農園便り

コナコーヒー農園便り 2013年5月号

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 コーヒーの収穫が終わると木を剪定する。コナコーヒーはアラビカ種のティピカという種類。ティピカは放っておくと10mもの高さに成長する。昔の日系移民は梯子を使って実を摘んだそうだ。不安定な梯子の上での作業は危険で効率が悪い。おまけに樹勢は弱くなり、実も小さくなる。木の健康を保ちながら、収穫の効率性を高める為に、現在では剪定を行い、高さは3mを越えないようにする。コーヒーの幹は柔軟なので3m程度でも逆U字型にたわませて豆を採ることができる。

 剪定には様々な方法があるが、私の畑では全体の3分の1の木を、膝の高さに切る。コーヒーは列になって植えてあるから、ちょうど、3列に1列の割合で、その列を全て剪定する。翌年は隣の列、翌々年は、さらに隣の列を剪定し、3年で一巡する。
 
 コーヒーの木には数本の縦に伸びる幹と、そこから横に伸びる枝がある。コーヒーの実は横枝に生る。剪定すると、1ヶ月で、残った株から縦に伸びる幹の芽が10〜20本出てくる。5月頃、芽が30センチ程に伸びたら5〜6本に間引く。7月頃、60センチ程になったところで、さらに3〜4本に絞る。どれも頑張って成長しているので残してやりたいが、心を鬼にして3〜4本に絞る。将来どの幹と枝がどの空間に伸びていくかを想像しながら、最適の組み合わせを選ぶ。収穫量を優先するならば4本、大きな豆を育てるのを優先するならば3本にする。ここを欲張って5本も6本も残すと、枝が混み合う。日当たりと風通しが悪く、実は全体として小ぶりになる。収穫作業も困難だ。

 それぞれの幹から横枝が伸び、1年後の春に花が咲き、その8ヵ月後に収穫となる。剪定した木は1年間、実をつけずに枝と葉と根の成長に栄養を使うので、体力が回復する。剪定して2年後に5キロ程度の実を付け、3年後は20キロほど収穫できる。20キロ(コーヒー300杯分)も実を付けた木は、疲れて樹勢が弱るので、収穫後に剪定となる。写真の手前の木が今年の3月に剪定したもの。奥の右が昨年3月、奥の左が一昨年3月に剪定したものである。

 剪定する高さも重要。5年前、コーヒー栽培を始めたばかりの頃、メキシコ人のイケメン、フェルナンドが私の先生だった。初めて剪定をする際に、膝の高さで剪定しろと教わった。低すぎると、低いところから新芽が出てくるので、下のほうの横枝が地面に接する。すると、雑草の処理が難儀となる。地面近くに実が生るため、収穫もひざまづいて膝が痛い。さらに、木の病気の原因になる。地面から蟻が這い上がってきてアブラムシが発生する。蟻とアブラムシは共生関係にあり、アブラムシが蟻に蜜を提供する代わりに、蟻がアブラムシを外敵から保護する。アブラムシが発生すると、黒かびが、枝、葉、実に発生し、木を弱らせる。さらに、人間だって蟻に噛まれたら痛いし、ファイアーアントという蟻に目を噛まれると失明の危険がある。よって、横枝は地面に触れないほうが望ましい。逆に、剪定が高すぎると、木全体が無駄に高くなる。実が高いところにばかり生り、これまた収穫が困難となる。だから、膝の高さがちょうど良い。

 ここまでをフェルナンドから教わり、膝の高さで切った。翌日、フェルナンドが来てびっくりして曰く、「膝の高さで切れと言ったのに、低すぎ!」私はすかさず、「だから、膝の高さでしょ」と膝をあてがって反論。すると、メキシコ人でもなるんだ、目がテンに。それを見ていた妻が「あなたの膝はフェルナンドのすね。ももの高さで剪定したら。ハハハハハー」ときた。それはあんまりだろう、いくら彼が若くて、すらっとしたイケメンだからって、そんな言い方。でも、ごもっとも。

 

2013/05/01   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
コナ・ルビーはクリーンな味わいのコーヒーです。
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