2.コナ・ルビーとは
コナ・ルビー(登録商標)は山岸農園で生産された最高級コーヒーのみに冠せられる名前です。
コーヒーは春に白い花が咲きます。ジャスミンのようなよい香りがします。満開に咲くとコーヒー畑全体が白く見えます。まるで、雪が積もったように見えることからコナスノーと呼ばれます。
花が咲いて実が完熟するまでに約8ヶ月間、大切に育てます。コーヒーの実は始めは緑色ですが、7ヶ月を過ぎると徐々に黄色からオレンジを経て、8ヵ月目にはルビー色に輝きます。ルビー色に輝くわずか2週間程度の間に丁寧に手で摘み取られたコーヒーが、最高の香味を持ちます。これが山岸コーヒー農園のコナ・ルビーです。
クリーンカップと甘みが特徴の最高級コーヒーです。
2-1.品種
山岸コーヒー農園には約3,500本のコーヒーの木があります。それらは全てコナ・ティピカ種です。ティピカ種は軽やかな明るい甘みと酸味が特徴の品種です。アラビカ種コーヒーの原種に一番近く、最も香味の良い品種とされています。ところが、病害に弱く、育て難く、収穫し難く、収穫量の少ない品種です。現代に至るまでのコーヒーの品種改良は味を犠牲にしてでも、生産の効率性を追及した改良が主流でした。世界中のコーヒー産地では、ティピカは次々と引き抜かれ、より生産性の高い品種に植え替えられてきました。いまでは、ティピカを栽培しているのはコナやジャマイカのブルーマウンテンなどの一部の地域に限られています。
また、ある国・地域の美味しい品種が、他の土壌・気候の場所に育てても、必ずしも美味しくなるとは限りません。その土地にあった品種があります。
コナ・ティピカは明治の日本人移民の時代からコナで育てられた、コナの気候に合った品種です。
2-2.クリーンカップについて
コーヒーは正しく生産すれば、本来はクリーンでさわやかな飲み物です。ところが、丁寧に生産しないと、クリーンさが失われます。つまり、渋み、えぐ味、苦味などの雑味や、本来コーヒーにはない異臭、カビ臭、発酵臭などが混入します。これら異臭や雑味のせいで、コーヒーを飲めない人が多くいます。また、砂糖やクリームなしでは、とても飲めないコーヒーが巷にあふれているのは残念なことです。
SCAA(Specialty Coffee Association of America)のカッピングの評価基準には香り、均質性、クリーンカップ、甘さ、風味、酸味、こく、後味、バランス、全体評価などがあります。このなかでは、クリーンさは多くの評価項目の一つに過ぎません。
しかし、生産者である私どもは、クリーンカップが最も重要な項目だと考えます。これが欠けるとコーヒーが飲みにくくなるからです。
そして、クリーンカップこそが、コーヒー農家がいかに上質のコーヒーを作ろうと努力しているかを表す指標です。コーヒーを健康に育て、健康な実だけを丁寧に収穫し、きれいに乾燥させないとクリーンになりません。
コーヒーは農産物ですから、畑の立地条件、その年の気象条件によって、味が変化します。コーヒーは産地により、酸味や甘さや風味などが異なります。SCAAの評価基準はそのような多様な違いを評価するのに役立ちます。それらの評価項目の中で、クリーンカップは他の自然環境頼みの項目とは一線を画します。いかにきれいに収穫し、いかにきれいに乾燥させるかがクリーンカップへの鍵です。農家の努力の結晶です。
2-3.甘みについて
コナ・ルビーの第2の特徴は甘みです。
コナコーヒーの高級品はそのさわやかな酸味に特徴があります。しかし、コナコーヒーの中でも、極上品になると、その酸味の中に甘みが強くなります。
山岸コーヒー農園では、コナの他の農園に比べて実がゆっくり時間をかけて成熟します。これが甘みを生む秘訣です。
山岸コーヒー農園はコナの中でも比較的標高の高い所にあります。昼と夜との寒暖の差が大きく、暑さと寒さが交互にくることで、実がゆっくり成熟します。
適切な水分管理、栄養管理も重要です。水分や栄養が不足するとコーヒーの木は危機を感じ早く実を熟させます。
また、山岸コーヒー農園ではカオリンという粘土を水に溶かしコーヒーの木全体に散布します。リンゴやブドウなどの有機農法で用いられる物質です。木全体が白くコーティングされるので、直射日光に弱いコーヒーの木を日焼けから守ります。また、日光を遮るので、熟成にかかる時間が長くなります。
実際に2014-15シーズンは気象条件が同じ近所の畑が12月に収穫を終了したのに対し、山岸コーヒー農園は3月まで収穫が続きました。