農園便り

2016年7月

コナコーヒー農園便り 2016年7月号 接ぎ木

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海側の新しい畑は4年目に入った。とかく若い木は、まだ根が未発達のくせに、実を沢山付けようとする。向こう見ずなのは若者の特権だが、若気の至りなどと笑ってはいられない。実の付けすぎで突然死することもある。Overbear die backといい、3~4歳の木によくある問題。加えて昨年夏の猛暑によるストレスだ。2100本の3歳の木のうち、昨年は約120本が死んだ。たいていは木の下の地中に大きな石があり、根がきちんと張れなかったものが多い。また、2100本もあれば、中には成長の悪い木もある。早い時期に植え替えたほうが長い目で得だ。  

今年は接ぎ木をした苗木を買った。この農園では初の試み。コナティピカ(アラビカ種)が上で下の台木の部分はリベリカ種(写真の根元の色の濃い部分)。

コーヒーの品種には主にアラビカ種とロバスタ種がある。コナコーヒーは原種に近い純粋のアラビカ種である。アラビカ種は香味に優れるが、ひ弱で根も弱い。一方、缶コーヒーやインスタントコーヒーの原料として使われるロバスタ種は香味に劣るが、根が強く劣悪な環境でもよく育つ。接ぎ木をする場合、一般的に他の産地では、上はアラビカ種で根はロバスタ種にする。ロバスタの強い根を持ち、香味はアラビカ種にするいいとこどりが狙いだ。

ところが、コナでは台木に、さらに別の品種のリベリカ種を使う。理由は線虫対策。コナの線虫は強烈すぎてロバスタ種でさえ対抗できない。リベリカ種は飲用には不向きだが、背の高い大木になる種類で根がとても強い。

線虫は顕微鏡でないと見えない小さな生物で、コナの土壌に住む。コーヒーの根に付くと根が栄養を吸えずに木が枯れる。土の中の線虫は早くは移動できない。一本の木が被害にあっても2m離れた隣の木まで地中を移動するのに数年かかるので、畑全体が被害にあうのは稀だ。ところが、木の植え替えなどすると、元の木の根に線虫がいれば、畑全体に線虫が拡散する。毎年、春には地面に落ちたコーヒーの実が発芽して、そこらじゅうに生えてくる。これを抜いて他の場所へ植え替えるのは厳禁。線虫の被害が拡散すると、その畑では2度とコーヒーは育たない。だから、苗木は線虫のいない土で育てた信頼のおける業者から買ってくる。中には土を熱い鉄板の上で焼いてから使用する業者もある。

うちの畑には線虫の問題はないので、これまでは接ぎ木を用いていなかった。上から下まで純血のアラビカ種だ。しかし、若木が死んだ場所は地中に大きな溶岩があることが予想される。2012年8月号の農園便りに記したように、つるはしで岩を取り除いても良いが、120本はとても無理。根の強いリベリカ種の接ぎ木を使うことにした。

接ぎ木にすると木の成長が早くて生産量が上がる。農園主としてはうれしい限り。初期コストは高くとも接ぎ木を用いる農園は多い。ところが、ピッカーには評判が悪い。根が強いので、成長が良すぎる。背が高くなって収穫が困難。おまけに手の届くところまで幹をたわませようにも、幹が太くてたわませにくい。実にピッカー泣かせだ。

一般的な農園主でそんなピッカーの泣き言まで気にする人は少ないが、私は彼らと違って、農園主、兼、ピッカーなので、嬉しいやら恐ろしいやら。

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2016/07/03   yamagishicoffee