カメレオン
カットバック(剪定)したコーヒーの枝葉を運ぶ作業を続けている。
剪定して、枯れて葉が茶色くなった枝葉にカメレオンがいる。コーヒー畑にたくさん住んでいるが、木が切られたので迷子になった。気の毒なので、集めてオレンジの木に移動。私の肩や背中にも、ど根性でしがみついている。爪が痛い。
コーヒーの切り株に雑草が生えている。これも、ど根性。
カットバック(剪定)したコーヒーの枝葉を運ぶ作業を続けている。
剪定して、枯れて葉が茶色くなった枝葉にカメレオンがいる。コーヒー畑にたくさん住んでいるが、木が切られたので迷子になった。気の毒なので、集めてオレンジの木に移動。私の肩や背中にも、ど根性でしがみついている。爪が痛い。
コーヒーの切り株に雑草が生えている。これも、ど根性。
https://www.youtube.com/watch?v=X2vqSPs1dPc
https://www.youtube.com/watch?v=Y1As3fDXGac&feature=youtu.be
2000本のコーヒーの木をカットバック(剪定)した。来月は切った枝を粉砕機で粉々にして畑に撒く。そのために畑のあちらこちらに枝葉をまとめておく。
ひたすら運ぶ。一本の木には4本の幹を生やしているので、8,000本をひたすら運んで積み上げる。
コーヒー栽培のシーズンのハイライトは試飲。先日精製した豆を等級別にカッピングする。緊張する。
他の方々のカッピングとは事情が違う。品評会の審査員ならば、点数を付けて、このコーヒーは良いとか悪いとか言えば済む。買い付け担当なら、飲んで嫌いなら買わなければよい。大手の農園ならば、何種類も異なるバッチを生産するので、そのたびに試飲して、バッチごとの優劣をつける。私どもの様な夫婦2人の零細農園は、年間のすべてのクロップをまとめて精製・出荷するので、一発勝負。満足のいかない味ならば、一年の苦労が台無し。なすすべなし。後戻りはできない。逆に、満足な出来栄えなら、至高の喜びだ。農家の醍醐味がここにある。
日々、コーヒーを摘みながら実を食べてみる。果肉の味は実の健康具合を示すので、その年の出来具合は大体の見当はついている。しかし、焙煎して飲んでみないと確かなことは分からない。茶碗蒸し用の椀でカップするのはご愛敬。サイズが丁度良い。
シュー。すすってみた。よい出来だ。嬉しい。
ドリップしてみた。これも良い。また嬉しい。
サイズ19(19/64インチ、以下同様),18,17,16と甲乙つけがたし。
個人的には、私はサイズ16、妻はサイズ17が良いとの感想。あくまでも今日の個人的な感想で、SCAの採点基準では点数にほとんど差はないだろう。
ちなみに、見た目重視の日本ではExtra Fancy(サイズ19、一番大きい豆)とPeaberry(一番小さい豆で形が独特)が珍重されるが、コナのコーヒー農家やQ Grader(鑑定士)の間では、サイズや形による香味の優劣はないというのが共通した見解。
我々零細農園にとって、味が良いことはもちろん重要だが、味のばらつきが少ないことも大切。つまり、平均が高くて標準偏差が低い方が良い。今年はPrimeに格下げになった豆が少なく、僅か8%。しかも、Primeの味もまずまず。ということは、全体的にまとまって、質は良かったという事。これは嬉しい。
大農園の中には、逆の戦略を採る所もある。わざとばらつきを出す。クズが多く出てもよいから、ホームランを狙う。ホームランを出品して品評会で入賞すれば、名が売れる。するとクズも売れる。これがスペシャリティー・コーヒーの裏の顔。COE(国ごとの品評会)入賞の農園という触れ込みのコーヒーを飲んでガッカリすることが多いのはこのため。入賞したコーヒーと、入賞したコーヒーを作った農園の一般的なコーヒーは違う。だが、生産量が少なく、毎年一発勝負の当農園には、そんな戦略を採るゆとりはない。ホームランは狙わず、全量まとまってスペシャリティーを目指すのみ。
ちなみに、コナコーヒーの等級には、Extra Fancy、Fancy、No.1、Select、 Primeと続く。昨年のコナ全体の統計では、Extra Fancy、Fancy、No.1、Selectを合計しても全体の17%程度。一方、 Primeが70%程度と大多数を占める。ここまでは卸売用、つまり、販売相手は仕入れ担当のプロ。さらに、その下には、3x、Off Grade、 Rubbishという等級が続く。ハワイのお土産屋さんのコーヒーは3xが主力で、ブレンドやフレーバーコーヒーならばOff Gradeが使われる。
