農園便り

2016年5月

満月の夜にはドルが上がる

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先週の話で恐縮だが、21日はBlue moonだった。

Once in a blue moonという英語の表現がある。「ごくまれに」とか「めったに…ない」という意味である。

その語源は「月が青く見えるのは珍しいから」という意味ではない。わざわざ遠回りして帰るほどの景色ではない。

Blue moonとは、もともとは belewe moonといい、  beleweは古語で裏切るという意味だが、今では使われなくなったので、発音の似たBlueが充てられたらしい。一つの季節(3か月)の中で満月が4回ある場合に、その3度目の満月という意味である。転じて、最近では、ひと月の中の2度目の満月の場合に使うこともある。それくらいの頻度で現れるほど珍しいという意味である。次回は2018年1月だそうだ。

昨日、面白い話を聞いた。満月の夜には植物は普通よりも早く成長するそうだ。満月の光でも光合成をおこなうというのは、すごい生命力だ。先週は雨も多かったし、満月だったので、さぞかしコーヒーも成長したことであろう。

実は昔、東京外国為替市場で「満月の夜にはドルが上がる」という格言があった。私が為替ディーラーだった頃に発見し、でっち上げた理論である。

昔の為替ディーラーはチャートをつけた。今のようにコンピューターが発達していなかったから、方眼紙に手書きだ。MBAで市場効率仮説を徹底的に教えられた私としては、チャート分析などあまり信用していなかったが(はるか後にその認識はかなり改めることになったが)、そんな私でもチャートはつけた。信じるか信じないかは別にしてチャートを見ないディーラーはいない。罫線分析というやつで、相場がこの平均線を下から上へ抜けたから買いのサインが出たとかいう後出しジャンケンみたいなやつだ。さすがにWall Street JournalやFinancial Timesはそういう分析はしないが、なぜか日経新聞が大好きで、頻繁にそういう市場分析を披露している占いみたいなあれだ。

ある時、私は満月の日にはNY市場(東京の満月の夜)で為替相場が大荒れになることが多いことを発見した。ドルが大きく値上がりしたり、大きく値下がりしたりするが、値上がりすることの方が多かった。

チャートを信じていない私は、チャートを信じるくらいなら、月の運行でディーリングした方がましだという気持ちで、そのことを顧客向けの日々の為替レポートに記した。当時、MBA保有者の多い欧米の市場とは異なり、日本の市場参加者にはチャートの信奉者が多かった。顧客の信仰を逆なですることはできないので、為替レポートには私がチャートを軽視していることはいっさい書けない。ただ、満月理論として面白おかしく書いた。そうしたら思わぬ反響があった。市場関係者の間で話題になり、日経新聞までが記事にした。私は皮肉のつもりで冗談で書いたのに。そういうことを会社のロゴ入りのレポートに書く私も私だが、そんな事を本当に新聞に書く記者も記者だし、それを通したデスクもデスクだ。世の中、粋な人は割といるものである。

しかし、昔から満月は色々と話題の種だ。植物が早く成長するのに加えて、狼男が変身するくらいなので、人の精神にも何らかの影響があるのかもしれない。為替ディーラーたちが、ハイパーになって、気が狂ったようにトレードして、相場が大荒れになったのかもしれない。人々の欲望と恐怖の渦巻くマーケットは不思議な所だ。

いまではもう20年以上も前の話。その後、本当に私の満月理論が当てはまったかは知らない。いや、あの後もずっと当てはまっていたらビックリだ。

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2016/05/29   yamagishicoffee

ゴルフ ツアープロに教わった

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最近雨が多い。一昨日は0.5インチ、昨日は1.6インチも降った。農作業は午前中に限られる。今日も昼までは害虫(CBB)の虫食いの実を摘み取る作業をしていたが、昼食後に雨が降り出した。仕方がないので、昨日同様、ゴルフに出かけた。、山腹のコーヒー畑地帯が雨でも、海岸沿いにあるゴルフ場は晴れている。妻からは、「どうして、仕方ない、仕方ない、と言いながら、そんなに嬉しそうに出かけるの?」と指摘されるが、本当に仕方がないから行くのであって、そんなこと言われても仕方がない。

