農園便り

2014年5月

コナコーヒー農園便り 2014年5月号

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 消費税が上がった。海外から見ると、日本の財政規律の欠如、無節操さには呆れる。たった3%の増税では、焼け石に水なのは誰もが知っているのに大騒ぎ。それに比べて、私のNY時代は随分税金を払った。所得税は国と州合計で48%。消費税は昔から8.875%。その上、郊外の家の固定資産税は年間約250万円。その大部分が地元の公立小中高校の教育費用に充てられる。健康保険料は年間300万円を半額負担。退職後は全額自己負担。健康保険料の安いハワイに引越してからでも年間72万円払っている。長生しようと思うと金がかかるのだ。さらに、昨年の水道代は年50万円。私のような水飲百姓でも金がかかる。かくも公共サービスは金のかかるもので、日本のように、サービスに金は払わない、税金は払わないでは、国民の借金は膨らむばかり。後の世代がかわいそうだ。

 実は3%という数字はコーヒー生産者にとっても、ちょっとした意味がある。コーヒーの生豆の適切な水分量はコナでは、州法により9% ~ 12.2%とされている。つまり、約3%の許容範囲がある。おそらく他の産地でも似たような基準があると思う。

 コーヒーの実は、収穫するとその夜に皮と果肉を取り除き、パーチメントの状態にする。これを乾燥させる。天日で9% ~ 12.2%に乾燥するには1~2週間程度かかる。乾燥の終盤には注意を要する。カンカン照りの日など、つい忘れて、半日も放っておくと、9%を下回ってしまう。うっかりゴルフにも行けない。

 乾燥具合は専用の機械で測る。穀物用の計測器で優れものだ。ほとんど誤差が無い。しかし、日々の作業では、いちいち機械で測るのは面倒なので、感覚で大体の水準を把握することもある。たとえば、生豆を噛んだ感触で測る。噛んで豆がグニャと押しつぶされてしまうと、水分が多すぎ。パリッと割れてしまうと乾きすぎだ。ちょうど良い力加減で豆が噛み切れるとよい。また、パーチメント一握分を両手に挟んで、すばやくこすり合わせると、堅皮がパリパリと弾けるように割れる。その手触りで判断する人もいる。中には手のひらに載せただけで、水分量が分かる人がいる。確かに、冷たいと分からないが、生温かい状態で手のひらに載せると、なんとなく手のひらに水分が感じられる。これで分かると言うのだからすごい職人芸だ。社長が来ると急にニコニコと揉み手を始める部長さんの手と同じくらい年季の入った職人の手だ。

 3%の範囲内に収めることは品質管理のうえで重要たが、一方、この3%は経営上の意味もある。同じ100ポンドの生豆でも、水分量12%の方が9%の生豆より、3%だけ豆が節約できる。文字通り水増しだ。だから、業者によっては上限の12.2%に近づけようとする。3%は侮れない。生豆が3%節約できれば、利益率が3%も改善する。日本では消費税が3%上がるだけで3月中にトイレットペーパーを買いだめしたり、4月以降の消費への影響が心配されたりの騒ぎだ。単に小売価格が3%上がるだけの話である。しかし、利益率が3%も違うとなると、生産者にとっては経営上の大問題だ。

 私の農園では許容範囲の真ん中の10.5%を目標にしている。生豆は100ポンド入りのずた袋に入れ、さらにそれを気密性のビニール袋に入れ飛行機で日本に送るので、緑色のきれいな生豆が新鮮なまま届く。しかし、多くの産地では、熱帯の港の倉庫に留め置かれ、さらに船で海の上を長い時間かけて日本に行く。もちろん、気密性の袋には詰めない。熱で豆が痛んだり、水分量だってどう変化するか分からない。産地で上限ギリギリの水分量だったものが、途中で水分を吸って、カビが生えることだってある。そういう意味では上限ギリギリにしたい生産者の“経営努力”があだとなる場合もある。

 

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2014/05/01   yamagishicoffee