農園便り

デング熱 死の覚悟の値段

6月上旬にデング熱で入院した。もう、すっかり回復した。ご心配をおかけしました。

さて、デング熱で入院した際には、最初にハワイ島の病院では黄熱病の疑いありという診断を受け、ホノルルの大病院へ小型ジェット機で搬送された。もし、黄熱病であれば、ハワイでは初の症例となるらしく、病院や医師たちは興奮気味であった。

小型ジェット機でホノルルの飛行場に到着し、ジェット機から救急車に乗り換える際に、ホノルルの救急車のスタッフは、病院にメディアが詰め掛けて黄熱病患者の質問をされると困るので、ハワイ島から同行してきて、患者(私)の様態に詳しいハワイ島のスタッフに同乗してくれと頼んでいた。「えー。病院に着いたらテレビに映ちゃうの?今日はちょっと顔色が悪いから嫌だなあ」と思いながら熱でブルブル震えていると、病院に到着した。メディアはいなかったが、警察官が待機していた。さすがは、致死率6割の黄熱病。

救急車から降ろされ、隔離病室へ担ぎ込まれたあと、入院の手続きのために事務員が来て、様々な質問を受けた。輸血に必要な書類にサインをした。意識がなくなった場合に備えて、妻を代理人に指定するサインもした。次に、チャップリンと話をしたいかと聞かれた。私のつたない英語の知識ではチャップリンというと、映画のチャーリー・チャップリンしか思い浮かばない。ちょび髭、山高帽にステッキを持った人が入ってきて、慰問のパフォーマンスでもしてくれるのかと思ったら、チャップリンとは病院にいる牧師のことらしい。

その時は、よく意味も分からず、私はキリスト教徒ではないのでとお断りをした。退院後、よく考えると、あれは、高熱にうなされた致死率6割の黄熱病を疑われている患者に対して、何か言い残すことはないかと問われたのだ。あそこは、死を覚悟する劇的な場面だった。でも、本人はまったくその気はなく、チャーリー・チャップリンのことしか頭に残っていない。

 

さて、今回の入院に掛かった費用の請求が来た。総額で85,000ドル(1千万円以上)。救急車とジェット機による搬送が64,375ドル(約790万円)。入院費が16,000ドル(約200万円)。その他、薬代や医者への支払いなど諸経費が嵩んだ。アメリカは国民皆保険制度ではないので、個々人が医療保険を購入する。私の加入しているプランは夫婦で月額700ドル(約8万6千円)を支払いをしている。これでもハワイは安い。NY時代はこれが月額2,200ドル(約27万円)だった。今回の医療費総額85,000ドルのうち、私が負担するのは5,500ドル(約70万円)。差額は医療保険会社が面倒を見てくれた。オバマケアによって、医療保険加入は義務となったが、未だに未加入の人は多い。実際に医療保険に入っていなければ、おちおち病気にはなれない。医療は、かくも費用の掛かるものである。日本人は海外旅行する場合は、必ず、旅行保険を買ってください。

さて、それに比べて日本の医療制度である。日本の医療制度は、実にのん気だ。救急車は無料だから、タクシー代わり。(私は790万円も払ったのに。)その上、病院もお手軽に行ける。しかも、入院期間が長い。アメリカに比べると過剰医療だ。アメリカは命の危険がない限り、入院はさせてもらえない。癌の開腹手術だって、入院は手術の3時間前。術後は様態が安定したら数日で退院。後は自宅療養。医療保険会社がコスト削減の為に過剰医療を牽制している。つまり、医者が無駄な医療をしたら、医療保険会社が払ってくれない。日本の様に、いつまでも入院していたら、費用が嵩むばかりだ。

ちなみに、トヨタの米国人役員が鎮痛剤のオキシコドンを日本に持ち込み逮捕され、彼女は職を失った。アメリカでは意外感をもって、報道された。「エー?なんで?オキシコドン飲んだら逮捕されちゃうの?」という感じだ。手術後、アメリカでは、痛かろうがなんだろうが、命に別状がなければ、オキシコドンやハイドロコドンなどの強力な鎮痛剤を処方され、家に帰される。私だって、オキシコドンぐらい飲んだことがある。膝のじん帯移植手術後に処方された。もちろん、入院はさせてもらえず、近くのホテルに数日泊まって通院した。

 それでもって、日本の医療は自己負担額はほとんどない。ただみたいなものだ。当然、健康保険組合は赤字。国家の財政赤字に付回される。結局、ほとんど、ただ同然で入院して、実際の費用は将来の世代が負担することになる。はっきり言って制度が壊れているが、それを直そうという気運は高まらない。国民皆保険制度を採用している北欧諸国だって、国民の健康を守る義務は国家にあるが、その国家を財政的に守る義務は国民ひとりひとりにあることが常識として国民によく理解されている。金は払わないがサービスは欲しい、負担は将来の世代に先送りだなんて無責任なのは日本だけだ。ギリシャなんか、日本ほど財政事情は悪くないのに、いろいろ改革しようと議論している姿を見ていると、責任感が強いなあと感心する。

2015/07/17   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
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