ワクチン接種終了 株高
ワクチン接種が済んだので外出自粛を解き、普段は観光客で賑わう通りAli’i Driveへ1年ぶりに行った。約半分の店が廃業している。痛ましい。だが、観光客が戻ってきたので町の景気は上向くだろう。寿司屋へ行ったら、1時間待ち。観光客に加え、地元の人々が繰り出している。話題のpent-up demand(これまで我慢していた人の消費)か。ワクチン普及で米国の新規感染者数は低下し、1日に5万人程度、日本の10倍位までに減ってきた。まずはひと安心。緊急事態を脱し、経済が再開し始めた。
米国株式市場は高値更新。日本ではバブル崩壊懸念が報じられるが、どうだろう。確かに、各国の財政出動と中央銀行の資金供給で、世界的な金余りが株や不動産価格を押し上げて不健全。筋が悪い。しかし、過去のバブルは政府が引き締め策を採っても、止まらないほど過熱した後に破裂したのに対し、今回は政府と中央銀行が積極的に緩和して、むしろ煽っている段階。その上、実体経済が活発化している。
今にして思えば、米国の株式市場は昨年の春の段階から、今の状況、つまり、急スピードでワクチン開発が成功して経済活動が再開するのを既に知っていたのだろう。改めて株価の秀抜さに恐れ入る。株価ほど、経済を先読みするものはない。個々のファンドマネージャーは己の愚かしさに日々悶絶を繰り返すが、多くの人々の思惑が市場で揉みあう間に、一人の人間では消化不可能な量の情報がS&P500インデックスの一つの価格に織り込まれる。だから株価は人知を超えた存在で、市場を出し抜くのはプロでも難しい。
私は、昨年2月に保有株をほとんど売却した。その直後に株価は大暴落。自分を天才だと思った。おまけに、暴落中、「長期投資だから売り買いするのは嫌だ」という妻をアホ呼ばわりして、今からでも遅くはないと、彼女の保有株まで売った。なにせ、私は天才だ。
ところが、株価は急速にV字回復。「上がってきたよ、買い戻さないの?」と怪しむ妻を、「相場とは必ず二番底を付けに行くもの」とプロっぽく煙に巻いた。しかし、昨秋にワクチンが承認されるや、ほぼ一直線に上昇。妻は怒ったのなんの。おまけに私には前科がある。昔、妻から頼まれ、アマゾン何とかいう会社の株を買った。なんでブラジルの会社なんぞに興味があるのか首を傾げたが、あっという間に株価が倍になったから勝手に売ってしまった過去がある。あのまま持っていれば今頃ハワイで豪邸が買える。
市場を離れて15年。プロっぽい表現で煙に巻く術は健在でも、まともな投資判断などできるわけがない。昨年の春夏の農閑期に、コロナの悲観的なニュースばかり流すCNNや日本語放送を見過ぎたのもまずかった。こんなに早くワクチンが普及し効果がでるとは思ってもいなかった。収穫最盛期の晩秋、ニュースの雑音を遮断し、静かにコーヒーを摘みながら心を整理すると、自分の間違いを認めることができ、買いに転じる決心がついた。結局、2月に売った値段よりも高い値段で、泣きながら買う羽目になった。
さて、Stock pickingは難しいが、Coffee pickingも難しい。ピッカーがきれいに摘むことが重要。ある年、やっと良い人材を見つけた。私の目標を理解し摘んでくれた。もう、彼を逃したら替わりはいない。労賃をふんだんに払い、彼のために家まで買ってタダで貸した。すると、彼はそれで貯めたお金でメキシコに畑を買って、さっさと帰国してしまった。えらい損をした。思えば、赤字続きだった。規模を縮小して、労働者を雇わずにこなした最後の数年間こそ、黒字になったが、累積赤字解消には至らない。
こんな赤字の道楽をやってこれたのは、それなりに投資収益があったから。しかし、急落後のこれほどの大相場を逃し、もはや投資を生業とする能力が全くないことがハッキリした。もう、コーヒーも投資も潮時かな。