うちの農園では、例年、原則的にPrimeはコナの他の農園に売る。ただし、山岸農園の名前を使わないことを約束してもらう。一般的には、Primeならは上出来だが、私は山岸農園の名前では売りたくない。その下の、3xやOff Gradeは今年は2%ほど出たが、これもまた別の農園へ売る。Rubbishは破棄(畑に撒く)。
毎度のことだが、2019-20年のシーズンも、様々な難題にぶち当たった。だが、どうにかこうにか克服して、最終的には、まとまった品質のコーヒーになった。
カッピングは朝から緊張したが、ほっとした。今は徳勝龍関の次ぐらいに嬉しい。カッピングのし過ぎで、「喉がカラカラでした。」
https://www.youtube.com/watch?v=5TOxbDC9Yvo
https://www.youtube.com/watch?v=d2ZdGEZS8Bk
コーヒーの生豆をサイズ別に選別する作業。
最初のビデオは機械による選別。あっという間にサイズ19(19/64インチ)、サイズ18、サイズ17、サイズ16、サイズ16以下、ピーベリーに分けてくれる。一時間で1000ポンドぐらいの豆を6種類に分類できる。今年は当農園では収穫するのには6カ月かかったが、5,500ポンドの豆のサイズ分けは5時間で終わった。
次のビデオは我家でたまに行う手作業。ビデオでは木枠のふるいを2層に重ねて、上がサイズ18のふるいで、下がサイズ17のふるい。こうするとサイズa)18・19混合、b)17、c)16以下とピーベリーの混合3種類に分類できる。1時間で20ポンド位しか処理できない。しかも頻繁に間違える。
温暖化は嫌いだけど、電力大好き。昔の人は偉かった。
https://www.youtube.com/watch?v=KaGPjYaUMM0
今シーズン収穫したコーヒー豆を精製(ドライミル)した。
ビデオはサイズ19の豆を比重選別機にかけているところ。手前のワイパーの様な板が右に振り切って設定されているのをご覧いただきたい。比重選別機は比重の重い豆(良質)が左側に、比重の軽い豆(欠陥豆)が右側に来るようになっている。このビデオでは豆がドンドン左へ寄っていく。これは比重が重い豆が多いから。比重が軽い欠陥豆が多いと、豆はどんどん右に寄っていく。欠陥豆の割合を見ながら、ワイパーの様な板をどのあたりで固定するかを決める。板の左を通る豆が合格で右が失格で等級を下げる。
欠陥豆の多い一般的な農園は、その板は左に振り切って固定され、ほとんどの豆がふるい落とされて、等級が下げられる。当農園の豆は右に振り切って固定され、サイズ19の9割以上がExtra Fancyとして合格する。
Extra Fancyとはサイズ19(一番大きいサイズ。ふるいの穴の大きさが19/64インチ)の豆で欠陥率が大体1%以下ぐらいになるように選別した物。コナの場合、サイズ19の豆は全体の約15%位採れる。サイズが大きいからといって美味しいという訳ではないが、見た目を重視する日本市場では重宝される。
精製所の方からは、今年もコナで一番欠陥豆が少ない、しかも2番目の農園とは桁違いに、とお褒めの言葉を頂いた。10年前の害虫上陸以来、5年くらい前までは、コナで約600軒あるコーヒー農家の中で、Extra Fancyの認証が取れるのはうちの畑だけだった。
4年前に認証の基準が緩くなったので、色選別機などを持っている大農園では何とかExtra Fancyなどを生産できるところが出て来た。それでも、昨年はコナ全体でExtra Fancyの豆は26000ポンド、村全体で認証を受けた豆の0.7%。認証に出さない農園もあるので、コナ全体の生産量に対する割合はもっと低い。前述のとおり、本来は15%程度採れるはずが1%をはるかに下回るということはそれだけ害虫の被害が甚大だということ。ちなみに、うちの農園では、今年はSize 19の割合は全体の17%程度で、そのうち9割以上が合格するので、Extra Fancyの割合は全体の16%だった。
しかも、うちの農園は、基準緩和後も、毎年、緩和前の厳しい基準で選別をしてきた。現在のところ、来年からは認証の基準が再び厳しくなる予定。そうなれば、精製所の人の言うことには、Extra Fancyが生産できるのは、再び、うちの農園だけになるだろう、とのこと。
ちなみに、一般的なExtra Fancyというのは、害虫被害の少ない、色々な農園の豆を集めて混ぜて(たぶん殺虫剤まみれ)、サイズ選別機と比重選別機と色選別機でドガチャカ、ドガチャカしたもの。どこの農園の物だかわからないExtra Fancyよりも(それでさえ来年は誰も作れないんだけど)、うちの農園の豆はずっと質が良い。力説。
