Triangulation Tests (中南米、アジア、アフリカ、非水洗式の4セッション)
3つの中から一つだけ異なるコーヒーをカッピングにより識別する試験
Dry fragrance, Wet aroma, Flavor等の属性の違いからコーヒーを区別する能力を試す。
1組3カップで、各セッションとも6組でる。
6組中5組が正解していればそのセッションは合格。
カッピングの実習試験と同様に通常は中南米の水洗式マイルド、アジア、アフリカ、非水洗式(ナチュラル)の4セッションが行われる。しかし、今回は生産地ハワイでの開催だったので、練習ではハワイも加え、5セッションが行われた。試験では、受験者の希望も勘案し、水洗式マイルドを除き、アジア、アフリカ、ナチュラル、ハワイの4セッションが行われた。
カッピングの実習試験の直後に行われ、カッピングに用いられたのと同じコーヒーが使われる。ただし、すべてが使われるわけではない。カッピングに登場したが、ここでは使われないコーヒーもある。
また、赤いライトの下で行われるので、色で判別することはできない。
Triangulation Testsは私の最も苦手な試験だった。これに先立つカッピング実習試験ではそれぞれのコーヒーの違いを感じ取ることは比較的容易だが、コーヒーを3つ並べて、次々と飲み比べると混乱して良く判らなくなった。経験不足が原因と思われる。
お湯を注ぐ前のDry fragranceやお湯を注いだ後のWet aromaを確認する際には、時折自分の肩に鼻を当て体臭を嗅いで嗅覚をリセットすると判りやすくなる。
嗅覚と同じで味覚も何度も繰り返すとドンドン鈍感になっていく。もし、Dry fragranceやWet aromaで違いが明確で、それに自信があれば、その組は口にしないのも良いかもしれない。確認のために口にしても1度にとどめる。舌が疲れてくる前に手早く終えるのがコツ。私はこれができずに最後まで粘ったので、水で何度も口をすすぎ、リセットしながら行った。
私はハワイは6組全問正解、アフリカは5組正解で合格。アジアは4組しか正解できず追試となった。一番苦手なナチュラルは試験日程の最後の最後で、その時点で、もう舌が疲れて何も感じなくなっていた。もう、破れかぶれになって、Dry fragranceとWet aromaの臭いだけで勝負したらなんと全問正解だった。臭いだけで提出する自信はなかったので、時間いっぱいまで飲んでみたが、舌はもう何も判別できなくなっていた。
この試験に先立つカッピング実習試験で各コーヒーの特徴を記憶しておくと多少は参考になる。
特に酸の特徴は重要。口に吸いこんだ瞬間に判別が付かなければ、数秒口の中に転がした感覚で判別する。それでもだめなら、吐き出した後の余韻で判別する。どんな香りが残るか、どんなキャラメル感がのこるか、口の中が乾くか、唾液が出るかなどに集中する。
Green Coffee Grading 生豆の欠陥豆を識別する試験
3回行い2回正解ならば合格。
全ての試験の中で最も簡単。
ノートや教科書を見ながら行えるので楽。
ただし、時間制限が20分。時間管理を怠ると完成できない。
10分を過ぎたらとりあえず答案を書き、時間が余ったら、欠点豆探しを再開して追加で記入した。
私の場合は2袋続けて正解したので3度目は行わなかった。
最初の袋(350g)は色が黄色っぽいが欠点豆が少なく、Specialty Coffeeの要件を満たしているもの。
次の袋は色はきれいな緑色。サイズも19の大きくきれいなもの。明らかにコナコーヒーだ。
ところが、パルピングマシーンでカットされてしまったものが15個以上とCBBによる虫食いの豆が100個以上入っていて、Specialty Coffeeとはみなされないものだった。
この試験だけは、私が普段から仕事でやっていることなので、誰よりも素早くできた。
CBBの虫食い豆は50個以上を見つければ、その時点でSpecialty Coffeeとはならないので十分だが、余裕をかまして100個以上を見つけた。
これと同時に焙煎豆の中からクエーカーを見つける試験もある。とても簡単。
General Coffee Knowledge筆記試験
4択問題が100問出題される。
試験に出る内容は授業中に教官が説明したことが多いので、ノートを取っておくか、授業中にすべて理解し記憶するかしておくと良い。
カッピングプロトコールは完璧に理解しておく必要がある。
難しい化学式を用いたような問題は出ない。
3日間のストレスフルな講義や試験の練習に続いて3日間のもっとストレスフルな試験の長丁場なので、体調管理が最重要。
いかにリラックスして、カップに向かった瞬間に集中力を発揮できるかが勝負だ。
風邪をひいてはいけない。
アルコールも控える。
私は毎日夕方はホテルのジムで1時間運動して、コーヒーのことを頭から追い出すことに専念した。それでも、毎日3~4時間ぐらいしか眠ることができなかった。カッピングの夢にうなされ、一度目が覚めるともう眠りに戻ることができない。コーヒー以外の内容で眠くなる本は必携。吉川栄治の三國志を持って行った。
極めつけは試験初日の夜。ストレスは限界に達している。長い一日でヘトヘトだが、それでも試験は半分も終わっていない。
夕方ジムで1時間汗をかき、サウナに入りさらに汗をかき、カッピングのことを頭から追い出すことに専念した。ジムの後にはマッサージに行った。一日をリラックスして終わらせるには完璧なシナリオだ。うつ伏せになりながらマッサージを受けて、ウトウトし始めたときに、突然マッサージ師が
”Do you like cupping? (カッピングは好きですか)“と訊いてきた。
“What!???”せっかくカッピングのことを忘れようとしているのにこの人は何を言い出すのだ。続けざまに、
“Did you do cupping?(カッピングしたのですか)”と訊いてきた。
当惑しながらも、“ええ、何度もしましたけど、どうしてわかるのですか?”と問い返すと、“だって背中にカッピングの跡があるから。”
ようやく事態が飲み込めた。先週、この地獄の特訓コースに出かける直前に体調を整えるために鍼灸治療に行った。鍼、マッサージの他に吸い玉(カッピング)をしてもらったのだ。その丸い跡が背中に残っていたらしい。
“Does cupping work for you?”(カッピングは効きますか?)
“No, it did NOT work for me today at all!!!”(今日のカッピングは全然ダメでした)
“Oh, why?”(えっ、どういうこと?)
“Never mind. I am just talking to myself…”(なんでもありません、独り言です。)
という会話が続いた。
その夜もあまりよく眠れなかった。
というよりも、コース終了から一週間以上が経過するが、いまだに毎晩カッピングの夢にうなされる。
眠れぬ時の三國志はずいぶん読み進み、諸葛孔明が泣いて馬謖を切った。
以上