練習場で打ち始めたら、隣に若者が来て打ち始めた。あんまり上手いんでびっくりした。しばらく並んで球を打った。負けてはならぬと真剣に打ったが、月とスッポン。ゴルフ場のスタッフがその若者に次々と挨拶に来るので、何者かと思って会話に割り込んだ。コーヒー農家で雨が降るとゴルフをしに来るんですと自己紹介すると、なんと、相手は、パーカー・マクマクマクマクマク…パーカー・マクロクリンさんだ!!!


パーカー・マクロクリンといえば、ホノルル出身でオバマ大統領やミッシェル・ウィーと同窓のプナホー高校からUCLAへ進み、ハワイ島のワイコロアで練習を重ね、PGAツアープロになった人。PGAツアーで優勝経験もある。ハワイの誇り、宝だ。私なんか、数年前にTurtle Bayで行われたState Openへ出場した際に(当然2日で予選落ちしたけど)、パーカー・マクロクリンも出場していて、彼と同じトーナメントでプレイしたことが自慢の種にしているくらいだ。ちなみの、そのトーナメントには当時は無名だったトニー・フィナウも出ていて、凄いショットを打つのでよく覚えている。彼はその後精進を重ね、昨年PGAのツアーカードを取り、今年は優勝もした。

気が付くと、そばでは、Chris KeiterとHunter Larsonも練習している。先々週に行われた今年のUS Openのハワイ州の地区予選で次の地域予選に進出できる2人の枠に入った上位2人だ。今ハワイ州で一番上手い2人だ。

パーカーが私のそばに近づいてきた。

 P.「さっきから見てると良い球を打ってるね」と、パーカーから予想もしていなかったお褒めのお言葉をいただいた。お世辞でもとっても嬉しい。

P.「ちょっと、見てあげよう。いま、何を課題に練習しているの?」

えっ!!!本当ですか!!!もっと嬉しい。

私「ドライバーを2007年のTaylor MadeのBurner TPモデルから、2016年のTaylor Made M2に10年ぶりに変えたんです」

P.「どれ、打ってごらん」

練習用のボロボロツルツルの手袋をしていたので、慌てて新品の手袋に変えて、数球ドライバーを打った。今日は左からの向かい風が強く、ボールは右へ逸れていった。

P.「それは、わざとフェードを打っているの?」

私「いいえ、真直ぐの球を打っているけど、風で右へ流されています。」

P.「じゃ、ドローを打ってみて。」

数球ドローを打ったが、打った直後はドローするものの、落ち際に風で右に流されていく。つまり、S字に飛んでいく。

P.「ちょっと、ボールフライトが低すぎるね。」と指摘されたので、高い球を打ってみた。やはりドローボールは落ち際に風で右に流されていく。

P.「あなたのボールは回転数が少なすぎるよ。ボールが途中でおじぎしている。もっと回転数を上げれば、もっと風の中を突き抜けて最後までドローするよ。」

私「確かにこのクラブは回転数が少ないと思います。Burnerは2500回転で最適だったけれど、このクラブはそれより少ないと思います。」

P.「2000回転いってないと思うよ。それじゃ低すぎだよ。」

私「Burnerのロフトは9.5度だったけど、このM2は10.5です。でも、Burnerに比べて、ロフトを1度上げたにもかかわらず、ボールフライトが低くて、たぶんキャリーは短いと思うけど、ランがすごく出るので、トータルでは15ヤードぐらい遠くへ飛ぶので気に入っているんですが。」

P.「でも、試合中にドローを打っているつもりでも、横風に持っていかれてフェードしたら困るでしょう。やっぱり回転数を上げなければだめだよ。」

私「さすが、ツアープロは凄い。そこまで考えたことがありませんでした。」

P.「M2は回転数が上がらない設計になっているからね。ロフトアップした方が良いね。M2にはロフトを調節する機能が付いているよね。ちょっとロフトの角度を上げて打ってみて。」

