきりコナに合法的に滞在していたと思っていたが、実は不法移民だった。

親の病気が一段落し、昔のように国境を歩いて米国へ渡ろうとしたところ、国境には警備員がいて追い返された。昔と違う。そこで、国境突破ツアーに申し込んだ。3日間、ガイドと一緒に野宿をしながら命がけで砂漠を横断し、警備の薄いところを走り抜け、最後は鉄条網をよじ登る。だが、奥さんは当時は妊娠6ヶ月。命を賭けて砂漠を走れない。

そこで、そういう方にはお値段は張りますが、こちらのプランがございますと、業者から渡されたのが他人のパスポート。写真が似ているので、なりすまして飛行機で入国する作戦。彼女が入国したら彼が砂漠を横断する段取り。しかし、彼女は空港の入国検査でバレて捕まった。今後20年間は米国に入国しない旨の誓約書にサインし、送り返された。彼も米国行きを断念。故郷で靴屋を開業したが、治安が悪いのでハワイに戻りたいと、たまに便りが来る。

移民が来てこその米国。不法移民でさえ1,200万人もいるらしい。世界中には命がけで働かないと暮らせない国が多くあるし、こういう必死で働く移民が来るのが米国の強みだ。移民は米国の農業の屋台骨を支えている。移民がいなければ、誰が牛を解体するのか。誰がリンゴやイチゴやメロンを摘むのか。そして誰がコーヒーを摘むのだ。

テロ後の規制強化で15年も前から全米の農場で働くメキシコ人は減少している。若手の流入がなく、帰国者もいるので人数は減るし、そのまま15年分高齢化している。そこへもってきて最近の好景気。2017年5月の失業率は4.3%でほぼ完全雇用状態。つまり、非自発的失業者はほとんどいない状態。労働者数を増やさなければならない景気局面なのに、移民制限は米国の農業には打撃だ。

コナのコーヒー農園でも人手不足は深刻。移民が減っている上に、ハワイ州は空前の建設ラッシュ。ハワイの建設現場の平均時給は24ドル。中には時給30~40ドルとかの話が漏れ聞こえる。こんな高給を出されては、農園には人は来ない。昨年は人手不足で半分近くの実を木の上で腐らせた農園が続出した。

うちの農園もピッカー(収穫する人)確保に困難を極めた。さすがに不法移民は雇いたくない。ましてや、きれいな収穫がクリーンカップの秘訣というのが信条なので、他の農園とは摘み方が違う。人手不足の今日、私と一緒に私の基準で摘んでくれる人を見つけるのは至難の業だ。

 

ところで、2016年のノーベル経済学賞にMITのベント・ホルムストロム教授が選ばれた。私のイェール大留学時代の恩師。めでたしめでたし。当時イェール大学にはPrincipal-Agent理論の研究者が集まり、彼もその中心的人物だった。

経済主体をPrincipal(依頼人=雇い主)とAgent(代理人=雇われた者)に分けて考えると、代理人は依頼人に雇われたにもかかわらず、依頼人の利益よりも自らの利益を優先することがある。依頼人と代理人の例として、経営者と労働者(無責任なサラリーマン)、株主と経営者(株主軽視の経営)、企業と委託先(手抜きをする委託先)、政治家と官僚(官僚の横暴)、国民と政治家(国民不在の政治)など、様々なケースで代理人が依頼人の利益を犠牲にする行動をとる問題が発生する。代理人が依頼人の利益に沿って行動するような仕組みを考えるのがこの分野のテーマだ。

コーヒー農園主(依頼人)がピッカー(代理人)を雇う際にも構造的な問題がある。依頼人の私は良いコーヒーを作るのが目標。そのためにはコーヒーをきれいに摘むのが重要。一方、代理人のピッカーの多くは米本土からこの時期3か月間のみコナに渡ってくる季節労働者。たくさん摘んで稼ぐのが目的。丁寧に摘んでなんかはいられない。目標が違う。

昨年の始めに、あるピッカーのグループのリーダーが、何故うちの畑は害虫の被害がコナで一番少ないのか尋ねて来た。丁寧に摘むことが健康な畑の秘訣と説明すると、ぜひこの畑で摘みたいと言う。品質を重視する彼女の発言が気に入り彼女のグループを雇った。収穫シーズンが始まると彼女はピッカーを集めて連れて来た。

シーズンの最初は赤く熟した実が少ないので早く摘めない。そこで、時間給で払った。すると私が一日100ポンド程度摘むのに、彼女らは40ポンドぐらいしか摘まない。近所の主婦をかき集めて来たらしい。ほとんど素人の人もいる。お喋りしながらのんびり楽しくという感じだ。時間給では我々の利害は一致しない。これはいかん。

