今年の2月に畑の3分の1を膝の高さにカットバック(剪定)した。以前は、Beaumont-Fukunaga 方式といって、3列に一列の割合でその一列全部をカットバックする方式をとっていたが、3年前からCBBという害虫対策のために畑の3分の1のエリアをすべてカットバックする方式に変えた。エリア全体をカットバックしてしまえば、そこには1年間害虫が全くいなくなるので、害虫駆除が楽になるし、より効果的に被害率を下げることができる。
上の写真が3か月前の今年の2月にカットバックしたもの。すでに、新たな幹となる新芽が出ている。
この写真は昨年の春にカットバックしたもの。この木だと、今年は10ポンド程度の収穫が期待できる。
この写真が2年前の春にカットバックしたもの。もうかなり樹高が高く、実もたわわにできる。30~50ポンドの収穫が期待できる。これ以上背が高くなると、はしごでも使わない限り収穫ができないので、今シーズンの収穫が終わったらカットバックする。
つまり、コナでは3年ごとのカットバックサイクルだ。
この年数は産地によって異なる。コロンビアなどでは6年ごとにカットバックする。おそらく3年ごとというのはハワイ・コナだけではないかと思われる。
コナはティピカという原種に最も近い最高級品種を育てていて、それが放っておいてもどんどん育つコーヒーの原種に最適な気候と土壌を持つ。他の産地では考えられないスピードだ。コーヒーが喜んで育てば、それだけ質の良いコーヒーができる。
また、他の産地ではティピカがうまく育たないので、香味を犠牲にして、品種改良した品種を育てている。つまり、増大する消費国からの需要を賄うために、ほとんどの産地では、本来はコーヒーの育ちにくい場所に、品種改良して無理やりコーヒーを育てていることになる。
消費国からの価格圧力も強い。なにせ、一杯100円にしようというのだから、コスト削減が生き残りのカギとなる。手間ひまのかかるティピカなどは高級品のニッチに追いやられ、生産の容易な品種改良種が世界の主流となった。どうせ、砂糖とクリームを入れるんだろう、味にうるさいこと言うなよ、というのが、消費国からの価格圧力に対する、生産国側からの答えだ。
手摘みの場合、コーヒー農園でのコストの5割以上が収穫のための人件費だ。コスト削減のカギは速く容易に収穫すること。だから、品種改良して背が高くならない矮小種を植える。ティピカのように背が高いと一日中上を向いて、首の痛みと闘いながら摘まなくてはならない。矮小種を摘むのはとっても楽だ。だから、他の産地では、なかなか背が高くならず、それほど頻繁にカットバックする必要もなくなるという側面もある。
19世紀後半に日本人移民によって築かれたコナコーヒー。楽園ハワイでは、そんなコーヒーの資本主義の潮流、品種改良の波から、完全に取り残されて、今でも原種のコーヒーが伸び伸びと生息している。コーヒーに最適な気候なので、コーヒーが信じられないくらいのスピードで成長する。だから3年に1度の割合で剪定するのだ。