私「私はこのロフト角度を調節するの嫌いなんです。だって、ロフトを上げるとフェースがシャットになってどうやって打っていいか分からなくなるんです。」

P.「え~!!そうなの??ロフトだけを上げることはできないの?」

さすが、ツアープロである。メーカーが彼のためにカスタム仕様でクラブを作ってくるから、庶民の悩み事をご存じでない。とりあえず、ねじ回しでロフト角を調節して、数球打ってみた。

P.「この方が、ずーっと良い球じゃない。その調子でドローを打てば、向かい風でも、風の中をペネトレートして前のクラブと比べても飛距離が落ちることはないはずだ。逆に追い風なら15ヤードくらいは飛距離が伸びると思うよ。」

私「でも、初心者向けのクラブみたいにフェースがシャットになっていて、構えた時に、どうやって打って良いか分からなくて困るんですけど。」と苦情を言うと、私からクラブを受け取り、自分で構えてみて、

P.「確かに、これはひどい。全然だめだ。これじゃ打てないね。ん~ん。ロフトが11.5度の新しいクラブを買いなさい」

といった事情で、10年ぶりに買い替えたドライバーは数週間でクビになってしまった。

あ~、楽しい~!

明日も雨が降ってくれないかなあ。

コーヒーに全く関係のない内容だけど、あんまり楽しかったから、ついつい書いてしまいました。

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2016/05/27   yamagishicoffee

ハワイ最強のパワースポット(その2)

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先日モオキニ・ヘイアウ(神殿)へ行った話を記した。まるでコーヒーと関係のない話になってしまった。

神殿へ向かう車中で友人からこの神殿では願い事を強く、強く、本当に強く念じれば、願いがかなうらしいという話を聞いた。だから、今のうちに願い事を用意するようアドバイスを受けた。なるほど、カメハメハ大王のハワイ統一の夢をかなえてくれた場所だ。大抵の願ならかなえてくれそうな気がする。そこでゴルフのスコアーも大事だが、今シーズンのうちの畑のコーヒーが最上の香味になりますようにとお願いすることにした。

神殿を管理する神官のレイモミ・モオキニ・ラムさんの家に到着して、彼女を紹介してもらい、その後神殿へ行った。前回記したように、この丘の上から海を眺めると、昔、カメハメハ大王が見たであろうものと同じ風景があった。しかし、海の前に広がる草原にハオレコアがあちらこちらに生えているのは少し悲しかった。ハオレコアとは白人(ハオレ)の持ち込んだコアのような木という意味。コアはハワイ固有の樹木で木工品・家具・ウクレレなどに使われる最高級品の木材で、現在は数量が限られているのでハワイからの輸出が制限されている。また、自分の庭のコアを伐採するにも許可がいる。コアはハワイにとって大事な樹木だが、ハオレコアは迷惑な外来種だ。とても強力な雑草である。そのハオレコアが点在する。大雑把に見れば同じ風景でも、細部まで観察するとカメハメハ大王が見た風景と完全に同じではない。

チャント(祈り)に続き石の神殿内へ入り花を捧げた。うちの畑で摘んだラベンダーとバラのブーケを持参した。うちの畑ではラベンダーが放っておいてもどんどん育つ。だが、バラはハワイでは珍しいのだ。ハワイ固有の花ではなく、ラベンダーやバラなどの外来の花を捧げたら神様はビックリするかなあなどと、ちょっと不謹慎なことを考えながら捧げた。

続いて神殿内を散策し、カメハメハ大王生誕の場所へ行き、夕陽を眺めレイモミさんの家へ帰り夕食をいただいた。

ところで、願い事はいつどこですれば良いのか尋ねたところ、さっきの花を捧げる瞬間だったとのこと。まったく知りませんでした。全然違うことを考えながら花を捧げてしまいました。

