農園便り

コナコーヒー農園便り 2016年8月号 ゆっくり殺して

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先月号でコーヒーの苗木を植えたと記した。海側の新しい畑は4年目。若い木は根が未発達なのに大量の実を付ける。中には実の付けすぎで突然死するものもある。植え替えのために苗木を買った。苗木は買っても直ぐには植え付けない。まず、この畑の気候に慣らす必要がある。2週間ほど放置し、ここの気候に慣れた後に植え付けた。この際の注意事項がコキイフロッグだ。

ハワイ島にコキイフロッグが大発生している。天敵がいない。原産地プエルトリコでは人気の蛙だが、ハワイでは評判が悪い。夜に大声で鳴いてうるさい。ヒロ方面で大発生したのがコナまで広がってきた。コナの住人は駆除に躍起だが、サウスコナから年に数キロずつ北上。数年前にカイルアコナの街を飲み込んだ。昨年は数キロ先、今年は家から聞こえる程の距離まで来た。うちの町内会(Subdivision)では規則によりコキイフロッグが発生した場合にはその土地の所有者が速やかに駆除する義務がある。もし、大発生して駆除不能になれば、近所の住民から文句の嵐となる。

苗木業者の畑には既に住みついているので要注意だ。苗木や根元の土に蛙や卵が潜んでいないかを確認。念には念を入れて、さらにひと工夫。重曹(ベーキングソーダ)が皮膚に触れると蛙は死ぬ。人体には無害でお手軽な駆除方法だ。写真のように苗木をプラスチックの容器に入れ、苗木と容器の内側の底や壁に重曹を撒いた。孵化して土の中から出たら、容器内の重曹に触れて駆除できる仕組みだ。これで2週間ほど様子を見た。

友人の農家に得意になってこの工夫を話したところ、なんと、コキイフロッグに重曹を撒くのは法律違反だそうだ。違法に加え、重曹だと死ぬまでに時間がかかり、蛙が苦しみながら死ぬので、非人道的だというのだ。一方、クエン酸が蛙の肌に触れれば即死する。クエン酸を使うのが人道的で合法的な殺し方だそうだ。

ところで、コーヒー畑の隣の藪にラット(どぶねずみ)が住んでいて、コーヒーが熟すと木に登りコーヒーの実を食い散らす。ミッキーマウスやハンカマンカに慣れ親しんだ方には可愛いかもしれないが、あちらはマウス。こっちはでっかいラット。問答無用で駆除だ。収穫期は夕方に畑の端にネズミ捕りの籠を置き夜中に捕らえる。ネットで「ラットの人道的な殺し方」を調べたら溺死とある。だから、目が覚めたらコーヒーを摘み始める前に、捕らえたラットを籠ごとバケツの水に沈めて、爽やかな朝を迎えるのが私の日課だ。

こんなにもラットにまで気を配る心優しい人道主義の私がコキイフロッグに関しては非人道的な冷血漢とのレッテルを張られるのは実に心外だ。幸い買った苗木にはコキイフロッグはおらず、重曹の出番はなかったので私の人道主義は全うされた。

そこで思い出したのが、ネスカフェの昔のCMソングとしても有名な70年代のヒット曲「Killing me softly with his song」。邦題は「やさしく歌って」だが、英語の意味は「彼の歌が私をじわじわと殺していく」。彼の歌が私の心の痛みや人生を的確に描写するので、聴いていると、だんだん死んでいく気がするという内容の曲。すると、あれは非人道的なCMで非人道的なコーヒーなのか。

そもそも、あんなに切ない歌を使って、どうしてあんなに爽やかなCMができるんだ?
朝から倦怠的な歌詞のCMを流して日本の高度経済成長を止める多国籍企業の陰謀か??
それを何の疑問もなく爽やかなCMとして受け取った我々は、いったいなんなんだ???
でも、あのCMさすがに途中で歌詞替えたんだよね。

2016/08/01   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
コナ・ルビーはクリーンな味わいのコーヒーです。
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