農園便り

2019年05月2日

コキ蛙が攻めて来た

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塩野七生氏の「ギリシャ人の物語」と「ローマ人の物語」を読了した。民主主義の原点を探れて興味深い。私の住む住宅地は一区画3エーカーの農地用住宅地。80軒ほどあり、自治会で自治を行う。年に一度の年次総会で、自治会長、役員、運営方針を決める。総会は激しい論戦を経ながらも、住民の合意点を探る。ローマの元老院・民会のようだ。こうした草の根の論戦による合意形成がアメリカの民主制度の下地になっている感じがする。

ここの自治会は住宅地の価格を高く維持するのに熱心。家の外見には様々な規則がある。庭や畑もきれいに保つ義務がある。雑草だらけだと自治会役員から改善命令が来る。

以前、自治会は住宅地の入り口にゲートを付ける活動をした。ゲートを付けて住民以外の通行を制限すれば高級住宅地の仲間入り。住民の中の弁護士3人が中心となり、ゲートを置けば、住宅価格が5万ドルは上がると皆を焚きつけた。住宅地の中央の道路は自治会が所有するが、ハワイ郡が、ある条件を満たせば買い取る契約になっていた。公道となればゲートは置けない。しかし、郡の財政状況から鑑み、その条件の履行は不可能。郡と交渉した結果、買取条項の削除に成功し、晴れてゲートを設置した。

おめでとう!一軒当たり評価額5万ドルアップだ。弁護士3人組は得意満面。しかし、私有道路になると補修は我々の負担。補修費として、一軒当たり4万ドルを負担することになった。評価益5万ドルvs実費4万ドル。弁護士さん、なんでこうなるの?

さて、コキ蛙がハワイ島に大発生している。原産地プエルトリコでは人気の蛙だが、ハワイでは評判が悪い。夜に「コキ!」と大声で鳴いてうるさい。ヒロ方面で大発生したのがコナまで広がってきた。サウスコナから年に数キロずつ北上。数年前にカイルアコナの街を飲み込んだ。3年前にここから数キロ南、2年前には家から聞こえる程の距離まで、昨年はすぐそこまで来た。遂にコナコーヒーベルトでコキがいないのはこの住宅地だけ。まるでハンニバル、いやそれ以上、ローマ帝国末期のゲルマン人侵入のようだ。

遂に自治会が立ち上がった。コキがいるとうるさいので住宅地の価格が下がる。住民全員でコキと闘うことを決め、コキが発生した場合にはその土地の所有者が速やかに駆除する義務を課した。自分で駆除できない場合は業者に頼む。そのコストは全員で負担。おかげで、この住宅地は四方をコキに囲まれても、何とか持ちこたえている。

昨年の夏は雨が多かった。雨が多いとコキは増える。うちのコーヒー畑からも夜中にコキの鳴き声が聞こえた。もし、畑で大発生して駆除不能になれば、近所の住民から文句の嵐となる。それに私だって自治会の戦士だ。

コキ退治に、重曹(ベーキングソーダ)を撒いた。夜しか鳴かないので暗闇の中でそっと近づく。しかし、近づくと鳴き止むので、どのコーヒーの木にいるか見つけるのが難しい。そこで、まず、遠くから奴の鳴き声を録音して、近づいて鳴き止んだら、録音を再生する。すると縄張りに他のコキが近づいたと警戒して鳴きだす。その瞬間に、コーヒーの木を特定して、上から下まで、重曹を撒いて退治した。

実はコキに重曹を撒くのはハワイでは違法。死ぬまでに時間がかかり、蛙が苦しむので、非人道的らしい。一方、クエン酸(レモン汁)が蛙の肌に触れれば即死する。クエン酸を使うのが人道的で合法的な殺し方だそうだ。だが、あいにくクエン酸は手元にないし、ぐずぐずしたら、自治会で槍玉にあげられる。州法より自治会が怖いから重曹を撒いてしまった。蛙さん、ごめんなさい。あなたに投票権はありません。

でも、今年は既に四方をぎっしり囲まれ、四面蛙歌。我々の敗北は時間の問題だ。どうする自治会。ファビウスやスピキオは現れるのか。

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2019/05/02   yamagishicoffee