農園便り

2016年03月

コナコーヒー農園便り 2016年3月号

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          Source: Streetinsider.com

 

コーヒー農園での労働者の確保が難しくなっている。
昨年は私と妻と永住権を持つメキシコ人の3人で収穫した。3人では手が回らない場合に人を雇うが、これが難しい。コーヒー摘みは重労働なので、アメリカ人はやりたがらない。農園主でさえ、我々のように自分で摘む人は稀だ。収穫の繁忙期の9月から12月に米国本土の農場などで働く人々が来てコーヒーを摘む。メキシコなど中米出身者が多い。中には不法移民も混ざっているらしい。
ある調査によると、全米の農業労働者の40%が不法移民。共和党大統領候補のトランプ氏の主張どおり不法移民の取締りを一層強化すると、米国の農業は立ち行かない。コナの農家も困るだろう。不法移民は米国人の雇用を奪うとの主張があるが、米国人がやりたがらない仕事をしているのも事実。牛を解体する人がいないとハンバーグやステーキは食べられないし、皿洗いがいないと外食もできないし、第一、コナコーヒーが飲めない。
加えて、最近のハワイでは不動産開発ブーム。ホノルルは空前のコンドミニアム建設ラッシュ。ハワイ島も負けていない。リゾート開発や別荘建設で労働者が不足。私の所属するゴルフ場は、クラブハウスを建設中だが、労働者不足で工期に9ヶ月もの遅れが出ている。建設業者は高い賃金で人材確保に努める。すると、コーヒー農園から建設現場に人が流れ、農園では益々人手が不足する。彼らを建設現場から取り返そうにも、時給30ドルを要求されては、こちらとしてはお手上げだ。
さて、米国の中央銀行のFRB(連邦準備制度理事会)は昨年末に2008年来のゼロ金利を解除し利上げした。ところが、年初からの株の急落で市場関係者には年内の更なる利上げはないと予想する向きがある。ハワイでこんなに人手不足で賃金も上昇しているのに。
確かに、私がウォール街でポートフォリオマネージャーだった頃、株が急落するたびに、グリーンスパン・プットやバーナンキ・プットを祈った。プットとは、相場が急落した際にFRB議長が市場に救済の手を差し伸べることで、相場下落時に損失を限定するプット・オプションになぞらえた業界用語。実際にグリーンスパン議長やバーナンキ議長は市場に優しく、たとえ金利を下げなくとも、市場に配慮した発言があると市場は安心を取り戻す。損失が膨らんだ時の私には神様のような存在だった。さらにその前のボルカー議長はすごい長身で、大きなパーティーで会場のどこからでも人混みの中にそのとがった赤い禿頭がとび抜けて見える方で、なんかウルトラマンに出てくる怪獣レッドキングみたいで怖い印象だったが、それ以降の3人の議長は、とても市場に優しい。
企業収益は株主と従業員に分配される。景気回復初期は過剰設備や余剰人員があるので、人を雇わなくとも増産できる。増益分は株主に向かい株が上がる。景気回復が進むと増産には増員が必要で人を雇い賃金が上昇する。従業員の取り分が増え株価上昇は緩まる。現在の米国は失業率が下限に達し、全国的にも賃金上昇の兆しを見せている。従来ならインフレが起きないよう利上の局面だが、株が急落すると、また、イェレン議長にもプットを期待するのは、どうせ無茶な投資をしてもFRBが助けてくれる雰囲気を招き望ましくない。株価を決めるのは企業の収益力であり、株価は中央銀行の政策目標や中間目標ではない。ましてや、あわててマイナス金利にした日銀じゃあるまいし。
とはいえ、投資家としての私は株式市場が好調である事に越したことはない。ゴルファーの私はクラブハウスが早く完成してほしい。でも、コーヒー農家の私はコナの労働者の賃金が下がるとありがたい。

(写真は歴代のFRB議長と身長。左からボルカー201cm、グリーンスパン180cm、バーナンキ173cm、イェレン152cm。議長の身長に合わせて、アメリカの金利は下がり続けた。)

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2016/03/01   yamagishicoffee