干ばつで非常事態宣言のサウスコナにも雨が降った
サラリーマンを辞めていきなり農業なんて出来るんですかとよく訊かれる。まあ、いろいろ覚えなければならないこともあるが、ボチボチやっている。でも、なんといっても一番難しいのはまとまった雨が降るか否かをその朝に予知する能力だ。
現在は2月に咲いた花の実が大きくなっている時期で、この時期に肥料を毎月のように撒く。肥料は雨が降る直前に撒く。肥料の中の3大要素の一つの窒素は撒いて雨が降らなければ、地面に染み込まずに空気中に蒸発してしまう。また、小雨だと地面の奥まで染み込まない。逆に洪水になるくらいの大雨だと、地面の奥深くまで突き抜けてしまい、これも良くない。
亜熱帯の島の天気は変わりやすい。雨もほんの少しの地域だけに降って、1キロ先では全く降らないことも多い。そして、テレビの天気予報はオアフ島の予報ばかりなのであまり参考にならない。また、コナ地域が雨だという予報もあてにならない。この畑で雨が降るか否かが勝負だ。
白馬のスキー場で働いていた学生時代、村の長老が雪が降るか否かの予想がとても的確だったので驚いた記憶がある。だから、そのじっちゃんになった気分で天気を予測する。じっちゃんは特定の山の稜線の雲の色を見ていたが、私はそんな極意は体得していないので、様々な情報を寄せ集めて決める。
朝起きて、天気図を見て、雨と雲のレーダーを見て、それから7時頃に外へ出て、水平線と裏手の山の方角を見て、風を見て、大体の予想を立てる。降る可能性ありと判断した日は、その後の海の上にできる雲の形と色の変化と湿度計の変化を観察して、9時ぐらいには最終判断をする。雨が降ると判断したら、急いで肥料を撒く。といっても夫婦2人で4時間くらいかかるので、予想が的中すると大抵は途中で雨が降りだし、びしょ濡れになりながらの作業だ。
自慢じゃないが、私はこの予想がうまい。妻は私を長老と呼ぶ。(単にジジイと呼んでいるだけかもしれない。)そして、自分で肥料を撒くから的確に栄養素を地面に染み込ませることができる。だから、うちは肥料を頻繁に少量ずつ撒き、年間を通して撒く量は他の畑より遥かに少ない。大抵の畑では労働者の都合の付く時に来てもらって撒くので、肥料のほとんどが蒸発してしまう。うちのお隣さんなんか私が肥料を撒きだすと、慌てて自分の畑にも肥料を撒く。
一昨日の朝、雨の確信を得たので、肥料を撒いた。その日の午後と昨日、そして今日も雨が降って、今回の肥料撒きは大成功だった。
ところで、今回はうちの畑だけではなく、コナ全体で雨が降った。うちはノースコナの北端で今年は割と雨が多いが、30km南へ行ったサウスコナでは大干ばつで国が非常事態宣言を出している。コーヒーの木も弱っていて、実の付きが悪いらしい。昨日はそのサウスコナで待望の大雨が降った。久々の大雨だったのであちらこちらで道路が洪水となった。でも、きっとコーヒーの木たちも農家も大喜びだろう。