農園便り

コナコーヒー農園便り 2015年3月号

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今シーズンのコーヒーの収穫がほぼ終わった。今シーズンは2012年に植えた海側の畑の収穫が始まったので、例年の倍以上の収穫となった。コーヒーの実は同時には熟さない。赤く熟した実だけを摘む。畑を一周して、3~4週間後には、最初の木に戻らなければならない。これを8月から3月まで繰り返す。今シーズンは11周した。

 規模を拡大したので、もはや夫婦2人では収穫できない。シーズン当初はフィリピンからの移民家族に手伝ってもらった。良い家族にめぐり合えてよかった。  

 とはいえ、農園主とピッカー(コーヒーを摘む人)では、利害が異なる。農園主は品質を高め利益を極大化も図る。赤い実だけを摘み、かつ、コーヒー畑の健康を保つような摘み方を求める。これに対し、ピッカーは楽な方法で多くの賃金を得ようとする。いかに農園主の期待に近い形でピッカーに摘んでもらうかが、農園主の腕の見せ所である。

 きれいに摘んで欲しいので、そのフィリピン人家族を始めて雇ったときには、時給で払った。すると、確かにきれいに摘むが、時間がかかりすぎた。休憩時間も長い。次は、摘んだ実の重さに応じて払うことにした。すると、今度は倍の速さで摘むが、未熟豆の混入が増えた。彼らが摘んだ実から未熟豆を取り除くのが私の係りなので、私が音を上げた。今度は、未熟豆は自分で取り除く事を彼らに課した。未熟豆の混入は格段に減った。未熟豆を取り除くと、作業が増えて、摘む量が減るが、好意的に協力してもらった。だが、コナで最も高品質を自負する私は、ピッカー達に、さらに10以上の要求事項がある。もちろん、そのため他の農園よりは高い賃金を支払っているが、こちらの要求基準を理解してもらい、その通りに作業してもらうのは、お互いの信頼関係やら、色々と難しい問題である。彼らも生活がかかっているので、損はしたくない。

 彼らの畑を収穫する際には、我々も行って手伝う。我々はただで摘むので、彼らの収入が増える。彼らの信頼を得るための努力を重ねた。

 さて、ある日の収穫中、午後に激しい雨が降った。2時間で50ミリ。相当の豪雨だ。黒いビニールのゴミ袋に腕と首の穴を開けて彼等に渡した。コナの農園では一般的な雨合羽だ。しかし、この豪雨では、さほど役に立たず、全身びしょぬれ。長靴も水であふれ返った。でも、彼らは文句を言わず、夕方まで摘んでくれた。ありがたいことだ。感謝のしるしに、帰りにワインを振舞い、その日は普段の倍の労賃を払った。だいぶ信頼を得てきたようだ。全幅の信頼を得る日はそう遠くないと喜びをかみしめた。

 そして、その日は突然やってきた。普段は4~5人なのに、その日は12人も来た。親戚総出。昨年来の抗癌治療で仕事を休んでいる人まで来た。しかも、皆、笑顔で気持ちよく働いてくれた。普段は私がしている雑用も進んで手伝ってくれた。これだ!私が求めていたものは。ついに彼らと私の目標が一致し、完璧な調和が訪れた。

 午後になると、冷たい風が吹いてきた。一人が寄ってきて、満面の笑顔で「雨が降り始めたね」とささやいた。すると、大粒の雨が。先日の様に、ぬれては気の毒。作業の中止を宣言した。だが、誰も止めない。前回とは違い、今回は全員がゴミ袋を持参し着込んでいる。笑顔の謎が解けた。彼らは知っていたのだ、雨が降ることを。餌をついばむ鳥のような目をして、ひたすら摘み続けた。もちろん、倍の給料を期待して。

 雨模様の日が続き、連日大勢が来た。いっきに作業が進み、今月の収穫もあと一息の所まで来た。すると、帰りがけに、もう今月は誰も来られないと告げられた。仕方がない。翌日からは妻と二人で摘んだ。数日ぶりにカラッと晴れた気持ちの良い日だった。

 

2015/03/02   yamagishicoffee
山岸コーヒー農園は小規模ながら品質追求のコーヒー栽培をしています。
コナ・ルビーはクリーンな味わいのコーヒーです。
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