<<3.コナ・ルビーとは

5.焙煎>>

4.育て方の特徴

コーヒーがお客様に届くまでには、さまざまな工程を経ます。
畑の造成と品種の選択、栽培、収穫、乾燥、精選、輸送、焙煎などです。
美味しくクリーンな味わいのコーヒーを提供するために、山岸コーヒー農園では全ての工程において厳しい基準を設け最良の方法で作業を行います。
農園直販コーヒーだからこそ、すべての工程を一括して保証できるのです。

009Medium.jpg

コナ・ルビーが、なぜそれほどのクリーンカップを生むかは、全ての工程での厳格な作業の積み重ねですが、なかでも際立った特徴はその収穫方法です。山岸コーヒー農園では農園主の山岸夫妻が中心になって収穫を行います。丁寧な収穫が渋み、えぐ味、苦味などの雑味のないクリーンなコーヒーを作る秘訣だからです。

 

 

 

 

 

 

4-1.栽培

IMG_0819medium.jpgコーヒーの実は、ストレスがかかると子孫を残そうとして早く熟します。すると、成熟が不十分で不完全な香味になります。甘味のある豊かな香味を求めるには、コーヒーの実を時間をかけて成熟させることです。ゆっくり成熟させるには、コーヒーの木を健康に保つことが肝要です。水や栄養分が不足すると、コーヒーの木は葉から実へ栄養分を移動させて実を守ろうとします。その結果、葉が枯れて、光合成ができなくなり、実は益々栄養不足になります。そして、栄養不足のまま実が熟します。あるいは、赤くもならずに黄色く枯れてしまいます。山岸コーヒー農園では、葉を失わないように栄養分と水の管理をしっかり行います。葉の色や勢いをこまめに観察して、木がストレスを感じていないかを判断します。日々、コーヒーの木との対話が重要です。

コーヒーの厄介なところは、コーヒーの木は自分の体力以上の数の実を付ける習性があることです。したがって、もったいないぐらいに枝の剪定を行って、実の数を制限し、木の体力と実の数と栄養と水のバランスを保つことが大切です。

山岸コーヒー農園はコナの中でも比較的標高の高い所にあります。昼と夜との寒暖の差が大きく、暑さと寒さが交互にくることで、実がゆっくり成熟します。昼は海からの温かい海風が吹き、夜は山からの冷たい風が吹いてきて冷え込みます。畑の立地条件・マイクロクライメットも幸いしています。

また、カオリンという粘土を水に溶かしコーヒーの木全体に散布します。有機農法のぶどうやリンゴなどの果実農園では使用されていますが、コーヒーでは山岸コーヒー農園が世界に先駆けて導入しました。コナ地区では近年、追随して導入した農園がいくつかあるようです。コーヒーの木の全体が白くコーティングされるので、直射日光に弱いコーヒーの木を日焼けから守ります。また、日光を遮るので、熟成にかかる時間が長くなります。また、白い膜が実をコーティングし、CBB(Coffee berry borer、スペイン語ではブロカと呼ばれる)という害虫の被害も防ぎます。

CBBの被害はコーヒーの質に大きく関与します。コーヒーの実はCBBに襲われると、すぐに赤くなります。これは熟すというよりも、自らの実を腐らせていると言った方が正確かもしれません。そして、大量の豆に虫が付くと、木の上で大量の豆が腐ります。大量の豆が腐ると、木全体がストレスにより虫の付いていない豆も速く熟すように見えます。これでは極上の香味は期待できません。山岸コーヒー農園では畑の中の全ての木の全ての枝の全ての実を毎月チェックし、虫食い実を手で取り除きます。殺虫剤は使いません。このような気の遠くなるような作業をしている畑は山岸コーヒー農園以外に聞いた事がありません。ハワイコナ地区では山岸コーヒー農園のCBB被害率はダントツで低い水準に抑えています。

 

4-2.収穫

201308picking.jpgIMG_1203 (Medium).JPG
コーヒーの収穫はクリーンカップにとって、最も重要な要素です。
コナコーヒーの収穫時期は9月から2月にかけてです。コーヒーの実は一度に全部熟すわけではないので、同じ枝に赤と緑の実が混在します。未熟の緑色の実や、過熟した実を避けて、赤い完熟した実だけを摘むことがクリーンなおいしいコーヒーをつくるこつです。未熟の実や過熟の実が混じると味が濁ります。だから丁寧に手摘みをします。

また、CBB(Coffee berry borer、スペイン語ではブロカ)といわれる害虫のの被害を防ぐために、きれいな収穫を心がけています。赤だけを摘み、赤を摘み残さず、しかも、地面に落とさずに摘む。これは熟練と忍耐のいる作業です。かなり難しい工程です。

しかし、収穫は殆どの産地で、季節労働者か機械が行っています。農園主が自らコーヒー摘みをする農園は稀です。それは、コーヒー摘みが肉体的、精神的にとても辛い作業だからです。山岳地帯でなく平坦な場所にある大規模プランテーションではコスト削減のため、機械による収穫が主流です。しかし、これでは完熟実だけを選び摘むことは困難です。

