農園便り

2016年07月9日

SCAA/CQI認定Qグレーダー試験対策(その4)

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Organic Acid Matching Pairs Test 有機酸の識別試験

 Coffee Chemistry.comへ行って、Organic Acids Taste kitを買う。テストでもそれが使われる。

スペシャルティーコーヒーは酸味が命。

コーヒーの酸味にはCitric acid(クエン酸) Malic acid(リンゴ酸) Acetic acid (酢酸)Phosphoric acid (リン酸)Lactic acid(乳酸) Quinic acid(キナ酸、クロロゲン酸)などがある。このうち、今回の試験では最初の4つがでた。

 

Citric Acid(クエン酸)

コーヒーの実の中で光合成により生成される。コーヒーの実が成長する初期に多く生成される。ロバスタ種よりもアラビカ種に多い。レモンなどのかんきつ類の酸で、舌に強い刺激を感じる。収穫の際に成熟度合いが足りない段階で摘むとクエン酸が多くなる。場合によっては好ましい酸味ではなく、すっぱいと感じることもある。焙煎が深くなるにつれてどんどん分解される。

一般に東アフリカのコーヒーのほうが中米のコーヒーよりクエン酸のレベルが低い。

このテストでは最も強く特徴的な酸と感じる。

 

Malic Acid (リンゴ酸)

コーヒーの実の中で光合成により生成される。コーヒーの実が成長する後期に多く生成される。ロバスタ種よりもアラビカ種に多い。コーヒーの実の成熟にかかる時間が長いと多くのリンゴ酸が生成される。よって、コナのように曇りが多い場合や同じ産地でも日陰樹を活用したり、標高が高く気温が低い、あるいは寒暖差が大きいなどの畑で時間をかけてゆっくり熟したコーヒーはリンゴ酸を多く含む。青りんごなどに感じる甘く好ましい酸味。東アフリカや山岸コーヒーに特徴的。焙煎が深くなるにつれてどんどん分解される。

このテストではクエン酸の次に強く感じるが、少しまろやか。

Mouth Drying(吐き出した後、どんどん口の中が乾いていく感じがする)なのが特徴。

 

Phosphoric acid (リン酸)

炭素を含まないので有機酸ではない。光合成では生成できない。土壌にリン酸が含まれると根から吸収し豆に溜まる。あまり酸味を感じないが、コーヒーに明るさを加える。抽出したコーヒーの中では最も濃度が低いが、他の酸味を引き立たせる。

クエン酸のレモンのような強い酸味をリン酸が加わることによってマンゴーのような甘い酸味に変える。

酸味と甘みをつなぎ合わせる効果があるので、コーラなどの清涼飲料水に使用される。加工食品に頻繁に使われる酸味。

私が練習した感じでは、もともと酸味の低いコーヒーにリン酸を入れてもあまり酸味を感じない。しかし、酸味が高いコーヒーに入れると、もともとの酸味を引き立たすので他の酸と混同し易い。

炭酸水を飲んだ時のような舌にピリピリした感触がある。

水洗式で水に長時間浸していると染み出る場合がある。

土壌により含有量が決まるが、アラビカ種、ロバスタ種に同じ程度含まれる。

山岸農園では土壌成分検査の結果、コーヒーに必要な100年分のリン酸が含まれている。

 

Acetic Acid (酢酸)

過熟した実や地面に落ちて何日も経った実を拾って混入すると酢酸が多くなる。非水洗式など精製の段階で発酵が進むと増える。酢のような酸味。微量だと好ましい酸味に感じる人が多いらしい。大量に入ると不快に感じる。

テストでは口にくわえると、喉の奥に違和感を感じる。酸味が強すぎると喉の奥が収縮し、オエーという感触が出る。吐き出した後、Mouth Watering(どんどん唾が出てくる感じ)なのが特徴。

焙煎時の初期に糖分が分解され酢酸が増え、464°Fで急激に減る。

 

Lactic acid(乳酸)

ヨーグルトのような好ましい酸味である。

焙煎中にショ糖が分解されて生成される。唯一ロースト中に増加し続ける酸味。深炒りコーヒーにミルキーな感触を加える。

今回のテストには出なかった。

 

Quinic acid(キナ酸)

焙煎中にクロロゲン酸が分解してキナ酸とカフェイン酸が生成される。

クロロゲン酸は生豆中のタンニンで、外敵から実を守る物質。

キナ酸はクランベリーやトニックウォーターに多い。

焙煎が進むとキナ酸が増えて苦みの原因となる。ボディーも増える。

健康に良いと日本のコーヒー業界では人気のクロロゲン酸だが、これが多いと苦いキナ酸が多く発生してコーヒーの味が悪くなる。アメリカ人はコーヒー業界の人でもクロロゲン酸なんて単語は知らない。

アラビカ種よりもロバスタ種に多く含まれる。

今回のテストには出なかった。

 

テストではSCAA基準で淹れたコーヒーをお湯で倍に薄めたものに、それぞれの酸を加えて、識別できるかの技能を試す。8組のセットが用意される。一組あたり4カップある。その4カップのうち2カップに同じ酸が注入されている。酸の入っているカップを2つ選び、入っている酸の種類を答える。今回の試験では、Citric acid(クエン酸) Malic acid(リンゴ酸) Acetic acid (酢酸)Phosphoric acid (リン酸)の4種類がそれぞれ2回ずつ出た。

練習キットを買って、練習したほうがよい。テストの為というより、酸味を官能する訓練に実践的に役立つ。100ccにたいして、20滴ずつを入れる。コップに最初に酸を入れてから、コーヒーを注ぐとうまく混ざる。

テストの練習ラウンドで、教官が誤って漂白剤の残っているコーヒーメーカーで淹れたコーヒーを使用したら、舌が酸を全く感じることができず、参加者全員が恐怖のどん底へ突き落された。どのカップも何も感じない。こんなに難しいテストには絶対に合格できないと感じた。しばらく全員が顔を見つめあい、教官に恐る恐る何も感じませんと告白したところ、漂白剤の混入が発覚した。漂白剤恐るべし。

 

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2016/07/09   yamagishicoffee