もし、今年のコーヒーの出来が悪かったら祟りかも。。。。
 

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2016/05/23   yamagishicoffee

ハワイ最強のパワースポット(モオキニ・ヘイアウ)(その1)

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ハワイ島北端にあるモオキニ・ヘイアウ(神殿)へ行った。ハワイを統一したカメカメハ大王生誕の地だ。生まれながらにして殺される運命にあったカメハメハ大王を神官のモオキニ一族がかくまって育てた場所だ。

ハワイにはパワースポットなる場所がいくつもある。私はパワースポットの意味をよくは知らないが、特別な力を感じる場所という意味であろう。ハワイ島は地球に13ある気候のうちの11が存在している。また、今でも溶岩が流れ出る島で、地球の荒々しいエネルギーを感じる。だから、パワースポットが多いのだろう。

ところが、英語でPower spotとGoogleしても、何も出てこない。せいぜい、「日本でのスピリチュアルな熱狂」ぐらいの説明しか見当たらない。どうやら日本独自の概念のようだ。

私は寡聞にしてパワースポットという単語の日本の地質学における定義、宗教の商業戦略上の価値、あるいは観光業のマーケティング上の意味合いを知らないが、ともかく、ハワイに数多くあるパワースポットは観光の目玉である。通常の観光スポットを山、海、岩、樹木などに神が宿ると考える日本人が勝手にパワースポットと呼んでいる側面もあるが、それにしても、これで金儲けをしようと企む観光業者の並々ならぬパワーを感じるスポットである。ところが、モオキニ・ヘイアウは全く違う。

私を含め多くの人々にとってハワイと言えば、観光の地、リタイアの地、そして軍事の地である。よって、ハワイ中のどこに行っても観光施設や開発プロジェクトを見る。そういう産業に携わる人々を見かける。観光客が来れば至れり尽くせりで歓迎し喜んでいただくことが州を挙げての原則。島民ひとりひとりがアロハ精神で親善大使を務める。ハワイ古来のアロハ・スピリッツはその資本主義的原則によく馴染む。

日本人にとってハワイとは昔はアップダウンクイズで10問正解しないと行けない憧れの地だったが、今ではより身近な存在となっている。ハワイ州の人口は140万人弱。州内の先住ハワイ人とポリネシア系の人々を合わせて、たったの8万人。そのうちフラダンスを踊れるのはごく一握りだ。一方、日本でのフラダンス人口は20万人とも50万人とも100万人ともいわれている。日本人はみんなハワイが好きだ。ハワイはそれほどまで憧れの常夏の楽園のイメージの確立に成功している。ハワイ古来のフラダンスは観光立国に一役も二役もかっている。それが、西欧文明が入り込んで以来のハワイ、アメリカ人が演出するハワイだ。

ところが、このモオキニ・ヘイアウ(神殿)は、まったく、そういう臭いがしない。

いまでも、モオキニ一族が神官として管理していて、まったく観光化されていない。これまで、観光業者がバスの乗り入れを再三申し入れてきたが、断ってきたそうだ。「カメハメハ大王生誕の地」など、観光客が殺到しそうな場所なのに昔のままの姿を残している。

石を積み上げた神殿である。周りには何もない。とても風の強い場所だ。そこから眺めた海の景色が絶景だ。この海を眺めていると、これは昔カメハメハ大王が眺めた景色と同じなんだなあ。大王もこの風を感じていたんだなあ。彼はこの風景を眺めて何を思っていたのだろう。この場所はどのようにしてハワイを統一するような彼の人格を形成したのだろう。という考えが浮かんできた。不思議な空気に包まれている気がした。観光化されていない殺風景な場所に底知れぬパワーを感じた。観光業界がこれをパワースポットと認定しているかは知らないが、観光バスが乗り入れるようになれば、ハワイ最強のパワースポットの称号を得るだろう。これをパワースポットと呼ばずして、何をパワースポットというのだろう。

