農園便り

2021年2月1日

コーヒーさび病とサコスポラ菌

2020年10月、ハワイでコーヒーさび病が発見された。その後、多くの場所で確認されたので、コナでもすでに広がっているようだ。嗚呼、遂に来てしまった。

さび病はCBB(Coffee Berry Borer)とならんでコーヒー最大の病害。コーヒーの葉に付く菌類で、感染が広がるとコーヒーの木は葉をなくして光合成ができずに枯れる。

コナコーヒー農家は専門家とさび病対策の検討を始めた。栄養管理(栄養不足だと耐性が落ちる)、日陰樹の管理(適度な日光量)、剪定(風通し、感染した葉の除去)、雑草処理(風通し、栄養分の競争を回避)、農薬噴霧、拡散防止(服、農具、トラック、袋等の除菌、訪問客制限)、耐性品種への植え替え、などがあげられる。

最も重要なのは初期対応。さび病やCBBは指数関数的に増える。新型コロナでおなじみの指数関数的増加との闘いは、感染爆発前に抑え込むことが最重要。

日本では新型コロナの実行再生産数が1を超えたと大騒ぎだが、CBBは生後5週間で卵を50~100個産む。全部が生き残るわけではないが、私の感覚では実効再生産数は5~10。CBBの抑え込みは難しい。恐ろしいことに、さび病は桁違い。1つの胞子が約2カ月で30万個の胞子を作る。これが、2乗、3乗と指数関数的に増える。恐るべし。

コナ特有の問題は農薬噴霧。さび病は被害が5%を超えると拡大カーブが急すぎて、Systemic農薬でないと増加を止められない。Systemic農薬とは、根や葉から植物体内に吸収されて、体内から病害菌を殺すもの。しかし、コナ(米国)はコーヒー生産地で唯一の先進国。農薬の規制が厳しい。コーヒーにSystemic農薬は認可されていない。緊急許可を請願中だ。とりあえずは、銅などの抗菌効果のあるものを噴霧して、葉をコーティングすることで抗菌予防する。CBB対策でコナが苦戦しているのも、他の産地で一般的な農薬をコナでは使えないため。

畑がさび病に感染すれば、頻繁に農薬を撒かなければならない。それも菌が耐性を持たないように、毎回違う農薬を使う。大変な負荷で農家たちは戦々恐々だ。ところが、多くの農家が気が付いていないが、私の意見では、コナではCercospora菌(写真)の流行で、既に抗菌剤を撒かないとやっていけない状況にある。

2019年8月に36年間続いたキラウェア火山の噴火が止んだ。空気が澄んだ。因果関係は不明だが、コナの雨量が増えた。コーヒーの木に良いと喜んでいたら、Cercospora菌が大発生した。木が弱って、コナ全体の収穫量が減った。中には8割減った農園もある。私が利用する精製所によると、昨シーズンよりも収量が増えたのはうちの農園だけだ。

一昨年、うちの畑の一部が何かの菌類に感染した。雨の日に「雨にも負けず、僕って頑張り屋」と頑張る自分に酔い、濡れた手袋でベタベタ摘み続けたら、翌月に爆発的に増えた。トホホ。収穫期にも雨の降るコナでは菌類は厄介。何の菌類かを、研究所や周りの農園に尋ねても要領を得なかった。とりあえず、銅の抗菌剤(水に溶けない有機農薬で、コーヒー体内には吸収されない)を撒いたら、拡大は止まり助かった。それをCercospora菌と知ったのは昨年の収穫が始まってから。ほとんどの農園は何も対応できなかった。

さび病はコーヒーの葉にしか感染しないが、Cercospora菌はコーヒーの木の全身に感染するし、土の中でも生きる。畑が一度感染すると、根絶するのは難しいらしい。さらに、Anthranconse菌(炭疽菌)も増えているらしい。その上、いよいよ病害の横綱さび病の上陸。いやはや、指数関数との闘いは、きりがない。

2020年12月に再び火山の噴火が始まった。因果関係は不明だが雨が減った。雨が減れば菌類の活動も弱まる。さてさてどうなることやら。 

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2021/02/01   yamagishicoffee