ハワイ島でデング熱が流行している。先日のデング熱に関するタウンホールミーティングがコナで開かれた。
ホノルルから、衛生局の専門家たちが来た。まるで雰囲気が違う。衣服もそうなんだが、なんか雰囲気が都会っぽくて、コナの人とはまるで違って見える。ハワイ訛りはないし。われわれ地元の人間ときたら、田舎丸出しでのんびりしている。第一、市長が一番訛ってる。
そんな中で、ヒッピーの人で、「最初にデング熱を持ち込んだ犯人は誰だ? どうしてまだ特定できないんだ」と、さかんに衛生局のスタッフを責立てる人物が現れた。犯人を捜して何の役に立つのかさっぱりわからないが、非難する相手を見つけることに情熱を傾ける人が、あの年代のあのタイプの人にとても多い。コーヒー農家の集会でも、彼らが発言を始めると非難合戦で収集がつかない。
また、別のヒッピーは「発病者をちゃんと隔離して、かぎ掛けて出てこれないようにしろ。私が罹ったら困るんだから!」と絶叫している。「発症者はとても苦しいので、彼らが町に出歩くことはありえない」と、専門家が説明しても、まったく収まらない。
私なんか、以前にデング熱を発病した際には、熱と全身の痛みとだるさで、ベッドから出られなかった。5メートル先のトイレに行くのも難儀だった。絶対に家の外には出かけられない。病院でもタイロノールを飲んで点滴を打ち続け、温めた毛布を7枚もかけても、寒さにガタガタ震えるばかり。デング熱には治療法がなく、体力をつけ、体がそれと戦うしかない。
また、このミーティングを待ってましたとばかり、自分の製品を売り込もうとする人が現れ、長々と演説を続ける。小さなコースターぐらいの薄っぺらい磁石を二枚持ち出し、これを頭の両端につけると、体の中からデング熱のウィルスが逃げていくと力説する女性。また、このユウカリの木から抽出したエキスを飲むとデング熱が治ると売り込みをかける男性など。
同席していた医者や専門家たちは目をグルグルさせ、お互いを見詰め合い、笑いをこらえ、いつまでも続く彼らの演説を止たが、面白いのでもっと続けてほしかった。デング熱がこれまで存在せず、その知識の蓄積のないこの小さな村で、発生後たった数週間で、それだけの商売を考え付くというのは、なかなかたくましい。ガマの油売りくらいの芸があれば、もっとよかったのに。
デング熱患者の数は級数的に増えている。一人が二人に、二人が四人に、四人が八人に、八人が十と六人に、、、さあーて、お立会い!