モオキニ・ヘイアウを観光化・世俗化から守ってきたのが、モオキニ一族の代表のレイモミ・モオキニ・ラムさん(レイは花、モミは真珠の意)。カメハメハ一族が消滅しても、大王を保護したこの一族はいまだにこの地を守っている。彼女は長い一族の歴史のなかでも初の女性のカフナ(神官)。しかし、彼女もすでに90歳を超え、孫娘にその地位を渡そうと準備している。後継者にとっての最大の問題はこの地を維持するコスト。世俗化を防ぎながらもこの地を維持するだけの収入源を見つけることが課題だそうだ。(続く)

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2016/05/21   yamagishicoffee

Daifukuji(大福寺)のバザー

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今日は年に一度の大福寺のバザー。大福時は有名な手島レストランの隣で、昔の日本人移民や子孫の日系人達のお寺。日系人コーヒー農家のコミュニティの中心だ。子供たちを集めて和太鼓のチームが組織され、コナで様々なイベントが行われるたびに子供たちの和太鼓の演奏が披露されたるする。

バザーでの収益金はお寺の維持費に充てられる。自分が使わなくなった物をバザーに寄付し、売り上げはお寺の収益となる。
バザーは既に80歳を過ぎた日系3世たちが今でも中心になって行われる。今日は朝から雨だったにもかかわらず大盛況。若い4世、5世らに交じって、3世たちも交通整理やらで濡れながら奉仕している。


私にとってのお目当ては食べ物。日系人たちが作った食べ物を即売する。これらは人気があるのでバザーの開始と同時に買わないとすぐ売り切れになる。バザー開始前から雨の中長蛇の列。
マンゴーの酢漬け、スターフルーツの酢漬け、大根の酢漬け、白菜の酢漬け、オレンジの皮の酢漬け等々。昔の日系移民は庭で採れるものはなんでも酢漬けにしたらしい。
また、ジャムも豊富。ジャムというよりゼリーといった感じ。パッションフルーツ、グアバ、ほおずきなどの様々なフルーツのジャムが並ぶ。
饅頭、スパムむすび、太巻きなども飛ぶように売れる。

食べ物売り場はバザー開始前から並んだ人々が一斉に殺到するので大混雑。会計の列も4列もある。私の列は日系人のお婆ちゃん二人が計算と現金授受を担当する列で、列の進み具合が遅い。隣の列では私の友達の日本人2人がテキパキと計算をこなしているので、どんどん進んでいく。

そもそもバザーは寄付が目的。けちけちしてはいけない。1週間はもつ食料を買い込んだ。
さて、我々の番になった。一人のお婆ちゃんがひとつひとつの品物の値段を読み上げ、隣りのお婆ちゃんが電卓に打ち込む。ニコニコしながら一生懸命に合計金額を計算してくれている。
金額が出た。えっ!!?どう考えても高すぎる。間違っている。いくら大量に買ったとはいえそんなには買っていない。
元銀行員の私としては計算間違えを放置するのはとてもつらい。第一、目の前に並んでいるこれらの食べ物を一瞥しただけでこの金額が間違えであることは常識的に分かるだろう。それくらい金額が違う。
ここで日系人お婆ちゃんの間違えを糾弾して世の中の価格体系の秩序を維持するのが社会正義である。資本主義の根幹だ。
しかし、ずぶぬれになりながら奉仕活動をしている先輩農家の顔が浮かんでくる。社会正義も大切だが先輩農家との付き合いも大事だ。
そうだ!そもそもこれは寄付として買っているものだ。第一、このお婆ちゃん達もボランティアだ。タダ働きどころではなく、自腹を切って、朝早くから色々な料理を取りそろえ持ち込んでいるのだ。ここで間違えた金額など、彼女らが持ち出しで払っている金額に比べたら僅かなものだ。
いやいや、ここで人情論に流されている場合ではない。資本主義の根幹の話だ。いや待て。寄付行為が発達しているのがアメリカ資本主義の特徴だ。寄付行為がなければアメリカの資本主義は成り立たない。殺風景な世の中になるだけだ。
ああー、お婆ちゃんがニコニコしながら、私がお金を出すのを待っている。どうしようどうしよう。
様々な思考が脳裏をかすめるなか、慌てて財布から追加のお札を取り出し、ここは快く文句を言わずに支払うことにした。全然潔くないか。。。。。

