私たちは欠陥豆を排除します。
小池百合子氏の「排除します」発言が話題になった。そんな言葉尻の是非よりも、日本の「国難」は金融・財政政策が共に破綻寸前という現状にある。なのに破綻回避の政策が争点にならないのは不思議な国だ。国が破綻したら国民は塗炭の苦しみ。福祉も医療も年金も教育もストップ。おまけに、誰もコーヒーなんか買わなくなるから私は困る。
さて、コーヒーの生産では「排除」はとても重要。高品質のコーヒーを作るには、様々な段階で好ましくない豆を取り除く。コーヒーは苦いという通念があるが、実は健康なコーヒー豆は苦くない。欠陥豆を丁寧に排除すると、苦味などの雑味がなくなる。もちろん、深煎りすると苦味はでるが、ミディアム程度の焙煎で苦味が出るのは排除が足りない。
私どもの農園では、収穫の際、あるいはそれ以前の段階から排除を繰り返す。まず、前年の収穫が終わると、枝に残った摘み残しの実を全て取り去る。摘み残すと、実の中のCBBという害虫が翌年に繰り越されるので、畑からCBBを住処ごと「排除します」。
春に新たな実が成長してくると、畑の全ての実を確認してCBBの虫食いになった実を「排除します」。CBBは放っておくと級数的に増える。早い段階で駆除して被害の拡大を食い止める。この作業は春から収穫シーズンまで続けられる。
収穫期は収穫の直前に、全ての木を見て回り、過熟して乾燥した実や熟さずに腐った豆などを取り除く。収穫の担い手のピッカーたちが、効率的に摘めるように、好ましくない実はあらかじめ「排除します」。
収獲中にはピッカー達の収穫用バスケットの横にジップロックの袋を取り付ける。バスケットの中には完熟した実だけが入るようにして、過熟実、腐敗実、乾燥実、未熟実などはジップロックへ入れて「排除します」。
ピッカーが摘んできた実は一か所に集めらる。写真のように、それを私がすべて確認して、好ましくない実は「排除します」。
隣の畑のJoeを見かけると、手を振って大声で挨拶、「ハイ ジョー!」します。
収獲した実は、夕方に精製所(Wet mill)へ持っていく。まず、水の中を通す。過熟して乾燥した実や、腐敗した実や、成熟不良の実は水に浮くので「排除します」。
沈んだ実は皮むき機に送られる。完熟した実は柔らかくて簡単に皮が剥けて、中のパーチメントを取り出すことができる。実が固く剥けないものは「排除します」。
皮が剥けたパーチメントは発酵槽で水に漬ける。虫食い、腐敗豆、生育不良豆などは浮いてくる。ボートパドルで何度もかき回し、浮いたパーチメントは「排除します」。
収穫シーズンが終わると、精製所(Dry mill)で、パーチメントの皮とシルバースキンを取り除き、生豆(グリーン)を取り出す。生豆は機械でサイズ分けする。サイズの大小による品質の優劣はないが、焙煎する際にむら焼きを避けるためにサイズをそろえる。この際、極端に大きい豆と小さい豆は「排除します」。
次に比重選別機で、中が空洞の貝殻豆や生育不良で比重が軽い物などは「排除します」。
さらに、私どもの農園は虫食い率が充分低いので採用していないが、農園によっては、日本のコメ用の色選別機を改良した機械で虫食いなどで変色した豆を「排除します」。
上述の精製所での様々な排除は、他の農園でも一般的に行われているが、前半の畑の中での排除は、私ども独自の作業。精製所のみならず、畑でも排除を繰り返すことによって、苦味、えぐみ、渋みなどの色々な雑味を「排除します」。
「排除します」。嗚呼、なんと美しい言葉。