翌月は摘んだ重さで支払った。ただし、重さあたりの賃金を他の農園の5割増しにするので私と同じように丁寧に摘むよう頼んだ。5割増しが効いたのか、今度はプロのピッカーがたくさん来た。ところが、日に日に人数が減り、誰も来なくなった。他の農園では丁寧さは要求されないので、うちの農園の倍の量を摘めて、その方が得というのが理由。うちの農園の品質重視は分かるが、生活がかかっているので無理と言われた。彼女らを品質を顧みない心ないピッカーと恨むわけにはいかない。彼女らだって生きていくのに必死だ。いい加減な摘み方を許容する農園主にも責任がある。

村は空前のピッカー不足。他のグループを雇おうにも既に各農園が囲い込んでいるので今さら無理。私と妻の2人で夜明けから日暮れまで摘み続ける毎日。途方に暮れた。結局、見るに見かねた友人たちが手伝ってくれてなんとかなった。

 

Principal-Agent理論では、農園主はこういう問題を解決するような雇用・契約形態を考えなければならない。ホルムストロム教授の薫陶を受けた者として、一応、私だって無い知恵を絞ってはいる。

実は昨年、一昨年と永住権を持つメキシコ人のJ氏を雇っていた。彼をパートナーとして扱い、年間の利益を分配する約束をしていた。(実際には赤字続きなので、彼の貢献度に応じてボーナスを支払った。)

さらに、彼の為に5ヘクタールのノニ畑を買った。床面積200㎡で新築同様の立派な家付き。ノニとコーヒーは繁忙期が異なるので良い組み合わせ。彼には年間を通じて雇用を保障し、タダで家を提供し、その上、利益分配の約束もした。生活は保障したうえで、質の良いものを作れば彼の収入も増える仕組み。ここに彼と私の利害は一致した。恩師に褒めてもらえそうなPrincipal-Agent問題の解決方法だ。また大きな買い物をして黒字化が遠のいたが、納得のいくコーヒーを作るためには仕方がない。

ところが、昨年の収穫時期の直前にJ氏の兄が急死した。100キロを超える巨漢は目を真っ赤にはらしてメキシコへ帰って行った。しかし、それきり帰ってこない。どうやら兄の経営する先祖伝来の牧場を引き継ぐらしい。そこで、急遽、例のグループを雇って、前述のような顛末になった。ここまで尽くしたのに彼は帰ってこない。家まで買って赤字だけが増えていく。問題解決になっていない。ノーベル賞の理論じゃないのか?まさか「答えは風に吹かれている」というのが2016年のオチか?

その後、どうにか別の家族を確保した。今年の収穫は上手くいってほしいものだ。

 

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2017/07/27   yamagishicoffee

コーヒー豆の乾燥

今年最初の収穫を乾燥中です。

皆様が飲むコーヒーを踏んづけています。

でも、大丈夫、パーチメント(固殻)の上からです。ちゃんと出荷前に精製所でパーチメントをむきます。

靴下も毎日洗っているし。

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2017/07/26   yamagishicoffee

コーヒーの収穫が始まった

いよいよコーヒーの収穫が始まった。

第一ラウンドは375ポンド。

今シーズンの収穫予定の0.75%を消化した勘定。

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2017/07/20   yamagishicoffee

ヒアリ

最近ヒアリのニュースを目にする。 聞きなれない単語で何かと思ったら、ヒアリとはFire Antのこと。なるほど、 そのまんまの訳じゃん。

Fire antはコーヒー畑でも大きな問題。刺されると痛い。何日も痒くて痛い。

Fire antにも多くの種類があって、今回日本で話題なのはRed imported fire antらしい。これはハワイにはいないと思うが、Little red fire antという強烈な種類が十数年前にヒロ方面に上陸して問題になっている。犬など目を刺されると失明する。人にも危険。コナ側に拡散しないよう様々な予防処置が講じられている。その一環で、農家はハワイ大学のアリ博士の講義に行かなければならない。博士は臭いを嗅いだだけでどの種類か分かるそうだ。

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2017/07/18   yamagishicoffee

暑中見舞の冷えた水出しコーヒー

日本は暑いそうですね。お見舞い申し上げます。

常夏のハワイも7月は普段より暑い。試しに、冷たい水だしコーヒーを作ってみた。

普通に熱湯で淹れる場合は水500ccに対して 35gの粗挽きにした粉を使うが、水出しの場合は、中挽き(普段より少し細かめ)に挽いた粉を使い、量も少し多めに。氷を浮かせて飲みたい場合は50gぐらい。

