農園便り

コーヒー先物 200セント

コーヒー先物価格が長い低迷を脱して上昇してきた。今年の日本コーヒー文化学会の総会で、1ポンド150セント以上が中米のコーヒー農家にとって持続可能(サステイナブル)な水準という話を伺った。現在の200セントの水準は生産者には朗報だ。

そこで、200セントという価格を私が年間に摘むことのできる収穫量に当てはめてみた。当てずっぽうの計算だが、桁違いに間違っていることはないと思う。

我々夫婦は二人で年間30,000ポンドのチェリーを収穫するのが体力的に限界。生豆にすると5,000ポンド。肥料や農機具を含め、私が近代技術と財力と体力を総動員しての数字なので、中米の農家が家族総出でも、これを超えることはないだろう。

単価200セントだと、農家の受け取りは150セント。生豆5,000ポンドで$7,500。しかし、これは収穫後に自前で精製し生豆を生産した場合。現実には農家は収穫したチェリーを農協や大農園へ売却する。チェリーで売ると、生豆に比べて売り上げは6割に減ると仮定すると、売り上げは$4,500。諸経費を引けば収入は$4,000以下。これは私と同じくらい効率的に収穫しての仮定なので、現実にはこの半分ぐらいだろう。

とある調査によると(averagesalarysurvey.com)、ホンジュラスの平均給与は年間約$26,000で、典型的な給与は年間約$4,000(ちなみにグアテマラは$6,000)。国内で給与格差が大きい。そして、上記農家のコーヒー収入はホンジュラスの平均給与はおろか、労働者階級の典型的な給与にも及ばない。収穫期以外は自給自足用の食糧の生産をしたり、コーヒー以外の収入源がないとやっていけない。

次に、ピッカーを20人雇う中規模農家を想定してみる。耕作面積10ha程度(北海道を除く日本の一戸当たり耕地面積は1ha)。一人あたり収穫量は我々同様2,500ポンドとする。つまり、一日200ポンドのチェリーを70日間(3ヵ月)摘むと、合計約14, 000ポンドのチェリー、それが生豆2, 500ポンドに相当する。仮に、ピッカーの日給が10ドルとすると、3か月間に70日間働いて、$700の収入を得る。ちなみに、1日200ポンドのチェリーを摘むのは重労働。あんなに辛い作業なのに、$700とはお気の毒。ハワイならその量に$14,000を払ってもピッカー集めに難儀する。

一方、市場価格200セントで、農園主が150セントを受け取り、20人の労働者を雇うと、(2,500lbs x $1.50 - $700)x20 = $61,000の粗利。草刈りや、農薬、肥料、精製、輸送、販売にかかる経費率を5割と仮定すると、$30,500が農園主の収入。さらに、日陰樹木の管理、苗生産、土壌改良、農機具の維持更新など、農園の生産性を維持するための投資額を引くと、やはり、ホンジュラスの平均給与かそれ以下。

確かに、現在の相場水準200セントなら、零細農園もピッカーも中規模農園も生活できる水準かもしれないが、それでも国内の他の職種より見劣りする。しかも、日本以外の世界は、すごい勢いで経済成長をしている。世銀統計によると、USドル換算のGDPは、1995年から2019年の25年間に、日本は-6.7%の減少に対して、世界は185%成長した。中米ではグアテマラ423%、ホンジュラス369%、エルサルバドル203%、コスタリカ437%、パナマ598%、そしてコロンビア250%の経済成長。どれも世界平均を上回る。

経済成長に伴い、今やコーヒー農家の最大の悩みはピッカーの確保。今後も経済発展で都市の魅力は年々増す。山間部の貧困地帯でコーヒーを摘むよりも、町へ出て働く農民・ピッカーは益々増えるだろう。こうやって計算してみると、200セントでも、彼らが将来もコーヒーを摘んでくれるか(持続可能)は疑問が残る。

「木綿のハンカチーフ」を聴きながら、コナコーヒー畑にて。

2021/10/01   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
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