農園便り

コーヒー畑の菩提樹

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昨年は瞑想を学んでみた。しばらくして、ある意思決定をした。その結果には大いに満足している。瞑想で自分が抱える問題点がハッキリして、それを解決するアクションを起こす勇気が持てた。

コーヒー摘みには瞑想のようなところがある。単純作業のコーヒー摘みを繰り返すと、やがて頭が空っぽになる。突然、良いアイデアが浮かぶことがある。大抵はこの農園便りのテーマやオチいった、くだらん考えが多いが、稀に、パソコンでチャートを眺めるだけでは出てこないような良い投資アイデアが浮かぶこともある。赤字続きのコーヒー栽培だが、そういった投資からの利益を勘案すると、コーヒー栽培も悪くはない。

5年前にコーヒー畑に菩提樹を植た。お釈迦様がその下で悟ったので、仏教では聖なる樹木。「あのくたらさんみゃくさんぼだい」と唱えながら菩提樹の下に座ってみた。昭和47年のテレビ放送の「レインボーマン」が変身時に唱える呪文。当時の男の子は誰もが諳んじた。大人になって、般若心経の一節で、最高の理想的な悟りのことと知って驚いた。サンスクリット語でanuttara samyak sambodhi。漢字では阿耨多羅三藐三菩提。放課後レインボーマンごっこをする時の変身の呪文が、そんな深い言葉とは知らなかった。

さて、コーヒーは本来は山の森の中の植物。栽培するなら、一般的に日陰樹があった方が良い。コナは日中は曇るので日陰樹の必要性は低いものの、いくらかはあった方が良かろうと思い、20本近く日陰樹を植えた。そのうち4本は菩提樹。

インドの本家の菩提樹(Bodhi Tree)はクワ科だが、日本の寺院の菩提樹はシイノキ科。菩提樹はインドの木なので温帯地域では育たない。仏教が他の地域へ広がるにつれ、種類が全く違うのに、似たような木を見つけては菩提樹と名付けてあがめたらしい。

シューベルトの歌曲「菩提樹」はドイツのLindenbaumの木のこと。シイノキ科で日本の菩提樹の親戚なので、西洋菩提樹と訳されてしまった。シューベルトも、まさか自分の歌曲「Lindenbaum」が日本では仏教の聖なる木に訳されているとは夢にも思うまい。

ハワイの気候ではインドの菩提樹が育つ。ブッダガヤのお釈迦様の菩提樹は紀元前288年に挿し木でスリランカに移植された。人が植樹したと記録にあり現存する最古の木。そこから1913年にホノルルのフォスター植物園へ挿し木された。つまり本家のクローン。私の勝手な推測ではハワイ島の菩提樹はホノルルの植物園の挿し木と思われるので、ひょっとしたら、うちの菩提樹も2,500年の歳月を隔てて、お釈迦様の木のクローンかもしれないかと想像するとなんだかワクワクする。

植えて5年で、10m以上に伸びた。暑いインドでお釈迦様が悟りを開くくらいだから、涼しい日陰を作ることだろう。それほどの大樹に育つには100年はかかりそうだが、私の死後も畑が存続すれば、畑のシンボルツリーとなって、ここのコーヒーは「菩提樹珈琲」とでも名付けられるかもしれない。私としては、「あのくたらさんみゃくさんぼだい珈琲」という名前も一押し。飲めば、最高の理想的な悟りに至るかも。ところで、私は毎日飲んでいるけど、煩悩が湧くばかり。もっと飲もう。

2019/11/01   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
コナ・ルビーはクリーンな味わいのコーヒーです。
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