芝生の花
アメリカでは家の前の庭の芝生をきれいに保つのは男の仕事である。一家の主の沽券にかかわる問題とされる。コミュニティーの雰囲気を良くするため、芝をきれいに刈るのは義務でさえある。さらに、きれいな芝はステータスシンボルでもある。私のかつてのボスのカリスマ有名ポートフォリオマネージャーは莫大な財産を持っているにもかかわらず、毎週日曜日に手動の手押し芝刈り機で汗だくになりながら自宅の芝刈りをする。皆からガソリン式の芝刈り機を買えばよいのにと噂されるが、きっと彼にとっては特別な意味のある重要な儀式なのだろう。
うちの庭の芝はセンティピードという種類の芝。センティピードとはムカデの事で、ムカデの様に横に伸びる。さほど縦には伸びないので芝刈りが楽だ。それでも、普段は1~2週間ごとに芝刈りをする。
刈った芝はコーヒー畑に撒く。下の新しい畑は4年目に入ったが、なかなかきれいに芝が生えそろわない。好ましくない芝や雑草が増えて困る。コーヒー畑にも庭と同じ種類の芝を早く育てたいものだ。少しは助けになるかと思い刈った芝を撒くのだが、刈った芝の葉っぱを撒いてもなかなか芝は定着しない。
昨年の夏は猛暑だった。コーヒーは猛暑が苦手。芝は猛暑対策になる。地面の温度が上がるのを防ぐ。また、保水効果もある。さらに豪雨の際に土砂の流出も防ぐ。早くきれいな芝を育てたいものだ。
この数カ月間、Q Graderの試験を受けたり、日本へ行ったりしていたので、庭の芝刈りをさぼっていたら、芝が穂を伸ばし、花が咲き、種ができた。
穂の先に紫色の小さな花が咲く。すると蜜蜂が来て蜜を取る。庭の芝の横には養蜂箱で蜜蜂を飼っているので、割とたくさん来る。
花がやがて実になり種になると、今度は小鳥たちがやってくる。文鳥が多い。文鳥はハワイではJapanese sparrowと呼ばれる。1960年代にインドネシアから持ち込まれたそうだ。今では島のあちらこちらで見られる。
最近は芝刈りの頻度を少なくした。小鳥が来るようになってしばらくしてから芝を刈るようにした。種が充分にできてから、芝刈りすれば、種をコーヒー畑に撒けるので、より効率的にコーヒー畑に芝を生やすことができると期待している。上手くいくと良いのだが。
アメリカではこんなにボウボウになるまで芝刈りをしないと、近所から苦情が出るかもしれない。一家の主としての資質を疑われかねない。ところがうちの庭の芝は外から見えないので、近所の評判を気にする必要はない。逆にミツバチが来たり小鳥が来たりで見ていて楽しい。