農園便り

2014年01月

コナコーヒー農園便り 2014年1月号

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 コナコーヒーの収穫時期は9月から2月にかけて。コーヒーの実は一度に全部熟すわけではないので、同じ枝に赤と緑の実が混在する。未熟の緑を避けて、赤い完熟した実だけを摘むことがおいしいコーヒーをつくるこつだ。緑が混じると味が濁る。だから丁寧に手摘みする。しかし、赤だけを摘むのは単純な様で非常に難しい。早く摘もうとするとなおさらだ。私と妻では、妻の方が赤い実だけを、しかも速く摘むことができる。ほかの農園主に尋ねても、断然に女性の方が上手に摘むという。なぜだろう?

 かつてNHKの番組で、赤い色を見分ける能力は女性の方が高いと放送していた。それによると、人は色を赤、緑、青の3原色で認識している。そのうちの赤に関し、男性は朱色を最も鮮やかに認識する遺伝子を持った人(A)と深紅を最も鮮やかに認識する遺伝子を持った人(B)に分かれる。男性はその片方の遺伝子しかもてない。一方、女性はこの遺伝子を2つ持つ。つまり、可能な組み合わせは、AA(朱色のみ)、AB・BA(朱色と深紅の両方)、BB(深紅のみ)で、50%の女性がABかBAとなり、AとBの両方を持つ。彼女らは、朱色、深紅、緑、青の4つの色の組み合わせで色を認識している。つまり、男性よりカラフルな世界に住んでいて、特に赤に関する識別能力が高い。残りの半数の女性(AAとBBの人)は男性と同じ能力しかないが、成長する過程で、他の女性の影響を受け、後天的に色に関して敏感になるそうだ。

 そういえば、赤と緑を識別できない色覚異常は圧倒的に男性に多い。多くの国や文化で、赤い服を着るのは女性。デパートの化粧品売り場に並ぶ口紅は、私にはどれも似たような色だが、女性には一本一本違った色に見えるらしい。そのNHK番組では、なぜ女性がそのような能力を進化の過程で獲得したかは明らかにしなかったが、私はコーヒー摘みを通して解明。大胆な新説を打ち立てるにいたった。

 私の説では、何百万年もの間、コーヒー摘みは女性の仕事だった。人類もコーヒーも発祥の地は東アフリカ。人類とコーヒーは長い関係があるのだ。いや、これは少し大袈裟であった。それはコーヒーではないかもしれない。しかし、太古、果物を摘むのは主に女性の仕事だったはず。彼女らは、この実は食べ頃、まだ早い、腐りかけているかを瞬時に識別しなければならない。生死に関わる問題だ。これにより、赤い果物の色の微かな違いを適切に認識する能力を獲得するに至ったというのが私の説だ。

 その間、男性はマンモスを追いかけていた。朝から集団で出かけ、手に棒を持って草原を駆け回り、獲物を捕らえ、夕方集落に戻ってくるという生活を何百万年もの間、繰り返してきた。赤を識別する能力は発達しなかった。これが、現在、コーヒー摘みの上手い下手を分ける要因となったのではないか。

 しかも、男性軍のご先祖様はやり過ぎた。マンモスが全滅するまで、狩りを止められなかった。いや、全滅してもやめられない。数百万年も続けてきた男の習性だ。絶滅したマンモスの空白を、文明の利器が埋めた。すなわち、マンモスの代わりに、直径4センチ強の硬いボールを考え出した。手に持つ棒は14本に増え、バッグに入れて背負えるようになった。そしてやはり4人一組の集団で、朝から晩まで野原でボールを棒で引っ叩きながら追いかけまわすようになった。

 だから今日も女房殿がコーヒー摘みをしているのに、私は近所の農園主の男達とマンモス狩りゴルフに出かけるのだ。もうこれは誰にも止められない。なんたって、DNAに組み込まれている。ウッホー ウホウホ ウッホッホー。

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2014/01/01   yamagishicoffee