農園便り

SCAA/CQI認定Qグレーダー試験対策(その6)

Cupping Tests カッピングの実習試験

 

通常は中南米の水洗式マイルド、アジア、アフリカ、非水洗式(ナチュラル)の4セッションが行われる。しかし、今回は生産地ハワイでの開催だったので、授業ではハワイも加え、5セッションが行われた。試験では、受験者の希望も勘案し、水洗式マイルドを除き、アジア、アフリカ、ナチュラル、ハワイの4セッションが行われた。

 

最初の3日間はカッピングの実習を通じ、SCAAのカッピングプロトコールを理解し、カッピングフォームを正しく記入できるよう学ぶ。各セッションごとにカッピングの後に、教官と生徒たちの間で、それぞれのコーヒーに関しての評価、意見を交換する。これを通じて、自分のスコアーが教官や他の生徒とのブレがなくなるようにする。つまり、SCAAの評価基準に自分の評価基準をすり合わせていく作業となる。自分の評価をなるべく客観的な評価に近づけるトレーニングである。

隣同士に並んだコーヒーを比較しながら評価するのではなく、一つ一つを客観的に評価するよう努力する。

80点に届かないコーヒーもカッピングして、その理由を理解する。

80~85点のコーヒーと85~90点のコーヒーの違いを体験する。

致命的な欠点の香味を理解する。

セッションごとに評価基準が必ずしも一致していないことを理解する。水洗式マイルドは水洗式マイルドの評価基準で評価する。たとえば、水洗式マイルドをナチュラルやアフリカの基準で評価するのは意味がない。

 

試験では、教官と受験者全員のスコアーをスプレッドシートに入力し、各項目ごとに、クラスの平均点に対して自分のスコアーが大きく離れていた場合に減点となる。つまり、極端に個性的な評価をしてはいけない。かといって、平均を狙ってすべての項目に7.5を付けるなどの行為も減点・失格の対象である。

 

各セッションで6個のコーヒーが出て、うち2個が重複なので、計5種類のコーヒーが出る。練習では各セッション3種類のコーヒーをカップした。その3種類は本番のテストでも出た。つまり、本番のテストで初めて出る新しいものは各セッション2種類ずつ。

4セッションとも80点に届かないようなものも出た。また、今回の試験の場合は4セッション中、3セッションで決定的な欠点豆の混入したものが一カップずつあった(5x6=30カップ中1つ)。あれだけ明確な欠点だと、それを見つけて正しくFaultとしてフォームに記入しないと、それだけで試験不合格となる。カッピングは追試がない。欠点豆を1回でも見逃すと失格なので細心の注意が必要。

また、見逃しても減点にはならないと思うが、Taintまではいかないまでも、なんだか変だというカップもあった。

私が90点以上の点数をつけるようなコーヒーは出なかった。

コーヒーの品種に関しては全く触れなかった。

 

さて、私は毎日自分のコーヒーしか飲まないので、カッピングの経験はほとんどない。よって、コースに参加する前にはカッピング実習試験が最も不安だった。実際に初日に大いなるショックを受け、前途多難と感じた。しかし、3日間のすり合わせを通じて、次第に点数のつけ方に関しては不安感は払拭した。

 

初日の練習セッションは中南米水洗式マイルドだった。教官が81.5点をつけたコーヒーに私は75.5を付けた。そのコーヒーを口に入れた瞬間、かすかだが発酵臭を感じた。

コーヒーの収穫は最長でも3週間以内に畑を一周して戻ってこないと実は過熟する。通常、コーヒーの産地は収穫期には雨が降らない。ところが、コナの場合は収穫時期の乾期にも雨が数日降り続けることがある。収獲中に雨が続くとコーヒーの実は早く過熟するので、3週間のペースよりもペースを上げる必要がある。しかし、どうしても雨の中だとペースが落ちる。第一、中南米から出稼ぎにきた労働者たちは雨の中では摘まない。それが、中南米のしきたりだ。ましてやアメリカ人が摘むわけがない。日本のJA全中(全国農業組合中央会)のHPを見ても、雨が降ったら農家の仕事はお休みと書いてある。しかし、山岸農園では雨でも歯を食いしばって摘む。もし休んでペースが落ちると過熟した実が発酵を始めてワイナリーのような臭いがしてくる。それだけは避けたい。そうならないように、ずぶ濡れになって体が芯まで冷え切って震えが止まらなくなっても、寒さで指がかじかんでうまく動かなくなっても、コーヒーを摘み続けるのだ。発酵しないよう戦い続けているのだ。だから、コーヒーを飲んだ際に発酵臭が僅かでもすると、私は許せない。それをワイニーなどと呼び、ポジティブに評価することはできない。おそらく、ガタガタ震えながらコーヒーを摘んだ経験のない人には、ネガティブに感じることはないと思う。それほど、かすかな感覚だ。

