農園便り

2016年05月14日

カビ大好き♡

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 CBB(Coffee Berry Borer)という害虫は雨が降ると成虫したメスが実の中から出てきて新たな実に穴をあけて卵を産み付ける。このところ雨の日が続いているので、CBBの活動が活発になっていると思われので、Beauveria Bassianaという白カビの胞子を散布した。今シーズン最初の散布だ。このカビはコナの自然界に存在する。胞子が直接、昆虫類に付くと、そこから体内にカビが生えて昆虫を殺す。

世界中のコーヒー農家の大半では化学的な殺虫剤を使用する。一応、業界では殺虫剤はコーヒーの味に影響を与えないとの整理になっているが、私は同意しかねる。しかし、この自然界に存在するカビの胞子がコーヒーの果実の表面に付着しても中の種子であるコーヒーに影響を与えることはない。また、殺虫剤だと使用し続けるうちに害虫が耐性を取得するがカビの胞子だとその問題はない。

カビの胞子は直射日光に弱いので、日差しの強い日に撒くのはダメ。今週の様に毎日雨が降る時にに撒くと実や葉の表面に付着したまま生息し続ける。


写真のコーヒーの実や葉が白いのはカビではない。これは粘土。カビの胞子を散布する際にカオリンという粘土を混ぜて噴霧する。カオリンは中国の景徳鎮の磁器に使われる粘土で、有機栽培の果物の害虫対策に用いられる。よくリンゴやブドウの表面に見かける白い粉のコーティングがカオリン。胃薬や整腸剤に入っている物質で食べても問題ない。コーヒー農家でカオリンを撒くのは世界中でもコナだけだろう。しかも数軒のみ。我々は先頭をきって使用を始めたが追随する農家は少ない。人望のせいだろう。

 果実に粘土の膜を施すと、ザラザラした表面を害虫が嫌がり、果実に侵入するのを防ぐ。どうしようどうしようと害虫が実や葉の表面をウロウロと歩くうちに、カビの胞子を体中に引っ掛けるのを狙う。その他、酵母菌や乳酸菌などの有用微生物群なども混ぜて噴霧している。

 木全体が白くコーティングされるので、直射日光に弱いコーヒーの木を日焼けから守る。木の温度を下げて木の体力を保つので生産量が上がるという実験結果がある。また、私見ではあるが、日光を遮るので、熟成にかかる時間が長くなり、甘みが増すと思う。うちのコーヒーが他のコナコーヒーよりも甘いのはこのおかげだと私は思っている。

昔、NYで働いていた頃、夏に日本に出張した。最終日は大阪。大阪の暑さは尋常ではなかった。35度の猛暑のなか、背広で街を歩き回った。NYのウォール街では毎日がカジュアル。背広にネクタイは既に前世紀の遺物と化しているが、日本ではまだまだ伝統を大切に守っている。そもそも背広にネクタイは胸板の厚い西欧人の民族衣装で、貧相な体格の日本人には似合わないだろう。第一、日本の夏は欧州に比べて殺人的に蒸し暑いので、明らかに場違い。それでも、日本のサラリーマン達はその欧州の民族衣装を大事に守っている。我慢比べか。
大阪の取引先回りが終わり、関西国際空港へ向かう電車の中でカジュアルに着替えて飛行機に乗った。NYの自宅へ着くなりぐったり疲れてベッドに倒れこみ寝た。翌朝トランクを開けてビックリ。ワイシャツが緑色。カビだらけ。汗でビショビショのワイシャツをそのままビニール袋に押し込んで24時間トランクの中に入れて置いたらカビが大繁殖した。

でも、農園で撒いている白カビは良いカビです。好き♡

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2016/05/14   yamagishicoffee