農園便り

2016年5月29日

満月の夜にはドルが上がる

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先週の話で恐縮だが、21日はBlue moonだった。

Once in a blue moonという英語の表現がある。「ごくまれに」とか「めったに…ない」という意味である。

その語源は「月が青く見えるのは珍しいから」という意味ではない。わざわざ遠回りして帰るほどの景色ではない。

Blue moonとは、もともとは belewe moonといい、  beleweは古語で裏切るという意味だが、今では使われなくなったので、発音の似たBlueが充てられたらしい。一つの季節(3か月)の中で満月が4回ある場合に、その3度目の満月という意味である。転じて、最近では、ひと月の中の2度目の満月の場合に使うこともある。それくらいの頻度で現れるほど珍しいという意味である。次回は2018年1月だそうだ。

昨日、面白い話を聞いた。満月の夜には植物は普通よりも早く成長するそうだ。満月の光でも光合成をおこなうというのは、すごい生命力だ。先週は雨も多かったし、満月だったので、さぞかしコーヒーも成長したことであろう。

実は昔、東京外国為替市場で「満月の夜にはドルが上がる」という格言があった。私が為替ディーラーだった頃に発見し、でっち上げた理論である。

昔の為替ディーラーはチャートをつけた。今のようにコンピューターが発達していなかったから、方眼紙に手書きだ。MBAで市場効率仮説を徹底的に教えられた私としては、チャート分析などあまり信用していなかったが(はるか後にその認識はかなり改めることになったが)、そんな私でもチャートはつけた。信じるか信じないかは別にしてチャートを見ないディーラーはいない。罫線分析というやつで、相場がこの平均線を下から上へ抜けたから買いのサインが出たとかいう後出しジャンケンみたいなやつだ。さすがにWall Street JournalやFinancial Timesはそういう分析はしないが、なぜか日経新聞が大好きで、頻繁にそういう市場分析を披露している占いみたいなあれだ。

ある時、私は満月の日にはNY市場(東京の満月の夜)で為替相場が大荒れになることが多いことを発見した。ドルが大きく値上がりしたり、大きく値下がりしたりするが、値上がりすることの方が多かった。

チャートを信じていない私は、チャートを信じるくらいなら、月の運行でディーリングした方がましだという気持ちで、そのことを顧客向けの日々の為替レポートに記した。当時、MBA保有者の多い欧米の市場とは異なり、日本の市場参加者にはチャートの信奉者が多かった。顧客の信仰を逆なですることはできないので、為替レポートには私がチャートを軽視していることはいっさい書けない。ただ、満月理論として面白おかしく書いた。そうしたら思わぬ反響があった。市場関係者の間で話題になり、日経新聞までが記事にした。私は皮肉のつもりで冗談で書いたのに。そういうことを会社のロゴ入りのレポートに書く私も私だが、そんな事を本当に新聞に書く記者も記者だし、それを通したデスクもデスクだ。世の中、粋な人は割といるものである。

しかし、昔から満月は色々と話題の種だ。植物が早く成長するのに加えて、狼男が変身するくらいなので、人の精神にも何らかの影響があるのかもしれない。為替ディーラーたちが、ハイパーになって、気が狂ったようにトレードして、相場が大荒れになったのかもしれない。人々の欲望と恐怖の渦巻くマーケットは不思議な所だ。

いまではもう20年以上も前の話。その後、本当に私の満月理論が当てはまったかは知らない。いや、あの後もずっと当てはまっていたらビックリだ。

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2016/05/29   yamagishicoffee