農園便り

2016年6月2日

コナコーヒー農園便り 2016年6月号 コーヒー摘みは心のリハビリ

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コーヒー摘みは頭と心の凝りをほぐす。コーヒー摘みのような単純作業を繰り返すと、脳の思考が停止してくる。すると、NYで働いていた頃の嫌な出来事、数々の失敗など頭の奥に染み付いた悪い思い出が浮かんでくる。ストレスの多いサラリーマン生活で長い年月をかけて溜まったしこりのようなものだ。楽園ハワイでコーヒーを摘んでこんなに幸せだと、悪い思い出を上書きする。心の凝りをほぐしながら収穫する。栽培を始めて8年。骨の髄まで溜まったストレスを随分と追い出した気がする。コーヒー摘みはリタイア後の心のリハビリに良い。

また、脳の奥深いところにある記憶やアイデアを探り当てることがある。潜在意識の中にある事柄をつなぎ合わせて、ふっと投資の良いアイデアが浮かんだりもする。

コーヒー摘みのシーズンが終わると今度は体の凝りをほぐす作業が始まる。長い収穫シーズン中、重いコーヒーを運び続けるので腰を痛める。ぎっくり腰は癖になっている。毎日10kg入りのバスケットを10時間も腰に付けて収穫作業をするので、骨盤や股関節の周りの筋肉や腱ががちがちだ。特に股関節と足をつなぐ様々な腱から筋肉にかけて痛みがひどい。朝は腰が曲がったまま。真直ぐに腰を立てることができない。足と腰が痛くてうまく歩けない。だから日本からのお土産で嬉しいのは強力な湿布薬だ。

毎週の鍼灸治療が欠かせない。鍼灸の先生からは、もっと農園主らしく、収穫は人に任せなさいと叱られるが、美味しいコーヒーを作るには収穫が最も大切というのが信条なので、他人任せにはしたくない。

 せっかく収獲シーズンが終わったのに、痛くて上手くゴルフができないのは悲しい。代わりに午前中に農作業をして、夕方プールで歩く。ひたすら歩く。ゆっくり大股で歩いたり、全速力で歩いたり、横や斜めに飛び跳ねながら歩いたり、カニのように横歩きしたり、様々な筋肉を様々な角度に使いながら歩いて試していく。

しばらく歩き続けると思考が停止してくる。半分目をつむり眠ったような状態で1時間近く歩くと、特定の筋肉にギューと効いてくる。その筋肉に意識を集中させながら同じスタイルでさらに1時間ぐらい続けると、ふっと、その筋肉がほぐれる瞬間がある。こうなればしめたものだ。さらに歩いてほぐす。気が付くと3時間も歩くことがある。

 例えばある時、尾てい骨の2センチ上のところが、ギューと効いてきた。そのギューはさらに骨盤の内部の左右を後ろから前へ続き、臍の下の丹田がギューときた。へえー、そんな風に繋がっているんだと感心しながら、合計3時間歩いて、尾てい骨の上と腹部の内部はほぐれた感じがしたが、丹田だけはほぐれないまま日が暮れた。翌日はその続きをやろうと歩いたが、前日と同じ感覚は訪れずに終わってしまった。突然に降りてくるギューという感覚は気まぐれだ。一つ一つの筋肉と対話をしながら、歩き続けその感覚が降りてくるのを待つ。

コーヒー摘みはリタイア後の心のリハビリに良いと記したが、調子に乗って続けると体のリハビリが必要になる。日本の農家が冬の間は湯治場で傷んだ体を癒す話を昔から耳にするが、常夏のハワイではプールでケアーだ。

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2016/06/02   yamagishicoffee