私が75.5点を付けたコーヒーも私が雨の中で泣きながら摘んでいる時の臭いがした。(実際には雨の時はあまり臭いを感じない。雨の止んだ後に感じる)。このコーヒーは、日本のスペシャリティーコーヒーの店に行くとよく出てくる曲者だ。COEも取っているんですよ、フルーティーでワイニーな逸品ですとかいって店主が喜んで出してくるあの曲者だ。

そもそも、発酵した過熟豆は水に浮くので、ウェットミルできちんとフローターを取り除けば、ほとんどを除去できる。しかし、山岸農園ではウェットミルが最後の頼みの綱となるのは嫌なので、収穫の段階から過熟豆が混入しないように努力している。ましてや、コーヒーカップの中までそれが届くということは、収穫をすり抜け、ウェットミルもすり抜けてきたということだ。やはり、私には受け入れがたい。

あるいは、収穫した後に、すぐに精製せずに何日も畑にほ放っておかれたものかもしれない。ひょっとしたら、最近はやりのドライファーメンテーションという私には到底意味不明の代物かもしれない。

その日、私は教官に噛み付いた。山岸農園がこんなコーヒーを作ったら、私はコーヒー作りを辞めるとまで主張し、教室中の爆笑を買った。しかし、教官はこれは好ましいコーヒーで発酵臭はしないと主張し、議論は全くかみ合わなかった。実際に教官に対して、「このかすかに感じる香り」とコーヒーを指さしても、「どの香り?」という答えしか返ってこない。言葉では説明できない。初日から私はクラスの問題児となった。前途多難だ。

一般に収穫時や収穫後の精製の過程で発酵して酢酸が生成されても、ごく微量であれば、好ましい酸味を与え、大量になると不快な発酵臭とされる。私は過度に気にしすぎなのかもしれない。あるいは、私が発酵臭と感じ、教官が好ましいとしている香りは、実際は発酵臭でも何でもない他の物かもしれない。ただ、私はその臭いが少しでもすると不快になる。

その日は暗澹たる気分でホテルに帰ったが、かえって、これで吹っ切れた。この一週間は生産者としてのこだわり、良心、美学は捨て、消費者の視点にすり寄る覚悟ができた。そもそも、それが目的でこのコースに参加しているのだ。とりあえず今週は、あのコーヒーをフルーティーでワイニーと呼ぶ覚悟ができた瞬間だった。

その覚悟ができると、2日目以降は、徐々に教官の評価にすり寄ることができるようになった。自分のカッピングの点数が、世間とかけ離れない配点具合を習得できた。

そうしてみると、80というのは実際にこれまで自分が思っていたよりもはるかにハードルの低いものだった。これまで、コーヒーショップに行ったときに、「こんなコーヒー出しやがって」と勝手に憤慨していたが、ああいうのもスペシャルティーだったんですね。勝手に憤慨してごめんなさい。

 

例の発酵臭の感覚はナチュラルやパルプトナチュラルのコーヒーにもよくある。だから、私はナチュラルやパルプトナチュラルが苦手だ。

そもそも、山岸コーヒーはとてもシンプルなコーヒーだ。きれいに育てて、きれいに収穫する。悪いことをなるべく排除して作る。だから、どちらかというと引き算だ。あくを丁寧に取り続ける日本料理のようなものだ。昆布だしの美学だ。一方、ナチュラルやパルプトナチュラルは、あくにあくを重ねていくフランス料理のようなものだ。私にとっては、そういうコーヒーは情報量が多すぎるし、ボラティリティーが高すぎて、脳がとても混乱する。SCAAはそれをComplex(複雑)といって、ポジティブに評価するが、私はどうしても頭が混乱してしまう。

よって、ナチュラルのセッションは、とても苦手だった。アジアのセッションでも、パルプトナチュラルではないかと思われるコーヒーが複数登場し苦戦した。ただ、ハワイのセッションで出てきたナチュラルのコーヒーには思いっきり低い点数を付けて溜飲を下げた。だって、本当にひどかったんだもん。悪いものは悪いとはっきりと主張するのも大切だ。実際にハワイのセッションでは私は満点に近い点数を取ったので、教官も含め他の受験者も私と同じような評価を下したと思われる。

 

初日からSCAA方式に違和感を感じた私であるが、どうにかカッピングの点数をSCAAの基準に近づけることができたが、どうしてもSCAAの基準に納得がいかないものが残った。はっきり言って意味不明だし、実に不愉快な基準だ。

SCAAはカッピングテーブルの高さを42インチから46インチと定めている。今回の会場のカッピングテーブルはその上限の46インチだった。これだと2列目のカップの臭いを嗅ごうにも、私には届かない。背伸びのし過ぎでふくらはぎが痛い。子供用の踏み台を持ってきてもらった。

SCAAのこういうアメリカ的な上から目線の態度はぜひ改めてもらいたいものだ。えっ?私の目の位置が低すぎるって?んん~。。。。
 

2016/07/11   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
コナ・ルビーはクリーンな味わいのコーヒーです。
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