コナコーヒー農園便り 2016年5月号 経済危機と不法入国
Source:Foxnews
消費税増税先送りが検討されている。日本の金融財政は危機的状況だ。巨額の財政赤字に加えて、日銀が国債発行残高の3割も買取り異次元の量的緩和。破綻以外に出口がない。今の金融財政政策は経済学の教科書がやってはならないと教える禁じ手のオンパレード。さらに、増税延期を求めるなど、経済破綻へと突き進むのが国民の総意に見える。
国の負債は国民一人当たり820万円。そもそも借金は借りた人(世代)が返すのが原則。なのに、借りた世代に返す意思はない。返済は生まれたばかりの赤子に押し付け、踏み倒して死んでいくつもりだ。おかげで赤ん坊はオギャと生まれた瞬間から820万円の借金だ。
家計に例えると、月収30万円の人が月々53万円を使い、差額は借金。借金総額5143万円。他人の金で収入の倍もの消費生活を謳歌しているので楽しくてしょうがない。だが、こんな虚構、ポンジー・スキームが続く訳がない。仮に破綻し返済を余儀なくされたとする。金利を2%と甘く仮定しても5143万円を30年で返すには、毎月19万円ずつの返済。月収30万円中、使える金は11万円だ。53万円の生活が日本の実力だと勘違いしている国民は、明日から11万円での生活を余儀なくされる。つまり、大幅な増税と社会保障と地方交付金などのカット。政府機能は警察、消防などごく僅かに限られる。だが、国民は自らそんな選択はしない。よって、財政破綻→国債借換不能→日銀が国債全額引受→日銀への信認失墜→円暴落・ハイパーインフレ→人々の預貯金が紙屑となる、という最悪の結末を経て、増税と財政カットを余儀なくされることになる。
破綻しない方法を考えろと主張するのも大事だが、いまだ誰もその方法を見出せず、状況は日々悪化している以上、我々個々人は破綻した場合にどうやって生きていくかを考えておくべきだ。そもそも、昨今の苦境の原因は金融財政政策の不足が原因ではない。国民全体の生活力の低下、金儲けへの欲望の低下が原因だ。日本が破綻すれば、自分の実力と運だけが頼り。だから、日本というブランドや組織力なしに、世界基準で自分の実力がどの程度かを各々が知っておくべきだ。団塊の世代を筆頭に戦後生まれの日本人は、個人の力量で切り開いていく実行力や生活力が希薄だ。サラリーマンは会社におんぶに抱っこ。終戦直後の混乱期、人々は国を当てにせず、自分の才覚を頼りに闇でも何でもやった。明治には日本で食えなければ、ハワイでコーヒーを育て、故郷に錦を飾ろうと人々は海を渡った。今の人には、そういう覚悟があるのか。
コナのコーヒー農園には、フィリピンやメキシコから来て、生きていくために精一杯に働く人々がいる。小さな家に10人もすし詰めに暮らして生活を切り詰め、コーヒーを摘んでお金を貯め、母国へ送金する。まるで明治の日本人移民だ。そうまでして自活しようと海を渡ってくる日本人は今はいない。でも、今後は事情は違うかもしれない。
米国では移民規制が強化されている。私がコーヒー栽培を始めたころ、とあるメキシコ人が手伝ってくれた。よく働くので助かった。ところが、奥さんの親が病気になったので、いったんメキシコへ帰国し、それきり、なかなか戻ってこない。やがて事情が判明した。てっきりコナに合法的に滞在していたと思っていたが、実は不法移民だった。
親の病気が一段落し、昔のように国境を歩いて渡ろうとしたところ、国境には警備員がいて追い返された。昔と違う。そこで、国境突破ツアーに申し込んだ。3日間、ガイドと一緒に野宿をしながら砂漠を横断し、警備の薄いところを走り抜け、命がけで国境を横断する。だが、奥さんは当時は妊娠6ヶ月。命を賭けて砂漠を走れない。そこで、そういう方にはお値段は張りますが、こちらのプランがございますと、業者から渡されたのが他人のパスポート。写真が似ているので、なりすまして飛行機で入国する作戦。彼女が入国したら、彼が砂漠を横断する段取りだったが、彼女は空港の入国検査でバレて捕まった。今後20年は米国に入国しない旨の誓約書にサインし、送り返された。彼も米国行きを断念。
米国にはこのように入国した不法移民が1200万人もいるらしい。世界中には命がけで働かないと暮らせない国が多くあるし、こういう必死で働く移民が来るのが米国の強みだ。820万円の借金を抱えて生まれる日本の未来の世代はこうならなくて済むのか?