農園便り

コナコーヒー農園便り 2013年7月号

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株式市場が急落するたびに、テレビ・新聞等はヘッジファンドが売りを仕掛けたとワンパターンの解説をする。あれには閉口する。「今、売ってますよー」と言いふらしながら株を売る間抜けなヘッジファンドはないので、どこからそんな情報を仕入れてくるのか不思議だ。ヘッジファンドは情報をあまり公表しないので、彼らの仕業ということにしておけば、誰も検証できない。相場を解説する際に便利なのだろう。

ヘッジファンド業界にいた頃、私の部署では、先物市場に投資するファンドを運用していた。為替・株・債権を始め、商品相場にも投資し、小額だがコーヒー先物市場のポジションもあった。商品相場のトレーダーがコーヒー相場の話をする際に、隔年収穫の話をするのを耳にした。「ブラジルでは今年は豊作だったので、来年は不作で、在庫が減って….」という具合。当時はチンプンカンプンだったが、実際に農夫になると良く分かる。コーヒーは豊作と不作が隔年で生じやすい作物で、生産者には切実な問題だ。

コナコーヒーはアラビカ種ティピカ。味はぴかいちだが、隔年性がひどく、育て難い。コナ以外の産地では香味を犠牲にして、育てやすい品種への植え替えが進でいる。

コーヒーは縦に数本の幹が伸び、そこから横へ枝が伸びる。その横枝に実がなる。そして、一度、実のなった部分には翌年は実らない。その横枝が先に伸び続け、その新たに伸びた部分に翌年、実がなる。つまり、横枝は夏に2つの仕事を同時に行っている。第一に、春に花を咲かせ、8ヶ月かけて実を成熟させる。第二に、横枝をさらに先に成長させ葉を茂らせる。さもなくば翌年は実はならない。この夏の間に、肥料や水が足りないと2つを同時に行うだけの栄養がなくなる。子孫を残すために、果実に優先的に栄養が使われ、葉や枝は枯れる。よって、実の多い年は枝葉に栄養が不足し枯れて、翌年は不作。不作の年は実が少なくて枝や葉に栄養が行き渡って葉が茂るので、そのまた翌年は豊作になる。

コーヒーには大量の水と窒素とカリウムが必要。開花後6~18週間に、果実は水を蓄え大きくなる。夏の盛りの18~30週間後は窒素とカリウムを使い栄養分を蓄える。一方、同時平行して、横枝を伸ばすために窒素が必要。夏場にコーヒーの木の状態を毎日観察し、実と枝と葉の成長具合をみながら、肥料と水の量を調節することが、健康で、おいしいコーヒーを育てるとともに、隔年収穫を防ぐのに必要。

また、5・6月号で紹介したBeaumont-Fukunaga 方式による剪定方法も、隔年性を回避する手段。3年に1度、剪定するので樹勢を常に強く保てる。大量に実をつけた3年目の収穫が終わると樹勢が弱まり、翌年は実がつかないが、剪定してそれを防ぐ。

我々農家にとり隔年性は、かくも一大事だが、喫茶店でコーヒーを飲むたびに隔年性に心を痛める消費者はいない。隔年性は、先物市場でも相場の材料とはなるが、コーヒー相場にさほど影響を与えない。先物市場でリスク回避する大手生産者や中間業者に加えて、ヘッジファンドなどの投資家が市場に参入することで市場の厚みと安定性が増し、色々な事が織り込まれてしまう。生産者の問題は市場が消化し、消費者はそれに煩わされなくても済む。投資家も投機筋も市場効率化を促し、生産者や消費者もその恩恵を受けている。

現役当時、隔年性を語るトレーダーの話を訳が分からずポカンと聞いていた私も、今ではNYへ遊びに行くと、「隔年性を回避するには、夏場の雨量と窒素量がね…」とか「木の剪定方法がね…」などと得意になって説明して、現役連中を煙に巻く。ウォール街の若い連中なんて、目玉に$サインが書いてあるような目つきをしているが、それが?マークに変わっていく。私は市場効率化の撹乱要因か?

 

2013/07/02   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
コナ・ルビーはクリーンな味わいのコーヒーです。
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