キラウェアの噴火停止で、コナに青い空と海が戻った
キラウェア火山の噴火が止った。コナに澄んだ空気と素晴らしい景色が戻ってきた。
空と海が青い。コーヒー畑から見下ろすと、少し丸みを帯びた水平線がクッキリと海と空を分ける。ぽっかりと空に浮んだ雲が白くまぶしい。水平線に落ちる夕陽を眺め、夜には天の川がきらめく。「これが本当のコナだよね」と皆が言う。
キラウェア火山は1983年から噴火が続いていた。それでもコナの空気は悪くはなかった。NYから休暇でコナに来るたびに、青い空と海に魅了された。ところが、2008年にコナに引っ越した翌週に火口が2つに増えた。コナとは島の反対側なので直接の影響はないが、火山ガスが流れてきて、憧れの青い空と海が霞んだ。せっかく引っ越して来たのに、約束が違うじゃん。
今年5月に突然キラウェア火山山麓の住宅地から溶岩が噴き出た。第3の火口だ。火山ガスで景色は最悪。白くモヤモヤして海が見えない。気分もモヤモヤ。
噴火の模様は世界中に報道された。島の端っこの出来事なのに、まるで、ハワイ島全体が危機的状況のような報道に観光客が激減。観光業は大打撃。7月31日に観光ツアー最大手の会社が廃業するに至った。皮肉にも、その2日後に噴火は止まった。以来、空気が澄んで、景色が素晴らしい。このまま本格的に火山が休止するのを望むばかりだ。噴火は止まっても、メディアは報道してくれない。こんなに美しいコナが戻ってきたのに。
専門家に伺ったところ、今回の5月の噴火は地中深くからのマグマの圧力が高まった訳ではなく、地表近くに溜まっていた溶岩の出口が増えただけ。しかも、すごい勢いで大量の溶岩を流出させたため、火山内部の圧力が急低下した。火山活動は予測不能なので、どの専門家も断定的な発言はしないが、オフレコでは、何十年分の溶岩を噴出したので、火山内部の圧力が戻るには時間がかかる。20~30年は噴火しない可能性は十分にあるそうだ。話しぶりからすると、それがメインシナリオに聞こえて来た。
大気中に火山ガスがないので、日差しが強い。ビーチは以前より暑い。だが、暑さがなんだ。木陰に入れば、ハワイの風が爽やか。一方、標高の高いコーヒー畑でも、朝は以前よりも急激に気温が上がる。ところが、海岸の強い日差しで水蒸気が発生し、湿った空気がフアラライ山麓に上昇気流を生む。コーヒー畑地帯は昼前には雲に覆われるので28度は超えない。午後になると雨が降る。まさにコーヒーには理想的な気候だ。
ハワイ大学によると、1983年の噴火以来、コナの雨量は減ったそうだ。コーヒーベルトのちょうど中間に位置する研究所で測定した雨量では1983年の噴火前の年間平均雨量は68インチ(1752mm)だったが、噴火後は49インチに減少。今回の噴火停止で、もし今後、恒常的に夏の雨量が増えてくれればコーヒーには朗報だ。
コナは山麓のコーヒー畑とビーチの高級リゾートが共存するユニークな町。休暇シーズンには富豪たちがコナの別荘へやってくる。飛行場にはプライベートジェットが並ぶ。一方、コーヒー農家にはコナの田舎の雰囲気を守りたい人が多い。’Keep the country country’(田舎を田舎のままに)と標語を掲げる。山麓にコーヒー畑が連なる光景は素晴らしいが、コナの経済的発展の原動力は高級リゾートの開発と移住者による人口増加。開発なしにはコナの住民の生活は成り立たない。田舎と開発が時には対立、時には共存する。
このまま火山が停止すれば、米本土からの移住者が増え、コナの人口が爆発的に増える予感がする。いや、確信する。なにせこの気候。ここはパラダイス。今後、コナがどう変わっていくか楽しみ。東京からの直通便もある。