農園便り

KZOO放送を聴きながらコーヒーを摘む

うちのコーヒーはKZOO放送を聴きながら育っている。KZOO放送(AM1210)はオアフ島ホノルルの日本語ラジオ放送局。ハワイ在住の日本人には、なくてはならない放送局である。私の住むハワイ島は離島だが、感度の良いラジオなら、海を隔て受信できる。

9月から1月までのコーヒー摘みの時期には、8年間も愛用しボロボロになったラジオを畑に持ち込み、大音響でかけながら夜明けから日暮れまで収穫作業をする。数ヵ月間、毎日同じ単純作業を繰り返すのは精神的にも肉体的にもきつい作業だが、KZOOのおかげで楽しく過ごせる。コーヒーの木も私と一緒にKZOOを楽しんでいることだろう。日本語を聴きながら育った、世界でも珍しいコーヒーという訳だ。

ところで、先日、ホノルルで買い物をしていたら、ビバルディーの音楽を聴かせて熟成した味噌なるものを見た。そういえば、世間にはモーツァルトを聴かせて育てた和牛や乳牛もある。音楽は人間以外の生物にもストレス軽減の効果があるということだろうか。

では、うちのコーヒーはどうかというと、KZOOを聴いて育ったので、ど演歌。KZOOでは色々な音楽が流れるが、なんといっても演歌が多い。ひょっとして、うちのコーヒーは別れや悩みや雨や酒や雪や海や恋の味がするかもしれない。ちょっと、ほろ苦いコーヒーということか。(でも、本当はうちのコーヒーは苦くないのが自慢である。コーヒーは生産の過程で瑕疵があると苦くなる。生産者が手を抜かなければ苦くならない。)

この際、「別悩雨酒雪海恋コーヒー」と商標登録してはとも思ったが、英語だとParting-Anxiety-Rain-Alcohol-Snow-Ocean-Love Coffee になり意味不明なので諦めた方が無難だ。でも、頭文字をとればPARASOL。ちょっと小粋なパラソル・コーヒー。

KZOOは演歌だけではない。時折、落語がかかるので、お笑いの要素もコーヒーに教え込んでいる。人はコーヒーで安らぎの時間を過ごすのだから、笑顔は必須だ。

また、以前、直木賞作家の渡辺喜恵子著『プルメリアの木陰に』が朗読された。写真花嫁の物語。かつて、官約移民でハワイに渡った日本人男性の花嫁を写真だけのお見合いで日本から迎える制度があった。ひとりの日本人女性がコナのコーヒー農園の日系二世の男性に嫁ぐも、畑はだまし取られたうえ、夫に先立たれ苦労する物語。コナコーヒーは日本人の移民が築いたコーヒー。こういう朗読を聴かせて、日本人移民の苦労の歴史も教えている。きちんと情操教育を施したコーヒーという訳だ。

演歌がコーヒーを美味しくするとか、落語がコーヒーを快活にするとか、朗読がコーヒーを正しい道へ導くかは、その効果のほどは不明だが、どうも音は植物に良いらしい。フィレンツェ大学の研究によると、音楽を聴いて育ったブドウは音楽のない環境のブドウより生育が良かったそうだ。さらに、音楽は害虫を混乱させ木から遠ざける効果もあった。

同大学のマンクーゾ教授によると、植物は音楽というよりも、主に根を通して音の振動に反応している。根は細胞が成長する際に細胞壁が壊れるカチッという音を出して、根どおしで音の振動を介してコミュニケーションをしながら成長する方向を決めている。そして、特定の周波数の音に成長を促す効果がある。動物とは全く異なるメカニズムなので、我々には簡単には理解しがたいが、植物は視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚などの感覚を持ち、知性を兼ね備えているそうだ。だからこそ、地球上でこれほどまでの繁栄に成功した。やっぱり、コーヒーの木は賢いのだ。

だから私は声を大にして断言する。KZOO放送はうちの畑のコーヒーに良い効果がある。と思う。たぶん。だといいけど。。。。

2017/10/01   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
コナ・ルビーはクリーンな味わいのコーヒーです。
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