今年の大リーグのプレーオフにボルティモア・オリオールズが進出した。同球団は1900年よりサヨナラヒットでの負けなしという記録を持っていたが、ヤンキーズとのプレーオフ第3戦で記録が途切れた。ヤ軍は黒田が9回まで好投。1点差を追う9回、ヤ軍のジラルディー監督は、なんと大リーグ年俸1位の主砲ロドリゲスに替えて代打を送った。40歳ベテランのイバネスである。采配が的中。彼が同点ホームラン。延長12回に彼が再びホームランを放ち、オリオールズは112年ぶりにサヨナラ負けを喫した。
さて、コナコーヒーは今では希少なティピカ種(アラビカ種ティピカ)。数ある品種の中で、最高の香味を持つが、栽培・収穫に手間が掛かり、生産性が低いのが難点。樹高が高く収穫が困難。剪定しないと3メートルを超え、台に乗って収穫することもある。病気に弱い上に、直射日光にも弱い。世界的には1960年代以降、品種改良により、樹高が低く収穫が容易で、直射日光に強く日陰樹のいらない新種コーヒーが植えられた。やがて、各地でティピカは姿を消した。一方、コナは毎日午後は曇るので日陰樹が不要。昔ながらのティピカを昔ながらの方法で収穫している。これが幸いし、コナはティピカの甘いさわやかな酸味を守る最高級品としての地位を確立した。
ティピカは最も原種に近い種類。市場に出回る品種のほとんどがティピカを改良したものだが、香味で本家ティピカに勝るものはない。品種改良は香味を犠牲にし、生産性を優先した。香味のための品種改良がなされないのがコーヒー業界の不思議だ。
中南米では、かつては大木の日陰にコーヒーを植えていた。60年代の直射日光に強い品種の登場以降、森を切り開き、広い平地に、これを植えた。化学肥料と農薬を大量に使用し、生産性が飛躍的に向上した。いわゆる緑の革命のコーヒー版だ。しかし、この結果、90年代に入り、アメリカで渡り鳥の減少が明らかになった。
ボルティモア・オリオールズの名前は本拠地メリーランド州の州鳥のオリオール(ムクドリモドキ)からきている。この渡り鳥は冬の間は中南米のコーヒー畑の日陰樹の森へ移住する。ところが、森林伐採、農薬乱用で、渡り鳥の住む場所がなくなり数が減った。森林伐採によるコーヒー生産を批判する環境保護団体にとってオリオールは象徴となった。アメリカでは近年、日陰樹による栽培の促進を擁護する消費者意識を高める為に、鳥に優しいコーヒー(Bird friendly coffee)なる認証を付けたコーヒーが登場している。
人類による環境破壊や気候変動は困った問題だ。先日、大型台風サンディーが米国東海岸を襲った。英語でサンディー(Sandy/Sandie)とは、ゴルフでバンカーから脱出してパーを取る事を意味する。私には心の友だ。しかし、今回のサンディーは猛威を振るった。私がハワイへの移住直前に一時期住んでいたマンションが浸水した。かつての住居が水没するのをテレビ中継で見て、引越した後でよかったと胸をなでおろした。すると、知人から電話が来た。NY地区で販売中の私のコーヒーを保管するブルックリンの倉庫も海からの高波に浸水した。あんなに愛情いっぱいに育て、丹念に摘んだ私たちのコーヒーの生豆は海水に漬かり全滅した。
捨てるしかない。塩味の効いたコーヒーなんて誰も買わない。「この磯の香りがたまらないね」なんて誰も言ってはくれない。温暖化を呪った。サンディーを恨んだ。でも、あまり恨んでばかりでは健康に悪いので、気晴らしにゴルフに行ってみた。珍しくバンカーからパーを取り、そのときに思った。やっぱりサンディー好き。