農園便り

コーヒー畑は外来種ばかり

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うちの敷地にはハワイ人の遺跡と認定された約600坪の土地がある。法律で保護され、所有者の私でさえ使えない。石を積んだ塀で囲み、手付かずで放置してある。

そこにSilver Oakの木が勝手に10本ほど生えていた。オーストラリア原産の常緑樹で30m位になる。20世紀初頭に森林再生のためハワイに持ち込まれた。ところが、アレルギーの原因とされ、現在では人々にひどく嫌われている。先日、近所の住人から苦情が来た。外来侵略種で繁殖力が強い。周りに迷惑だそうだ。そもそも、ハワイ人の遺跡に外来侵略種はそぐわないという。そういえば、近所のゴルフコース内の要所要所に立ちはだかり、私も随分ひどい目にあってきた。Silver Oakには積年の恨みがある。加えて、今回の苦情。近所付き合いの障害になっては困る。10本すべて伐採した。

ハワイは太平洋で隔絶されているので固有種が豊富。人間が持ち込んだ外来種が固有種を圧迫すると主張する外来侵略種の研究者にとりハワイは研究の聖地だ。行政も呼応して外来種の持ち込みは厳しく制限されている。

そこで、うちの敷地を見直した。まずはコーヒーの木が3300本。エチオピア原産の外来種。地面の芝もクローバーも外来種。土壌改良のための乳酸菌や酵母菌も外来種。畑の隅に養蜂箱。受粉を助ける優れもの。美味しい蜂蜜まで取れる。この西洋蜜蜂も外来種。

蜜蜂は畑の横の美しい花から蜜を集める。プルーメリアはレイに使われるハワイを代表する花。しかし、これは中南米原産の外来種。ブーゲンビリアも中南米原産。何といってもハワイと言えばハイビスカス。州花に指定されている。しかし、観光客がよく目にするハイビスカスは外来種に自生種を掛け合わせたもの。

畑には様々な日陰樹がある。ジャカランダ、ライチー、マンゴー、菩提樹、オレンジ、ミカン、レモン、オリーブ、モンキーポッド等は外来種。オアフ島の公園のモンキーポッドは「この木なんの木」日立の樹で有名。街路樹などに使われホノルルを代表する景観となっているが、外来侵略種に指定されホノルル市は新たな植樹を禁止した。

畑の端の境界にはククイ並木。ククイはハワイ州の木に指定。先住ハワイ人はこの実を調味料、薬、ロウソクなどに使った。ハワイの歴史に欠かせない木。しかし、これもハワイアンが持ち込んだ外来種。

コーヒー農家にとって、外来種が害をなす例は害虫Coffee Berry Borer(CBB)。アフリカ原産の昆虫。世界の産地では殺虫剤で対処するが、農薬規制の厳しいハワイでは使えず被害は拡大するばかり。ところが、コーヒーの原産地のエチオピアではCBBはあまり問題にならないらしい。CBBを捕食する天敵がいて、コーヒーの木とCBBと天敵はバランスを取りながら進化した。天敵のいないアフリカ以外の産地ではCBBが猛威を振るう。かといって、天敵の持ち込みは豊富な固有種への影響が不明のためハワイでは厳しく禁じられている。被害がここまで進んだら、天敵を持ち込んだ方が多様性とか生態系が保たれる気がするが、そんなことを主張すれば、環境保護団体から、そもそもハワイでコーヒーを育てるのが悪いと一蹴されるだろう。

気が付けばコーヒー畑は外来種だらけ。しかもCBBという例外を除き、私の気に入った物ばかり。すっかりハワイの文化やハワイらしい風景の一部に溶け込んでいる。それらなしではハワイっぽくない。隣人はSilver Oakを外来侵略種と罵るが、なんだかSilver Oakが気の毒に感じて来た。Silver Oakだって家具やギターの材料として人間の役に立つ。まあ、そもそも、私自身が日本国籍の外来種。ハワイ固有種への愛情が足りないのかも。

2017/06/02   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
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