昨日と今日は今シーズン収穫したコーヒー豆をすべて精製(ドライミル)。
来月日本へ空輸する。
コーヒーの木のカットバック。今年は約2000本を切る。
先週から始めたけど、一日100本も切ると腕が痛くて無理。
前はもっとできたのに、歳をとったなあ、とため息ばかり。
今日はチェーンソーの刃を取り替えたら、とっても楽。
軽く300本切れて、雨が降らなければ600本はいけた。
農機具をちゃんと整備せんと、いかんなあ。
今シーズンのコーヒー収穫終了。8月に始まって5か月間で9ラウンドした。
収穫は終わったが、畑には、まだ摘み残した実があり、害虫の棲み処になると困るので、明日からはそれらを全て摘み取り破棄する。その後、今シーズン摘んだ木はすべて膝の高さに剪定(カットバック)。切った木は細かく粉砕して(チッピング)畑に撒く。これらを2月末までに行う。
また、その間に、今シーズン分の全ての豆(パーチメント)を精製所で皮を割り、サイズに分け、比重の軽いものを取り除き、袋に詰めて、日本へ空輸する。
まだまだ、忙しい。
偶然にも収穫の最終日にコーヒーの花が咲き翌シーズンが始まった。
ホノルルの日本語ラジオ放送KZOOを聴きながらコーヒーを摘む。ハワイには色々な観光名所があるが、私にはハワイで一番面白いのはKZOO放送だ。
KZOO放送の看板番組は電話応答のコーナー。リスナーが電話で質問やら自分の体験、考えなどを投げかけ、それに対して他のリスナーが答える。日本人アナウンサーが仲介して会話の輪が広がる。日本語を話す日系人も登場し、ハワイの日本人・日系人が助け合う趣旨の番組。もう10年も前だが、面白い会話があった。
日系老女A:「私は子供の頃から、青はグリーンの意味と思ってましたが、友達が青はブルーだというのです。それは本当ですか?葉っぱや芝のグリーンは青ですよね。」
アナウンサー「そうですね。日本語では青と緑の区別が曖昧なところがありますね。どう使い分けるのかをご存知の方はお電話ください。」
しばらく色々なやり取りが続き、とんちんかんな答えもあって面白かった。最後に、
日系老女B:「あなた、緑という漢字を学校で習ったでしょう。青の漢字とは違うでしょう。緑と青は違う色。緑はグリーン、青はブルーに決まってるでしょう。」
アナウンサー「そうですね。でも、日本語では、信号が青、とか、芝生が青いなどと、本当は緑なのにそれを青と言いますよね。」
日系老女B:「緑はグリーン、青はブルー。グリーンを青というなんて、あなた、学問が足らん!」
確かに日本語は芝が青かったり、黒髪や赤ん坊が緑だったりで厄介だ。色の誤解は興味深いし、日系人がアナウンサーを叱りつける場面も面白かったが、それ以上に、この「学問が足らん!」という言葉に感銘した。これは明治の日本語だ。現代では使わない。私は不勉強を指摘されることは多々あるが、この言葉を浴びせられたことはない。きっと、明治に移民してきた日本人は、砂糖きび畑やコーヒー畑で働きながら、アメリカ社会で苦労して子供を育てたであろう。子供たちは「学問が足らん」と叱られて育ったのであろう。その表現がハワイに残っているのだ。実際に日系三世たちは、学問を重ねて社会進出を果たした。今ではコーヒーに頼らずに生活をしている。日系移民の苦労が偲ばれた。
ちなみに、日系人の間ではTaranとは足りない、または短いことを意味し、Taran Taranと2つ重ねると、まぬけ、頭が足りない、学問が足りないの意味になる。
その晩、日本食レストランに行ったら、隣のテーブルで日本人の中年夫婦と日系三世の老夫婦が日本語で会話をしている。
日本人妻 「この前、小松菜をあそこのスーパーで見つけたの。」
日系三世妻「Komatsuna?」
日本人妻 「あら、小松菜、分からない?あの葉っぱの青い野菜」
日系三世妻「葉っぱの青い? Blue?」
Blue?と言ったきり、日系人のおばあさんは、首をかしげて、固まってしまった。きっと彼女は、緑ではなく青い色をした野菜を一生懸命に想像しているに違いない。頭の中が?マークでいっぱいになっていることだろう。
さて、コーヒー摘みは、枝に熟した赤と未熟の緑の実が混在している中から熟した赤だけを摘む。緑を摘んではいけない。収穫を手伝ってくれるピッカーに"Don’t pick blue" (青い実を摘まないでね)とついつい口走ったら、"Blue?"と困り顔。