ブツクサブツクサ。

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2016/05/16   yamagishicoffee

カビ大好き♡

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 CBB(Coffee Berry Borer)という害虫は雨が降ると成虫したメスが実の中から出てきて新たな実に穴をあけて卵を産み付ける。このところ雨の日が続いているので、CBBの活動が活発になっていると思われので、Beauveria Bassianaという白カビの胞子を散布した。今シーズン最初の散布だ。このカビはコナの自然界に存在する。胞子が直接、昆虫類に付くと、そこから体内にカビが生えて昆虫を殺す。

世界中のコーヒー農家の大半では化学的な殺虫剤を使用する。一応、業界では殺虫剤はコーヒーの味に影響を与えないとの整理になっているが、私は同意しかねる。しかし、この自然界に存在するカビの胞子がコーヒーの果実の表面に付着しても中の種子であるコーヒーに影響を与えることはない。また、殺虫剤だと使用し続けるうちに害虫が耐性を取得するがカビの胞子だとその問題はない。

カビの胞子は直射日光に弱いので、日差しの強い日に撒くのはダメ。今週の様に毎日雨が降る時にに撒くと実や葉の表面に付着したまま生息し続ける。


写真のコーヒーの実や葉が白いのはカビではない。これは粘土。カビの胞子を散布する際にカオリンという粘土を混ぜて噴霧する。カオリンは中国の景徳鎮の磁器に使われる粘土で、有機栽培の果物の害虫対策に用いられる。よくリンゴやブドウの表面に見かける白い粉のコーティングがカオリン。胃薬や整腸剤に入っている物質で食べても問題ない。コーヒー農家でカオリンを撒くのは世界中でもコナだけだろう。しかも数軒のみ。我々は先頭をきって使用を始めたが追随する農家は少ない。人望のせいだろう。

 果実に粘土の膜を施すと、ザラザラした表面を害虫が嫌がり、果実に侵入するのを防ぐ。どうしようどうしようと害虫が実や葉の表面をウロウロと歩くうちに、カビの胞子を体中に引っ掛けるのを狙う。その他、酵母菌や乳酸菌などの有用微生物群なども混ぜて噴霧している。

 木全体が白くコーティングされるので、直射日光に弱いコーヒーの木を日焼けから守る。木の温度を下げて木の体力を保つので生産量が上がるという実験結果がある。また、私見ではあるが、日光を遮るので、熟成にかかる時間が長くなり、甘みが増すと思う。うちのコーヒーが他のコナコーヒーよりも甘いのはこのおかげだと私は思っている。

昔、NYで働いていた頃、夏に日本に出張した。最終日は大阪。大阪の暑さは尋常ではなかった。35度の猛暑のなか、背広で街を歩き回った。NYのウォール街では毎日がカジュアル。背広にネクタイは既に前世紀の遺物と化しているが、日本ではまだまだ伝統を大切に守っている。そもそも背広にネクタイは胸板の厚い西欧人の民族衣装で、貧相な体格の日本人には似合わないだろう。第一、日本の夏は欧州に比べて殺人的に蒸し暑いので、明らかに場違い。それでも、日本のサラリーマン達はその欧州の民族衣装を大事に守っている。我慢比べか。
大阪の取引先回りが終わり、関西国際空港へ向かう電車の中でカジュアルに着替えて飛行機に乗った。NYの自宅へ着くなりぐったり疲れてベッドに倒れこみ寝た。翌朝トランクを開けてビックリ。ワイシャツが緑色。カビだらけ。汗でビショビショのワイシャツをそのままビニール袋に押し込んで24時間トランクの中に入れて置いたらカビが大繁殖した。