ポットに水と粉を入れて、かき回して、冷蔵庫で一晩寝かす。

飲む前に紙フィルターで漉す。その際、最後の一滴まで漉すのではなく、9割くらい漉したところで止めるのがコツ。

風鈴を吊るすのも忘れずに。

私どものコーヒーでやってみたら、すっきりとした味わいでした。

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2017/07/17   yamagishicoffee

RKBラジオとKZOOラジオで紹介されます。

ラジオで山岸農園のコーヒーが紹介される予定です。

福岡県とその周辺地域をカバーするRKBラジオとハワイのKZOOラジオの共同番組『ハワイホットウェーブ〜もっと気軽に世界人」

RKBラジオでは、7月9日(日)夕方6時15分から、

KZOOラジオでは、7月11日(火)夕方5時半から

放送されます。15分間番組です。どうぞお聞きください。

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2017/07/09   yamagishicoffee

コーヒーQグレーダーの試験から一年

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CQI(Coffee Quality Institute)のQ Graderの資格を取ってから1年になる。ホノルルで行われた3日間の実習研修と、それに続く3日間に渡る20の試験を受けた。これはコーヒーのカッピング(官能評価)の技術を取得するもので、合格するとSCAA(Specialty Coffee Association of America)の評価基準・手順に従って、コーヒーを鑑定する資格を持つ。

 集中力を要するストレスフルな試験で苦しい体験だった。一度つまづくと、そのストレスに耐えられず、雪だるま式に転げ落ちていく感じがした。リタイアして10年、あれほど苦しい体験はない。嗅覚と味覚で感知してそれを言語で表現するなんて、そんな脳の使い方をしたことがない。完全にクラスの落ちこぼれ。今までの人生では銀行員、ウォールストリートバンカー、週末ゴルフという脳の使い方をしてきたのだ。カッピングには全く役に立たない。

体験者のアドバイスに従い、期間中はアルコールや極端に脂っこいもの、甘いもの、しょっぱいもの、辛い物を口にしないようにした。他の参加者の中には、期間中は刺激の少ない歯磨き粉を使用する人もいた。

実習研修3日間、試験3日間の計6日間の長丁場。体調管理が重要。いかにリラックスして、カップに向かった瞬間に集中力を発揮できるかが勝負だ。疲れがたまっては負け。

毎日、夕方以降はコーヒーの事を一切考えないようにした。ホテルのジムで1時間運動して、コーヒーのことを頭から追い出す。それでも、連日3時間ぐらいしか眠れない。カッピングの夢にうなされ、一度目が覚めるともう眠りに戻れない。

極めつけは4日目、つまり試験初日が終わった夜。初日は何とかすべて合格したが、ストレスは限界に達している。長い一日でヘトヘト。それでも試験はあと2日もある。

今日こそは熟睡したい。夕方ジムで1時間汗をかき、サウナに入りさらに汗をかき、脳を休めることに専念した。さらに、ジムの後にはマッサージ。一日をリラックスして終わらせるには完璧なシナリオ。うつ伏せになりマッサージを受けた。気持ちいい。カッピングを頭から追い出そうと”Drive it away, drive it away.”と念じると、だんだんリラックスしてきてウトウトし始めた。すると、突然マッサージ師が強烈なハワイ訛りで

  “Do you like cupping?”(カッピングは好きですか)と訊いてきた。

“What!???”せっかくカッピングのことを忘れようとしているのに、一体全体この人は何を言い出すのだ。続けざまに、

“Did you do cupping?”(カッピングしたのですか)と訊いてきた。

当惑しながらも、「ええ、何度もしましたけど、どうしてわかるのですか?」と問い返すと、「だって背中に跡があるから」。ようやく事態が飲み込めた。この地獄の特訓コースの直前に体調を整えるために鍼灸治療に行った。鍼、マッサージの他に吸い玉(カッピング)をしてもらったのだ。その丸い跡が背中に残っていたらしい。

“Does cupping work for you?”(カッピング(吸い玉)は効きますか?)

“No, it did NOT work for me today at all!”(今日の(コーヒー)カッピングは、まったく上手くいきませんでした。)

“Oh, how come?”(えっ、どういうこと?)

“Never mind. I’m just talking to myself.”(独り言です。ほっといてください。)と会話が続いた。その夜はほとんど眠れず、翌日の午前中の試験は全滅。最終日に追試となった。

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2017/06/26   yamagishicoffee