また、たとえ、手摘みの農園でも、コーヒー摘みをする人々は一日数ドルの賃金で雇われた季節労働者です。そして、コーヒーの味の大部分を決めるのは、その人たちなのです。それにもかかわらず、コーヒー摘みをする労働者に渡る取り分は、日本の喫茶店で飲む一杯のコーヒーの値段の0.05%程度です。金額にすると、わずか24銭ほどです。品質管理の最も重要な工程が、こんなにも、金銭的にないがしろにされています。

一般に労働者は摘んだ実の重量に応じて賃金を得ます。したがって、完熟実だけを丁寧に摘むインセンティブを与えられていません。未熟実や過熟実が混入しても、なるべく多くの実を摘もうとするインセンティブが働きます。労働者への利益配分が少ない上に、誤ったインセンティブが与えられているのが、世界のコーヒー産業の最大の問題点です。


クリーンカップはかくも不安定な構造の上に成り立っています。だから、クリーンなコーヒーは珍しく、ほとんどの人がクリーンなコーヒーの何たるかを知らないのが現状です。そして、米国や日本で販売されているコーヒーで農園主が自ら収穫をするコーヒーは皆無です。山岸コーヒー農園では農園主の山岸夫妻が中心になって収穫を行います。また、専属のよく訓練されたスタッフが助けてくれます。それが、美味しいコーヒーを作る秘訣だからです。

 

より詳しくは農園便りの2015年7月号をご覧下さい

 

4-4.乾燥

山岸コーヒー農園では水洗式天日干し乾燥をしています。
近所の友人でコーヒー農園主のアイザック・ジレット氏と共同で行います。
クリーンな香味を出すための工夫をします。

まず、収穫した実は、ジレット氏の農園に持ち込み、機械で直ちに果皮と果肉をむきます。機械には果肉(ミュースリッジ)をこそぎ採る機能が付いており、果肉はなるべく多く取り除きます。

その後、豆は水槽タンクへ送られ、そこで、水に浮く豆(フローター)を取り除きます。フローターは軽い豆で、未熟、過熟、虫食い、栄養不足、成長不足の豆などが含まれます。収穫の段階で、それらを取り除く努力を最大限に行いますが、その過程で漏れたものもこの工程で取り除かれます。これら欠点豆を取り除くことがクリーンなコーヒーには不可欠です。

さらに、水槽タンクで一晩寝かせます。その際には、酵母菌、乳酸菌などの有用微生物群を入れて、良い発酵を促し、豆の表面に残った糖分を分解します。有用微生物の利用は好ましくない発酵を抑えるために、好ましい微生物に発酵を任せ、しかも短時間に糖分解を完了するものです。発酵臭を避けるために発酵させるという、逆説的なアプローチです。
有用微生物を入れると、翌朝にはすっかり豆の表面のぬめり(果肉すなわち糖分)は取り除かれます。これにより乾燥段階での発酵は抑えられ、また、悪臭の原因のカビの発生も防げます。
最近は非水洗式(ナチュラル)やパルプトナチュラル、ドライファーメンテーションなどのように、故意に果肉を残し、発酵させることにより、一風変わった風味を豆に付ける方法が、注目されています。山岸コーヒー農園が有用微生物群を用いるのは、それらの方法とは異なります。むしろ真逆のアプローチです。水洗をより完璧に行うためのものです。発酵臭の発生を押さえ、豆本来のクリーンな味わいを求めます。

果肉のすっかり取れた豆は水できれいに洗って、干しだなで、一週間以上かけて天日干しします。乾燥の最終段階で水分を10.5%に揃えるために軽く機械乾燥をする場合もあります。

乾燥を終えた豆は麻袋に入れ、3月の出荷までの間、涼しい場所に保管されます。

DSCF3846.JPG

この写真は干しだなで天日干ししているところです。
左と右手前は山岸コーヒー農園の豆です。右奥は他の農園の豆です。色の違いにご注目ください。虫食いの実や過熟の実が多く混入すると、右奥のような色になります。欠点豆と腐敗物が混入している証拠です。ただし、その近所の農園の名誉のために付け加えておくと、それでも世間の基準からは相当きれいなほうです。
しかし、これだと、若干の雑味と場合によっては異臭が混入します。山岸コーヒー農園の求めるクリーンカップにはなりません。
一方、山岸コーヒー農園の豆は欠点豆が少ないのに加えて、乾燥前に有用微生物群でミュースレッジをきれいに洗い落とすので、白くてきれいなパーチメントになります。ここまで白くなれば、乾燥中に発酵臭やカビ臭は付きません。

 

4-5.精選・輸送

3月まで倉庫で保管された豆はドライミルでパーチメントとシルバースキン(薄皮)を取り除きます。次にサイズごとに分けられます。さらに、比重分別機に通し、比重の軽い豆や欠点豆を取り除きます。
017medium.jpg これを麻袋に入れた後、速やかにその麻袋を大きな気密性のあるビニール袋に入れ、その後の酸化を防ぎます。生豆は空気や日光に触れると、酸化して白くなります。緑色の美しい生豆を保存するために気密性を保ちます。
ビニール袋に入れた麻袋はさらにダンボール箱に入れられ、コナ空港でハワイ州政府と米国農務省(任意)の検疫検査を受けて、航空便で日本へ空輸します。

 

5.焙煎>>