でも、農園で撒いている白カビは良いカビです。好き♡

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2016/05/14   yamagishicoffee

干ばつで非常事態宣言のサウスコナにも雨が降った

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サラリーマンを辞めていきなり農業なんて出来るんですかとよく訊かれる。まあ、いろいろ覚えなければならないこともあるが、ボチボチやっている。でも、なんといっても一番難しいのはまとまった雨が降るか否かをその朝に予知する能力だ。

現在は2月に咲いた花の実が大きくなっている時期で、この時期に肥料を毎月のように撒く。肥料は雨が降る直前に撒く。肥料の中の3大要素の一つの窒素は撒いて雨が降らなければ、地面に染み込まずに空気中に蒸発してしまう。また、小雨だと地面の奥まで染み込まない。逆に洪水になるくらいの大雨だと、地面の奥深くまで突き抜けてしまい、これも良くない。

亜熱帯の島の天気は変わりやすい。雨もほんの少しの地域だけに降って、1キロ先では全く降らないことも多い。そして、テレビの天気予報はオアフ島の予報ばかりなのであまり参考にならない。また、コナ地域が雨だという予報もあてにならない。この畑で雨が降るか否かが勝負だ。

白馬のスキー場で働いていた学生時代、村の長老が雪が降るか否かの予想がとても的確だったので驚いた記憶がある。だから、そのじっちゃんになった気分で天気を予測する。じっちゃんは特定の山の稜線の雲の色を見ていたが、私はそんな極意は体得していないので、様々な情報を寄せ集めて決める。
朝起きて、天気図を見て、雨と雲のレーダーを見て、それから7時頃に外へ出て、水平線と裏手の山の方角を見て、風を見て、大体の予想を立てる。降る可能性ありと判断した日は、その後の海の上にできる雲の形と色の変化と湿度計の変化を観察して、9時ぐらいには最終判断をする。雨が降ると判断したら、急いで肥料を撒く。といっても夫婦2人で4時間くらいかかるので、予想が的中すると大抵は途中で雨が降りだし、びしょ濡れになりながらの作業だ。

自慢じゃないが、私はこの予想がうまい。妻は私を長老と呼ぶ。(単にジジイと呼んでいるだけかもしれない。)そして、自分で肥料を撒くから的確に栄養素を地面に染み込ませることができる。だから、うちは肥料を頻繁に少量ずつ撒き、年間を通して撒く量は他の畑より遥かに少ない。大抵の畑では労働者の都合の付く時に来てもらって撒くので、肥料のほとんどが蒸発してしまう。うちのお隣さんなんか私が肥料を撒きだすと、慌てて自分の畑にも肥料を撒く。
一昨日の朝、雨の確信を得たので、肥料を撒いた。その日の午後と昨日、そして今日も雨が降って、今回の肥料撒きは大成功だった。

ところで、今回はうちの畑だけではなく、コナ全体で雨が降った。うちはノースコナの北端で今年は割と雨が多いが、30km南へ行ったサウスコナでは大干ばつで国が非常事態宣言を出している。コーヒーの木も弱っていて、実の付きが悪いらしい。昨日はそのサウスコナで待望の大雨が降った。久々の大雨だったのであちらこちらで道路が洪水となった。でも、きっとコーヒーの木たちも農家も大喜びだろう。

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2016/05/11   yamagishicoffee

コナコーヒー農園便り 2016年5月号 経済危機と不法入国

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Source:Foxnews


消費税増税先送りが検討されている。日本の金融財政は危機的状況だ。巨額の財政赤字に加えて、日銀が国債発行残高の3割も買取り異次元の量的緩和。破綻以外に出口がない。今の金融財政政策は経済学の教科書がやってはならないと教える禁じ手のオンパレード。さらに、増税延期を求めるなど、経済破綻へと突き進むのが国民の総意に見える。

国の負債は国民一人当たり820万円。そもそも借金は借りた人(世代)が返すのが原則。なのに、借りた世代に返す意思はない。返済は生まれたばかりの赤子に押し付け、踏み倒して死んでいくつもりだ。おかげで赤ん坊はオギャと生まれた瞬間から820万円の借金だ。

家計に例えると、月収30万円の人が月々53万円を使い、差額は借金。借金総額5143万円。他人の金で収入の倍もの消費生活を謳歌しているので楽しくてしょうがない。だが、こんな虚構、ポンジー・スキームが続く訳がない。仮に破綻し返済を余儀なくされたとする。金利を2%と甘く仮定しても5143万円を30年で返すには、毎月19万円ずつの返済。月収30万円中、使える金は11万円だ。53万円の生活が日本の実力だと勘違いしている国民は、明日から11万円での生活を余儀なくされる。つまり、大幅な増税と社会保障と地方交付金などのカット。政府機能は警察、消防などごく僅かに限られる。だが、国民は自らそんな選択はしない。よって、財政破綻→国債借換不能→日銀が国債全額引受→日銀への信認失墜→円暴落・ハイパーインフレ→人々の預貯金が紙屑となる、という最悪の結末を経て、増税と財政カットを余儀なくされることになる。

破綻しない方法を考えろと主張するのも大事だが、いまだ誰もその方法を見出せず、状況は日々悪化している以上、我々個々人は破綻した場合にどうやって生きていくかを考えておくべきだ。そもそも、昨今の苦境の原因は金融財政政策の不足が原因ではない。国民全体の生活力の低下、金儲けへの欲望の低下が原因だ。日本が破綻すれば、自分の実力と運だけが頼り。だから、日本というブランドや組織力なしに、世界基準で自分の実力がどの程度かを各々が知っておくべきだ。団塊の世代を筆頭に戦後生まれの日本人は、個人の力量で切り開いていく実行力や生活力が希薄だ。サラリーマンは会社におんぶに抱っこ。終戦直後の混乱期、人々は国を当てにせず、自分の才覚を頼りに闇でも何でもやった。明治には日本で食えなければ、ハワイでコーヒーを育て、故郷に錦を飾ろうと人々は海を渡った。今の人には、そういう覚悟があるのか。

コナのコーヒー農園には、フィリピンやメキシコから来て、生きていくために精一杯に働く人々がいる。小さな家に10人もすし詰めに暮らして生活を切り詰め、コーヒーを摘んでお金を貯め、母国へ送金する。まるで明治の日本人移民だ。そうまでして自活しようと海を渡ってくる日本人は今はいない。でも、今後は事情は違うかもしれない。

米国では移民規制が強化されている。私がコーヒー栽培を始めたころ、とあるメキシコ人が手伝ってくれた。よく働くので助かった。ところが、奥さんの親が病気になったので、いったんメキシコへ帰国し、それきり、なかなか戻ってこない。やがて事情が判明した。てっきりコナに合法的に滞在していたと思っていたが、実は不法移民だった。

親の病気が一段落し、昔のように国境を歩いて渡ろうとしたところ、国境には警備員がいて追い返された。昔と違う。そこで、国境突破ツアーに申し込んだ。3日間、ガイドと一緒に野宿をしながら砂漠を横断し、警備の薄いところを走り抜け、命がけで国境を横断する。だが、奥さんは当時は妊娠6ヶ月。命を賭けて砂漠を走れない。そこで、そういう方にはお値段は張りますが、こちらのプランがございますと、業者から渡されたのが他人のパスポート。写真が似ているので、なりすまして飛行機で入国する作戦。彼女が入国したら、彼が砂漠を横断する段取りだったが、彼女は空港の入国検査でバレて捕まった。今後20年は米国に入国しない旨の誓約書にサインし、送り返された。彼も米国行きを断念。

米国にはこのように入国した不法移民が1200万人もいるらしい。世界中には命がけで働かないと暮らせない国が多くあるし、こういう必死で働く移民が来るのが米国の強みだ。820万円の借金を抱えて生まれる日本の未来の世代はこうならなくて済むのか? 

 

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2016/05/01   yamagishicoffee